19話
翌日、いつもの準備中にネクに声を掛ける。
「ちょっと防御強化の性能をテストしてみよう。盾を構えるから軽く殴ってくれるか?」
鎧を着用しようとしていたネクはその手を止めて頷いた。
鋼製のウォーハンマーを構えると勢い良く振り下ろしてくる。軽くって言ったのに……。
俺はそれを盾で正面から当てる事で防ぐ。金属同士がぶつかった音が鳴り響く。
だが、こちらの手に伝わる衝撃は殆ど無かった。
「これは凄いな。もっと早く欲しかったよ」
俺は思わず呟いた。これほどの軽減があるのなら、オーガの攻撃も防げたかも知れない。
そこまで高価なスキルではないので、1階層の時点でも購入は可能だっただろう。
もしかしたら、そこまで目を向ける余裕が無かったのかも知れない。
「ネクも攻撃を受けてみるか?」
そうネクに聞いてみると首を振ってきた。
仕返そうと思ったのにちょっと残念だ。
「私もやりたい」
「え?」
「なら、あたしも」
「え?」
ティアとタリスが名乗り挙げる。そういう遊びじゃないんだが……。
てか、タリスは物理攻撃ないじゃないか。
そして俺は剣と魔法の防御まで試す事になってしまった。
魔法を防ごうとして盾が加熱されて火傷を負ってしまい、探索は翌日に持ち越す事になったのだった……。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スキルスレpart5
114 名前:名無しさん
最近になってようやく攻略を始めたんですが
何かお勧めのスキルってありますか?
115 名前:名無しさん
ようこそ
修羅の道へ
116 名前:名無しさん
まぁまぁ脅すな
最初なら武器関連スキルだな
軽業とか根性とかあると便利だ
少し進んだくらいから罠解除は必須になるが
それはそこまで進んでからでいい
117 名前:名無しさん
根性って何だっけ?
118 名前:名無しさん
即死するような攻撃を受けてもその戦闘中に1回だけ瀕死で残るってやつ
事故防止に便利だぞ
すぐに回復薬を飲めば戦線に復帰できる。
119 名前:名無しさん
それは便利そうだな
120 名前:名無しさん
直感スキルも結構いいぞ
空気を読めるようになる
121 名前:名無しさん
KYさんにあげたいスキルだ
122 名前:名無しさん
察しすぎるから色んな意味で怖いけどな
123 名前:名無しさん
2階層に進めば感知スキルだな
マップ次第だが、見渡す限り一面が草原とかもある
物理攻撃が効く敵は大抵生体感知、幽霊とかエレメンタルみたいなのは魔力感知
これらを覚えるとスムーズに狩りが出来る
124 名前:名無しさん
敵がどこにいるか解かれば奇襲にも対応出来るしな
125 名前:名無しさん
それは便利そうだ
蟻みたいにどんどん増える相手だと位置関係が凄く重要になるし
126 名前:名無しさん
勝てそうになくて逃げるとしてもその方向を選べるのは大きいぞ
マップを開くのと同時に使えば広域サーチ出来るし
127 名前:名無しさん
感知スキルってレベル上がるとどうなるんだ?
LV1でも結構効果広いよな
128 名前:名無しさん
範囲が広がるのはもちろんだが
敵の弱点までわかるようになる
どれくらいのレベルが必要かは敵依存だがな
129 名前:名無しさん
使い魔にお勧めってない?
130 名前:名無しさん
生産スキルもだが、メイン盾には防御強化だな
盾役には必須と言ってもいい
弓を使うのなら鷹の目があるとかなり遠くまで撃てるらしい
131 名前:名無しさん
後は暗い迷宮もあるからそこでは夜目だな
カンテラやランプで明かりを付けても良いけど
片手が塞がれないのはでかい
132 名前:名無しさん
そんな迷宮もあるのか
アンデッドとか出たら雰囲気出そうだな
133 名前:名無しさん
そのマップは通称アンデッド祭りだぞ
わんさか居る
134 名前:名無しさん
マジかよ
お化け屋敷とか苦手なんだよな
出ないでくれよー
135 名前:名無しさん
フラグが立ったな
136 名前:名無しさん
ああ、>>134の次の迷宮はアンデッド祭りだな
137 名前:名無しさん
ちょ、やめてー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「マスター、感知スキルの範囲を調べてきたわよ」
調査のまとめを書いた紙を受け取って読んでいく。
LV1程度だと大体直径100m範囲が薄らと解かる程度らしい。
掲示板だと弱点とかまで記載されるってあったが、これはマッピングとの併用だろう。
火傷して俺がベッドにくくりつけられている間、ネクとティアとタリスの3人でスキルの検証を頼んでいた。
火傷自体は軽いものだったのだが、慌てたタリスとティアによって探索禁止を出されてしまった。
とりあえず、俺は治療の為に寝ていなければならないのだが、使い魔3人はやる事がなくなる。
なので、新たにタリスが覚えた生命感知の範囲を調べてもらう為に、俺なしで迷宮に入って貰った。
一応、罰という名目なのでしっかり調べてくれたようだ。
「ご主人様、痛いところは無い?」
「ん? ああ、そもそもそこまで酷い火傷じゃないぞ」
ティアが火傷の具合を心配してくるが、動いても全く問題は無い。
少し盾を持っていた手を火傷した程度だ。
熱い金属に触れてしまった程度でしかない。
回復薬では傷を治す事は出来るのだが、火傷は状態異常扱いらしく治らない。
ベッドで寝転がってジッと休むか、専用の薬品を使うしかないのだ。
変な所で不便である。
この程度ならそこまで気にするほどでもないと思っていた。
だけど、ネクから治す必要があると推された。
少しの傷が命取りになる可能性がある、とまで言われたのでは治すしかないだろう。
中々シビアなこの迷宮では納得できる一言だ。
大した傷ではないので、ベッドに寝て数時間で完全に違和感も残らず完治している。
とは言え、既に結構な時間の為、これから探索を始めようとすると1,2時間ほどしか出来ない。
迷宮内に夜があるのかまでは解からないが、いつものサイクルを崩してまでやるような事ではないだろう。
皆にこの後は休みである事を伝えると俺はPCの前に座る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スキルスレpart5
225 名前:名無しさん
良いスキルは良いんだけど
逆に駄目なスキルってないのか?
226 名前:名無しさん
当然あるぞ
周囲を明るくする発光が有名だな
227 名前:名無しさん
何でだ?
暗い洞窟とかだと凄く便利そうなんだけど
228 名前:名無しさん
発光は使う条件があるんだよ
それを発動させるにはスキンヘッドにする必要がある
229 名前:名無しさん
ちょ、光るの頭かよ
あ、でも髪の毛の無い種族が使えば良いんじゃね?
230 名前:名無しさん
on/off不可でもか?
231 名前:名無しさん
常時光り続けるって何のイジメだよ
232 名前:名無しさん
後光というスキルと併用すると凄いぞ
233 名前:名無しさん
ああ、仏になれるよな
234 名前:名無しさん
ハゲの頭が光って後光って・・・
何か宗教でも興すのか・・・?
235 名前:名無しさん
やばいのだと飛翔スキルもあるな
236 名前:名無しさん
名前だけだと凄く便利そう
237 名前:名無しさん
飛翔する場面では役に立つけど
常時発動スキルでon/off不可
238 名前:名無しさん
ずっと飛びっ放しかよ!
拠点でどうするんだよ
239 名前:名無しさん
え?便利だぞ?
無重力空間みたいで良い感じだ
物は落ちるけどな
240 名前:名無しさん
すげー不便そう
241 名前:名無しさん
他にはああ、有名すぎて忘れてた
毒手スキル
242 名前:名無しさん
もう嫌な予感しかしねぇ
243 名前:名無しさん
武器に毒を付与するスキルなんだけど
武器だけじゃなくて持った物全てに毒が付くんだ
食べ物や食器でもな
244 名前:名無しさん
自分で何も食えないじゃないか!!
いや、使い魔に食べさせてもらうのか?
245 名前:名無しさん
うっかりその手で使い魔に触れたら毒を与えてしまうけどな
まさか家具やトイレにも毒が付与されるとは・・・
246 名前:名無しさん
武器以外にも付与しちゃってるじゃないか・・・
地雷スキル多すぎだろ
247 名前:名無しさん
それでも俺らは新しいスキルの発掘を諦めないけどな
248 名前:名無しさん
スキル消去にかかるDPでかいのに・・・
249 名前:名無しさん
でもあれだよな
皆が知らないスキルを得ると優越感に浸れるだろ?
次は高価だけど変形スキルを取ろうと思ってる
250 名前:名無しさん
嫌な予感しかしない
せめて関節の無い種族に覚えさせろよ?
251 名前:名無しさん
お前、このスレのルールを知らないのか?
新スキル報告は自分で覚えたもの限定だぞ
252 名前:名無しさん
何でこのスレには勇者が多いんだよ!!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「凄いスキルがあるんだな……取る時は気をつけよう……」
発光はさておき、さすがに常時空を飛ぶとか、その辺に毒を撒き散らすのはやばい。
この世界の毒は腐敗だから、小さな傷で気が付かない方が危険なのだ。
RPGのようにHPが減っていく合図みたいなのがあれば良いのだが、そんなご都合的な物は無い。
スキル漁りに触発されて俺もリストを眺めていく。
必要なスキルしか取っていなかったが、この辺でちょっと生活に役に立ちそうなのを選びたい。
と言っても小心者なので、ちゃんと効果を報告されたのしか取るつもりは無い。
色々と調べていると以下のようなスキルが見つかった。
釣り:魔物を釣るのではなく、魚釣りの方。技術の知識が入ってくるらしい。だが、釣りを出来る場所が無い。
投擲:物を投げた時の命中率や威力が上がる。ただし、誰かに物を投げて渡そうとすると危険。
ペーパークラフト:紙で色んな物を作れるようになる。主に雑貨類。
演奏:楽器の演奏をするのが上手くなる。
歌唱:歌を歌うのが上手くなる。
人形操術:人形を動かせるようになる。人形が強くなる訳ではない。
精力増大:夜の生活で大活躍。
分身:あたかも複数に分かれたように見せる。実際は分かれていない。
「ちょっと投擲は良さそうかな」
俺はそう呟きながら目線は精力増大に向いていた。
スキルに頼ってしまったら何か負けた気分になるが、このまま使い魔が増えていった場合、俺の体力が持つのだろうか。
さすがに毎日となってしまうと結構きつい年頃である。
自分用に投擲と精力増大を購入する。
今すぐ必要じゃなかったとしてもスキルを上げていれば、その内必要になるさ。
使用しようとして気が付いた。スキルの限界数を越えてしまった。
「むぅ……料理スキルって使ってないし消去するか」
必要DPが5000も必要になるが、使っていないスキルをずっと持っていても仕方ない。
料理スキルを消去して2つのスキルを取得した。
すぐに実感出来るようなスキルではないようだ。投擲なら剣やナイフでも良いだろう。
とりあえず投げる練習をする為に訓練所へと向かったのだった。




