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迷宮と掲示板 改稿版  作者: Bさん
3章 坑道の迷宮
31/88

26話

「隊列は、俺とティアが前衛、パステルとタリスは中衛、ネクは後衛で行こう」


 2階層のボス部屋で、探索をする構成を告げる。

 いつも通り、防御主体のネクは一番後ろで予想外の襲撃を見張って貰う役目だ。

 こういう迷宮において奇襲が一番怖いのは、今までの戦いでも明らかである。

 戦闘中の乱入ほど恐ろしいものはない。


 感知スキルを持っていたとしても、常時それを警戒する余裕はないのだ。

 全員に感知スキルを覚えさせる手もあるが、今後生産スキルも得たいのでスキル枠には余裕を持っておきたい。


 また、今回は通路で戦う機会が多い。その為、3人並んで戦うとかなり狭い。

 他のメンバーを気遣って戦うと行動が制限されてしまう。

 そうなると本来の力を十分に発揮する事は出来ないだろう。


 俺の代わりにネクに前に出て貰った方が、戦闘に関して効率が良いだろう。

 だが、感知スキルを使用した先導や罠を探る必要がある為、俺が先頭に行くしかない。

 ままならないものである。


 俺たちは階段を降りて小部屋へ入る。

 既に周囲は暗く、俺たちが持っている明かりが唯一の光源だと言ってしまっても良いだろう。

 天井のカンテラは光として弱いし。


「それじゃ、周囲を動き回るぞ。付いてきてくれ」


 皆が頷いたのを確認すると扉を開けて通路に出る。

 カンテラの光は意外と広く照らしてくれる。

 4人分だからか、かなり明るい気がする。


 暫く歩いているとゴブリンの集団の光点に近付く。

 前回は魔法で一掃だったので、今回はちゃんと切り結んでみようと思う。


「この通路の先にゴブリンが3体いる。ティア、突っ込むぞ。他の皆は警戒しててくれ」

「あいよー」


 タリスが代表して返事を返してくる。

 当のタリスはパステルに抱えられていた。変に動き回ってその辺にぶつからない為だろうか。


「行くぞ」

「ん、タイミングは任せる」


 俺とティアはお互いに顔を見合わせるとほぼ同時に走り出す。

 目視でもゴブリンを発見する。その3体は、こちらの姿に気が付いていなかったのか、足音でかなり驚いていた。

 このチャンスを逃す手はない。一気に剣を抜刀すると上段から1体に向かって切り下ろす。

 ゴブリンは剣で受けようとしてくるが、その剣ごとゴブリンの体を両断する。


「え?」


 これには、さすがの俺もびっくりだ。

 斬りつけるつもりはあったが、完全に真っ二つに両断なんて出来るとは思わなかった。

 その間に戦闘は終わっていた。ティアが残り2体を処理していたようだ。


「ご主人様、やりすぎ」

「い、いやここまでやるつもりはなかったんだ。力が入りすぎたかなぁ……」


 下手にオーバーキルをしてしまうと、次の手に繋げる時に遅れが出る。

 適度な致命傷を与えて、次に移るのが効率的な攻撃方法だ。

 使っているのが力を込めないと振れない大剣とかならまだしも、俺が使っているのは片手剣である。

 どう考えても無駄な力を込めたとしか思えない。


「ゴブリンが弱過ぎるのかね」

「ご主人様も強くなってるんだと思う」


 最近、エルフとかそこそこ強い相手ばかりと戦っていたからか、弱い相手との戦い方を忘れてしまったのかも知れない。

 たまには1階層のスケルトンやコボルトを倒して、感覚を維持しないと駄目かも知れないな。

 スキルに頼ってしまうと、心構えが出来ないから難しい所である。


 そんな会話をしていると他のメンバーが寄ってくる。

 いつの間にかゴブリンの死体は消滅し、そこには宝箱が置いてあった。


「それじゃ、あけるから皆は周囲の警戒を頼むな」

「はい、明かりは大丈夫ですか?」


 パステルがそう言ってくると、俺は腰のカンテラを外して大丈夫だ、と返答する。

 これを鍵穴に近づければ、罠のカラクリは見えるだろう。

 鍵穴に寄せるとその構造を見る。


「ん? これはちょっと新しいな。皆念の為下がってくれ」

「気をつけてね?」


 タリスの声と共に皆俺と距離を取る。

 初めての罠の場合、発動した時の事を考えて下がらせる事にしている。

 もし、俺が致命的な怪我をしても運んでもらう役割が必要だ。

 範囲にダメージを与えるような罠だった場合、近くに居ただけで危険な可能性もある。


「ああ、頑張るよ」


 俺は罠の種類や構造を知識の中から探す。

 一致した罠は……爆弾と擬態だった。

 皆を下がらせて正解だったようだ。

 爆弾だった場合、開ける時に失敗したら、皆を巻き込む事になる。

 

 擬態だった場合は、その宝箱がモンスターになる。

 どんなモンスターかは情報が出ていない。

 それを知る為にわざと開錠を失敗する必要もないだろう。


「爆弾と擬態か……爆弾の可能性に賭けてみるから、失敗した時の為に戦闘態勢に入ってくれ」


 そう告げて俺も抜き身の剣を右に、左に盾の取っ手をこちらに向けて置く。

 これなら擬態だった場合、すぐに戦闘態勢に移れるだろう。

 鍵穴に針金の様な棒を突っ込んで解除していく。最後の部分だけ爆弾と擬態が違っている。

 爆弾寄りに操作をすると、宝箱が変形していく。失敗だ。


「魔物だ。戦闘態勢に移れ!」


 そう言いながら盾と剣を取る。そしてすぐに盾を前面に構えると衝撃がやってきた。

 その衝撃はかなりのもので、不自然な体勢で構えていた俺はかなり押される。

 そして尻餅をついてしまった。やばい、こんな体勢じゃ次の攻撃を防げない。


「ご主人様!」


 ティアの叫びが聞こえる。

 盾が遮ってよく相手を見えないが、かなり危険なのかもしれない。

 だが、いつまで経っても次の攻撃はこちらにやってこなかった。


 すぐに立ち上がり、どうなったか確認をすると、ネクが俺と魔物の間に入ったらしい。

 その魔物は力が強いようだが、受け流せばどうにでもなるようだ。

 魔物の見た目は、一言で言うと宝箱だ。そのまま生物のように動いている。

 昔、何かのRPGで見た気がするが、思い出せそうにない。

 気を取り直すと、俺はその魔物との戦闘に参戦する。

 

 そこまで強い魔物ではなく、すぐに消滅していく。

 魔物の跡には剣と盾が落ちていた。戦利品だろうか。

 擬態を倒した場合、再度箱を開ける手間は省けるらしい。


「ふぅ……皆怪我はないか?」

「ご主人様、大丈夫?」

「こっちは問題ない。尻餅をついた程度だな」


 勢い良く付いたから少し痛みがあるが、それ以外に怪我と言えるような所はない。

 仲間たちの前で格好悪い姿を晒して、少し恥ずかしいくらいだ。

 防御強化のスキルがあっても押されるとは、かなり攻撃力が高かったのだろう。


「さてと、気を取り直して探索を開始しようか」


 装備品を拾って立ち上がると、気を取り直すという意味でもそう告げる。

 そして、探索を再開するのだった。




 それから暫くゴブリンを倒しながら探索を行う。

 マップを見る限り、ゴブリンとドワーフは同じ場所に存在しないらしい。

 住み分けが出来ているらしく、マップの光点が半々で分かれていた。


 俺たちはドワーフを倒すよりも先にゴブリンのエリアを消化していく。

 まずは楽な地域を制覇したら、次に向かうのが理想だろう。

 ここで得た装備を鑑定してからの方が、良い装備で難しい所を攻略できるのだ。


「さて、この辺で終了かな」

「そうですね。もう結構長く探索していたと思います」


 パステルは魔力の残存量が多いからか、疲れた素振りは見せていないが、タリスはその腕に抱えられてぐったりしている。

 ティアも兜のバイザーを開けると汗をかいていた。結構蒸れるんだよな、これ。

 ネクは疲れているのかさっぱり解からない。汗もかかないし、背筋も伸びているから疲労を感じているのか判断が出来ないのだ。


「どこに楔を設置するかな。安全そうな場所ってあったか?」

「……ないですね。どこかの部屋の隅に置くしかないのでは」


 俺とパステルが話している間、ティアとネクは周囲を警戒している。

 感知スキルでは近くに敵は居ない。だが、それで油断して危機に陥ったら間抜けだろう。

 スキルというモノを全て信用するのは危険だ。

 今までのスキルを見る限り、知られていないだけで変な欠点とかありそうだし。


「それじゃ、そこの部屋に設置して帰ろうか」


 そう言って部屋の扉を開き、奥まで進んでいく。

 既にその部屋は戦闘をして探索し尽している。

 罠がない事をちゃんと確認して俺たちは帰還した。





「解散してくれ。自由に過ごして貰っていいぞ」


 そう言うと皆装備を外して自由に行動し始める。

 拠点に帰ってまず皆が目指すのは風呂だ。

 探索は数時間行うので、気温が普通でもかなり汗をかく。

 俺たちの様な前衛は当然だが、後衛も位置取りの為に走ることがある。

 女が体臭を気にするのは、この世界でも元の世界でも変わらないらしい。

 俺は下手に風呂の争奪戦に参加せずに女性陣に譲っている。

 下手に乱入して白い目で見られるのならまだしも、別の方向へ進んでしまったらこの後の業務に差し障る。

 それはそれでいいけど。


「新しい階層の装備だから楽しみだな」


 PCを起動させてドロップした装備を鑑定台に乗せて調べていく。

 どうやら3階層は魔法銀の装備らしい。

 この間俺の分だけ剣を買ったが、他のメンバーの分は揃えていない。

 いや、むしろ揃えなくて良かったのだろう。

 こうも早く手に入るのであれば、俺自身も買わなかったかも知れない。


 鋼装備と魔法銀の装備はそこまで大きな攻撃力の差はない。

 硬度もそこまで変わらない。

 何が違うのかと言えば、魔法との相性が良いという所だ。

 杖にするか、対魔法の装備として扱えば良い効果を及ぼす。

 剣の形をしていても魔法攻撃力が上がる感じだ。


 ただし、俺もティアもネクも魔法を使えない。

 はっきり言って宝の持ち腐れである。

 パステルが弓のままでも魔法攻撃力が上がるくらいだろうか。


 戦利品の中から人数分の装備を残して全て売却する。

 装備品以外は回復薬、解毒薬、毒薬といつも通りのラインナップだった。

 そろそろ装備品以外の物も欲しい。


 今日の稼ぎは1万DPを越えていた。

 前の階層が1日5000くらいだと考えればかなり増えているだろう。

 10日も稼げば念願のテレビが買えそうだ。

 今の貯金とあわせれば3日程度だろうか。


 と言っても、全てを貯金に回せるわけではない。

 スキルや他に必要な食料などもあるだろう。

 ゴブリンは楽に倒せてそして稼げる良い魔物のようだ。

 俺が迷宮に入らなくても稼いで貰う事も出来るかもしれない。

 完全にヒモ発言だが、もし6人以上の使い魔が増えたら分担するのも良いかも知れない。


「ふぅ……ご主人様、お風呂空いた」

「お、そうか。って、またそんな格好で」


 ティアが風呂が空いた事を伝えに来たようだ。

 そう思ってそちらの方を向くと、そこにはバスタオルを巻いただけの姿のティアが居た。

 こういう格好でうろつくのは、今回が初めてではなく、風呂上りは大抵そうだ。


 他のメンバーはちゃんと服を着ているのに、ティアだけが着て来ない。

 最初は誘惑しているのかと思ったが、聞いてみると獣人は体温が高いらしく、風呂上りは暑いらしい。

 注意はしたのだが、直すつもりはないようだ。

 尻尾が動くと普通に尻が見えてしまい、主に俺の欲望を抑えるのが大変だ。

 もしその場で襲い掛かっても受け入れてくれるだろうが、他に皆が居る場所でとかどう見ても羞恥プレイだ。

 喜ぶのはパステルくらいである。


 俺に伝えた後、ティアは無限箱にある牛乳を取り出し飲んでいた。

 以前、風呂上りの牛乳は胸を大きくするかも知れない、とうっかり零してしまったのが原因だ。

 何だかんだで悩んでたみたいだ。だがなティアよ……使い魔は成長しないんだぞ?

 大きいメンバーが居る訳でもないのだから、気にしても仕方ないだろうに。

 その辺りは俺にはちょっと解からない。男には永遠に解からない事なのかも知れない。


 風呂場の脱衣所の扉を開けるとそこには全裸の……ネクがいた。うん、真っ白い。

 ネクは慌ててその体をバスタオルで隠す。


「あ、すまん」


 俺はそう言って扉を閉める。

 あいつも一応女だった事を思い出す。さすがに骨に興奮はしないが、こういうのは謝った方が良いだろう。

 アンデッドだから、とぞんざいな扱いをすると機嫌が悪くなる。

 俺たちはネクを生きている人間と同じ様に扱うことにしている。

 ネクだって好きでアンデッドになった訳ではないだろう。

 原因は解からないが、仲間に寂しい思いをさせたくない。


 扉の前で待っているとネクが出てくる。

 特に怒っている気配はない。多少非難するような目でこちらを見てくるだけだ。諦められている訳ではないと思いたい。

 念の為、もう1度謝って風呂へと向かった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



使い魔スレ part12


556 名前:名無しさん

どうして女が来ないんだ!!


557 名前:名無しさん

突然どうした

発作か?


558 名前:名無しさん

ある意味発作かも知れん

この中にお医者様はいませんか!?


559 名前:名無しさん

医者をしてたが

残念ながら外科なんだ


560 名前:名無しさん

いるのかよ

チッ、エリートが


561 名前:名無しさん

で、>>556はどうしたんだ?


562 名前:名無しさん

女がいねぇんだよ

お前らがハーレム、ハーレムとか言っているのに全然こねぇんだよ!!


563 名前:名無しさん

あー運が悪い子か

試しに今までの迷宮を言ってみ?


564 名前:名無しさん

2.蟻

3.火山

4.水中

5.アンデッド

6.熱砂


565 名前:名無しさん

6階層とかwwww

どんだけ運がないんだよ


566 名前:名無しさん

かなり進んでるな

彼の欲望が力となっているのかも知れん


567 名前:名無しさん

蟻は蟻しかいないから無理だとして

火山はオーク、水中はリザードマン

アンデッドはヴァンパイア、熱砂は・・・サンドワーム?


568 名前:名無しさん

オークってあの豚面だぞ?さすがに無理だ

リザードマンもトカゲだから格好いいけど性的な目で見るのは不可能

ヴァンパイアは出なかった

サンドワームってなんだよ。でかすぎるわ

最近、コボルトでも良い気がしてきた


569 名前:名無しさん

出なかったのか

もはや呪われているんじゃね?


570 名前:名無しさん

是非ともそのままクリアまで突き進んでくれ


571 名前:名無しさん

うわぁぁぁぁぁぁぁ

それだけはいやぁぁぁぁぁぁ


572 名前:名無しさん

>>571の断末魔が心地よいとして

アンデッドって何で最初からアンデッドなんだ?


573 名前:名無しさん

何でと言われても・・・

アンデッドだからそうだとしか言えんわ


574 名前:名無しさん

いや、アンデッドって言っても

最初は人間だったりするじゃん?

それが死んで使い魔になっているんだから

アンデッドのままって変じゃないかなと思ってさ


575 名前:名無しさん

意外と変でもないらしいぞ

うちのリッチの変異種が言うには

死んだ後にアンデッドとして作り変えられたらしい

で、浄化されてしまった後にここで目覚めたんだそうだ


576 名前:名無しさん

つまり、アンデッドとして仲間になる奴は

アンデッドにされた過去があるのか

うちの子も記憶が戻ったら聞いてみるかな


577 名前:名無しさん

あー必ずしもアンデッドの頃の記憶があるとは限らないみたいだぞ

うちのがリッチだったからあったけど

スケルトンやゴーストだと

ないことの方が多いらしい


578 名前:名無しさん

そうか、アンデッドにされて使役されていた頃の記憶なんて

ない方が良いかも知れないな


579 名前:名無しさん

だよなー

実際、命令されて自分の家族を殺しているかも知れないしな


580 名前:名無しさん

それは悲惨だなぁ・・・


581 名前:名無しさん

なぁ、遅レスだけど

ゾンビ娘はなしなのか?


582 名前:名無しさん

二次ならあり

三次は本当に大惨事


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