表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮と掲示板 改稿版  作者: Bさん
3章 坑道の迷宮
42/88

36話

「今日は……やりたい事があるから休みにしよう。皆、好きな様に過ごしてくれ」

「やりたい事? 前のとは違うわよね?」

「ああ、悪い方向の話じゃないよ。後で皆にも教えるから楽しみにしててくれ」


 そういえば、以前も似たようなやり取りをした気がする。

 その時の事は恥ずかしいので思い出したくはない。

 今回は、そういった後ろめたい事ではなく、昨日の売上をどの様に使うかという内容だ。


 テレビを買うのは前から決まっていたが、それでも13万も残る。

 出来るだけ施設を良くしたいから、皆の意見を聞くのもありだとは思う。

 ある程度必要な物を揃えたら聞いてみよう。


 皆解散し、それぞれやりたい事をする為に移動する。

 ネクとティアは訓練場の方向へ。タリスとパステルはコタツへ。

 コクは地下への扉を開けていたから、鍛冶をやるのだろう。

 この狭い拠点でも、各自時間を過ごす方法があるようで嬉しく思う。


 俺はPCの前に移動し、リストを物色する。


「さてと、まずはテレビだな」


 テレビと言っても現代で使っているような液晶モニターではない。

 昭和の雰囲気の漂うブラウン管テレビだ。地デジの時代に電波を受信できるのかよ、と思うかも知れない。

 安心をして欲しい。そもそもこの空間自体が電波を通すかどうか解からないんだ。些細な事だろう。

 テレビとして使い物にならなくても、一応ゲーム機とかあるので、そっちを買えば無駄にはならない。

 液晶の大型サイズもあるのだが、価格が100万を越えていたので諦めざるを得ない。


「テレビと台だな。コタツの部屋に置くのが一番良いか」


 寛ぐのならそこが一番適しているだろう。誰かの寝室になんて置いたら別の使い魔に占拠されそうである。タリスとかタリスとか。

 テレビで10万DP、テレビを置く台で200DPだった。

 台自体はテレビ用という訳ではなく、ただのボックス型の収納棚だ。娯楽用ではなく収納用の家具扱いのようだ。

 だから、安めに設定されているのだろう。

 

 それらを購入すると鑑定台付近に現れる。

 大型の家具ではない為、自分で持って行けという事らしい。

 親切なんだか不親切なんだか良く解からないシステムだ。


「考えても仕方ないな。持っていくか」


 どうにも行動する前に理由を考えてしまう癖がある。

 性的なことは早い決断が出来るのだが、それ以外だと考えてから行動するタイプだ。

 出来ちゃった結婚して結婚式で悩む、とかそういうタイプの人だと思ってくれればいい。


 テレビを抱えてコタツの部屋まで運ぶ。これがまた意外なほどに軽かった。

 20インチほどの小型だが、ブラウン管はそれだけでもそれなりの重量がある。

 普通に10kgは越えているだろう。だが、ここに来てから剣術を行っているせいか、レベルというモノが上がったからかは解からない。

 とにかく、それくらいの重量をなんて事ないと思えるほど筋力が付いているようだ。


「マスター、それなに?」

「ん? ああ、そうだな。説明をするよりも見てもらった方が早い。準備をするからちょっと待ってくれ」


 コタツの部屋に台とテレビを運び込むとタリスが聞いてくる。

 テレビや映像がどうこう話した所でファンタジーの住人からしてみたら、理解できる範囲ではないだろう。

 実際に見てもらうのが一番早そうだ。


 台にテレビを設置し、背後の線を繋げ……ないな。そもそもアンテナとかどこから繋げるんだ?

 電源コードすらないぞ。ガスコンロとかもガス菅がないのに火が出たし、きっと不可思議な何かと繋がっているのだろう。

 気にしたら負けだ。答えが出ない謎の要素をいつまでも考えた所で意味はない。

 急かしてくるタリスをなだめながら、テレビを正しい位置にセットする。置いただけとも言うが。


「さ、点けるぞ」


 タリスと先ほどから口を出さなかったパステルが興味津々にこちらを見ている。

 何だかアレだな。昔ドラマで見た事のある昭和の風景を思い出す。

 周囲の誰も持っていないテレビを買って、皆で集まって最初の1回を点けるというやつだ。

 さすがにあれみたいに古いダイヤル式ではないが、慎重に電源ボタンを押す。


「点いたか」

「お、おおおおぉぉぉ、なにこれぇぇぇぇ」


 電源コードもアンテナも無いのに、普通の番組を放映しているテレビを見る。

 一応チャンネルは東京と変わらないらしい。地方によってテレビ局の違いが出るが、俺がここに来る前に住んでいた場所と同じなので少し嬉しい。

 タリスは奇声をあげながら画面に釘付けになっている。ちなみに流れているのは、どっかの自然風景を映している番組だ。


「主様、これは? 箱の中で何をしているのですか?」

「説明はどうすればいいんだろうな。こういう物だと思って楽しんでくれ。危険はない」

「そうですか。解かりました」


 パステルはタリスに比べて若干冷静のようだ。このテレビの構造を聞いてくる。

 説明をして、電波がどうだの録画した映像を流しているだの言っても、多分理解してくれないだろう。

 原理を理解していなかった子供の頃もそうだったが、知らなくても楽しむ事は出来るもんだ。


「タリス、別の番組に変えるぞ」

「番組?」


 チャンネルでニュースに変える。そもそも高価な物の中でもテレビを真っ先に欲しかったのは、俺たちの事がどのように報じられて居るか知りたいからだ。

 転移から大分時間が経っているので、そう簡単にそのニュースを見れるかどうかは解からないが、見ない事には始まらない。


「何かきっかけが無いとそんなに流れないか」


 半年や1年が経過したとか、新しい情報が入ったとかにならないと流れるものじゃない。ネットなら好きな内容を検索を出来るが、テレビでは見る内容を自由に選べない。

 事件の頃は頻繁に流れていたと思うが、今は2ヶ月ちょっとという半端な時期だ。

 ニュースでは、世界情勢や国内の事件などが流れている。良くも悪くも変わっていない。


「ねね、これなに?」

「リモコンだよ。別の映像に切り替える装置、といえば解かるかな?」


 そんな事を考えていると、タリスが俺の持っていたリモコンに注目する。

 デジタル放送のテレビの様に複雑な感じではなく、殆ど最小限のボタンしか付いていない。

 よく解かっていない使い魔たちが利用するには、複雑じゃない方がすぐに覚えてくれるだろう。


「マスター、これ押してみたい!」

「解かった。説明するから待て」


 早速タリスが興味を示したようだ。ニュースの方も進展はなさそうだし、貸してみるのも良いだろう。

 とは言え、チャンネルを変えるボタン以外にも、消音とか普段は全く使わないのもある。

 下手に押して壊れたとか思わせたくはない。

 そうして、2人にリモコンの説明をしていく。ただ押すだけなので、難しい事はないから大丈夫だろう。


「解かった。貸して」

「ほらよ。好きな様に見てくれ」


 タリスに渡すと頻繁に番組を変えていく。

 あれで番組の内容が解かるのかね。


「主様。放映される内容の時間表というのはないのでしょうか?」

「あー、そういえば無いな。俺たちの世界なら新聞や雑誌で知れたんだよなぁ……」


 地デジなら番組表を出す事も出来る。そういった考えをすっかり忘れていた。

 後でPCで確認をしてみるか。


「今はないから、後で見てみるよ」

「楽しみにしていますね」


 パステルはどんな番組を望んでいるんだろうか。

 さすがにSMモノは流れていないぞ、と先に言った方が良いんだろうか。


「そういえば、パステル。今拠点ですぐに必要な施設ってあるか?」

「そうですね……トイレがもう1つ欲しいです。連続で入られますとちょっと気になりますので」


 ああ、臭いが気になるのか。そういう所は異世界でも変わらないんだなぁ……。

 消臭剤を買うよりも人数が増えてきたし、もう1つ用意した方が早いかも知れない。


「他にはお風呂ですね。ご主人様と入る時はもう少し広いと嬉しいです」

「うーん、そうか? あの狭さが良い気がするんだが……解かった」


 確かに風呂場は汚いしな。もう少しゆったりしたバスタブなら、全身を伸ばして入れそうだし。

 トイレと風呂か……最初に設置してから変えてないな。


「他には何かあるか?」

「思いつきませんね。自然があると嬉しいですが、それはどちらかと言えば嗜好品みたいなものですので」

「そうか。解かった」


 俺はそう言うとコタツから立ち上がる。タリスは何か集中できる番組を見つけたらしく、テレビを凝視している。

 強いフラッシュを浴びたら大変な事になりそうだが、ベッドで回復出来るだろうしほっとこう。

 パステルにPCを使う事を告げ移動する。


「さて、トイレは……多いな」


 売買のリストからトイレを選んだのだが、今のボットン式よりマシな水洗式、ウォッシュレット式。

 その中でもランクがあり多種多様のトイレが存在していた。正直違いが良く解からない。


「ウォッシュレットとか使っても驚かせるだけだし、水洗の洋式でいいか。これを2つ追加。次は風呂か」


 古いトイレは処分に入れる。ボットン式って結構臭いが逆流してくるんだよな。

 風呂もまたかなり多い。露天風呂って何だよ。

 そもそもここって外じゃないよな?

 

「何だこれ。大理石にライオンの口からお湯とか……王宮かよ」


 上を見ると相当な代物が並んでいる。俺はさすがに欲しいとは思わないが、こういうのを目指す人もいるんだろう。

 拠点を迷宮みたいに複雑にするのも良し、王宮の様に豪華な作りにするのも良しか。幅が広いな。


「さすがにそんなのを用意しても仕方ないし……これでいいや」


 選んだのは一般家庭の風呂よりも少し広いくらいだろうか。

 一般家庭のサイズが1.6mX1.2mくらいに対してこちらは2mX2mくらいだ。

 足を伸ばすどころか水没出来る。いや、水没するつもりはないけどさ。

 脱衣所は変わらないらしい。


「あー、風呂場って2個あっても仕方ないな。1個は処分しかないか」


 古い方の風呂があっても結局どうしようもない。

 洗わないと使えないのだから風呂場は1つで十分だ。

 脱衣所に移動し、干してある洗濯物を移動させる。処分させたら一緒に消えそうだし。

 トイレが各1000DP、風呂場が3000DPだ。まだまだ余裕がある。何を作ろうか。


「銀の鉱床も追加しよう。魔法銀をどうやって作るのかは解からないけど」


 その辺りは全てコク任せだ。理論なんてさっぱり解からん。

 今、コクが居る位置は鍛冶場だ。こっそり銀も鉱床に追加しておく。

 後で驚きそうだが、まぁ大丈夫だろう。

 銀が1万なので、残りは11万5000くらいだ。まだまだ余裕がある。金持ちって素晴らしい。


「寝室のベッドを良い物に変えるか。6人分だから結構な出費になりそうだ」


 標準ベッドは標準といってもファンタジー基準だ。

 スプリング付きのマットレスがある現代の物とは比べられない。

 寝室に誰もいないことを感知スキルで確認する。ネクだけ解からないが、ティアの動きが激しいし、一緒に訓練をしているのだろう。

 全てのベッドを少し高級なベッドに変更する。使わないベッドはもちろん処分だ。

 残り10万と9000。何があるかな。


「あ、スズキさん。鉱床を変えた?」

「早くも気が付いたか。銀を追加したよ。良い装備を頼むな」

「ありがとう。早速掘ってくるよ!」


 俺の言葉を聞くと折角来たコクが反転して走り去っていく。

 折角上がってきたのだから水分補給位すれば良いだろうに。


「あ、水分補給か……何かないかな」


 自動販売機みたいなのがあるのが理想だが、さすがにないよな?

 売買リストから嗜好品を探していると……あった。


「自動販売機、ドリンクバーってファミレスかよ」


 子供の頃、家庭に1台は欲しいと思ったことはあったが、結局補充しないといけないんだよな。

 飲み放題って訳でもないからあっても仕方ないと思う。


「説明は……購入時に金を入れる必要なし、補充も必要なし。ただし、購入後に商品の変更は出来ない、か。これは良いな」


 最初に設定して購入をすれば、飲み放題らしい。そう考えると無限箱みたいなものだろうか。

 多岐にわたるジュースが並んでいる。果実系、炭酸系、お茶系と多いが、アルコールはないらしい。残念だ。

 試しにドリンクバーを選んでオレンジ、リンゴ、サイダー、コーラとドクターペッパーを選ぶ。

 これで大体5万DPらしい。1つ当たり1万DPなのだろう。自動販売機でも同様のようだ。飲み放題なら良さそうである。


「ん? うどん? こっちはフライドポテト……ってパーキングエリアかよ」


 自動販売機の種類に飲み物だけではなく食べ物もあった。

 基本的に暖めれば出せる物だろう。思ったより多いが、何故かラーメンだけはない。

 ここを管理している人は、ラーメンに何か拘りでもあるんだろうか。


「目的は飲み物だ。食べ物じゃない。食事はティアが美味しい物を作ってくれるし、いらないな」


 それでもたまに食べたくなるジャンクフードだが、今はまだ必要ないだろう。

 フライドポテトなら、普通にジャガイモを揚げれば良いしな。


 自動販売機を地下に、広間にドリンクバーを設置する。

 これで残りは9000DPだ。使い果たした。


「ドリンクバーを試してみるか」


 正面に立ってから気が付いた。コップがない。いや、マグカップであれば人数分以上ある。

 キッチンへ取りに行き、コーラを注ぐ。


「うん、紛う事なきコーラだ。懐かしいな」


 強い炭酸を感じながら、ゆっくり飲んでいく。思ったより普通のドリンクバーで驚いた。

 これなら他の皆も飲んでくれるだろう。


「次は地下か」


 設置した自動販売機を求めて階段を降りていく。

 そして、通路の正面に設置された自動販売機を発見した。

 石造りの通路に1つポツンと置いてある自動販売機。何だかシュールだな。


 こちらもまた普通の自動販売機のようで、ボタンを押せば良いのだろう。違いは硬貨を入れる穴がないくらいだ

 そこでオレンジとリンゴを押して、その缶を取り出す。

 見た感じもそこまで変な所はない。ドリンクバーよりこっちの方が缶が出てくるだけ良くないか? これ。


「さて、コクはどこかな」


 折角地下に降りてきたのだから、コクと一緒に味わいたい。

 生命感知で調べると、鉱床の所で小刻みに動いていた。採掘中か。

 鉱床のある部屋に入ると、つるはしを振るっているコクの姿を発見する。


「おーい、コク。飲み物持ってきたぞ」

「スズキさん? ありがとう」


 そう言って、コクはつるはしを地面に置く。


「オレンジとリンゴがあるけど、どっちがいい?」

「オレンジ? リンゴ? ごめん、解からない」


 どうやら、コクが居た世界の果物と名前が一致しないらしい。

 言葉が通じるからすっかり忘れていた。同じ文字や言葉を使っていても名詞が同じになるとは限らないよな。


「両方果物だ。この絵に見覚えはないか?」

「ああ、これならあるよ。オレンジ? の方をお願い」

「あいよ」


 コクにオレンジジュースを渡すと、自分の物を開けて飲む。

 ああ、リンゴジュースだ、100%のな。

 コクはどうやって開ければ良いのか解からないらしく、缶の周辺を見ている。

 

「これはこうして開ければ良いんだ」

「へー、これは凄いね。梃子の原理を使用しているんだ」


 梃子はあるのか、基準がよく解からないな。

 しかし、水分補給でジュースはアレだな。お茶やスポーツドリンクを選べば良かった。


「うん、美味しいね。これはまた飲みたくなるよ」

「そこの自動販売機でいくらでも飲めるぞ。飲み終わったら教えるから行ってみよう」


 250mlの缶なので、そこまで多くはない。それでも俺は先ほどコーラを飲んでいるから、一気に飲み干すのはきつい。

 コクは一気に飲むとその手から缶が消滅する。なるほど、ゴミは出さないのか。


「あれ、消えちゃった」

「飲み終わると消えるみたいだな。ゴミを出さずに済むのは処分が楽で良い」

「この金属も素材に出来ると思ったんだけどね。残念」


 缶ジュースのアルミまで素材にするつもりだったのか。中々貪欲で頼もしい。

 俺とコクは自動販売機の前まで来ると購入の実践をする。

 俺が1本買って見せるとすぐに理解したようだ。ボタンを押すだけだし、難しい事は一切ない。


「これは便利だね。うーん、どれにするかな」

「オレンジとリンゴ以外は全て炭酸だな」

「へー、なら、このドクターペッパーというのを選んでみるよ」


 3つある選択肢でそれを選ぶなんて……あれは好きな人は好きだが、嫌いな人はとことん駄目なのにな。

 多分、コクにとってはどれも一緒に映るのだろう。そしてパッケージが派手な物を選んだと。


「う……これはまた独特な味だね。でも、なんか癖になりそう」

「どうやらお前は選ばれたらしいな。ようこそ、ドクターペッパーの世界へ」


 何を隠そう、俺もまた愛好家なのだ。じゃなきゃ高額を出してまで選ばない。

 両方に入れたのは、やりすぎかも知れないけどさ。

 コクはちゃんと全部のみ干すとすっきりした表情で採掘へと戻った。仲間が居るというのは、何だか嬉しくなる。


「さてと戻るか」


 広間へ歩いていくと、今度はティアとネクが居た。

 どうやら訓練を終わらせて休憩をしているらしい。


「ご主人様、これは何?」

「ドリンクバーだ。飲み物が出てくるぞ」


 飲み物と聞いてティアがコップを持ってくる。俺の分まで。


「いや、俺はさっき飲んだから……」

「教えて?」


 こちらを見上げながら上目遣いで言って来る。畜生、こういうのは反則だ。

 ネクもまた同じ様なポーズでこちらを見ていたが、さすがにスケルトンは無理だわ。


「コップをここに置いて、上のボタンを押す。すると選んだ飲み物が出てくるから、一杯になったら手を離すんだ」

「ん、簡単」

「そうだな。子供でも使えるように作られているからな」


 コップに入ったドクターペッパーをちびちび飲む。腹の中がパンパンだぜ。

 ティアはどの飲み物を選んで良いか良く解からないらしく、悩んでいる。

 オレンジやリンゴは絵で解かるみたいだが、炭酸が気になるようだ。


「ご主人様と同じのに……」

「止めとけ、これは人を選ぶ飲み物だ。においに敏感なティアが飲んだら大変な事になると思うぞ」

「ん、オレンジにする」


 俺の忠告を素直に受けてオレンジを選んだ。ティアの世界のオレンジって何て名前なんだろうな。

 てか、猫獣人って柑橘類大丈夫なのか?


「オレンジって柑橘類だけど飲めるのか?」

「私は猫じゃない」


 少しムッとした表情で言って来る。どうやら猫と一緒にするのは、禁句のようだ。

 ネクはサイダーを選ぶ。中々のチャレンジャーだな。


「ん、美味しい」

『しゅわしゅわして面白いね。すぐになくなるのが残念だけど』


 すぐに無くなるのはスケルトンとして吸収しているからだろう。そればかりは、どうしようもない。

 口内に飲み物が残れば、少しは味わえるんだけどな。


「それじゃ、コタツの所にいるタリスとパステルにも持って行ってやろう」

「私が入れる。タリスはコーラ、パステルはリンゴが良いかも」


 コーラとか飲んでいないのに何故選んだ。いや、タリスなら何でも喜んで飲みそうだけどさ。

 パステルは果物とか普通に好きそうだから大丈夫だろう。


 そして俺たちはそれらを持ってコタツの部屋へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ