13話
「今日はあの森の攻略に入る。まだ掲示板の方では情報が集まっていないらしく、どんな敵が出るかは解からない。皆十分気を付けてくれ」
翌日、準備を終えてからのミーティングだ。
一応リーダーとして情報の開示やどんな風に攻略を進めていくか決めなければならない。
そういうのを伝える場としてこのように迷宮探索前に話し合う機会を作る。
「昨日の様子を見る限り視界が悪くなるわね。居るとすればエルフかしらね」
「エルフ?」
タリスが平然と言ってくる。やっぱりエルフって居るのだろうか。
いや、そもそもタリスは何故そんな事を知っているのだろう。
もしかしてそういう事に関する記憶が戻っているのだろうか。
「タリス、もしかして記憶とか戻っているのか?」
「記憶が戻る? そもそもあたしは失ってなんていないけど……」
タリスのその言葉にネクとティアはタリスを見る。どうやら2人は失っているようだ。
記憶を失っている者も居る、と言う事は失っていない者もいるという事だ。
タリスは失わない方、ネクとティアは失っているパターンなのだろう。失っていたとしても何かの拍子で戻る事がある。
恐らくは死ぬまでの記憶だろうから、思い出さないのも幸せなのかも知れない。
それでも俺としては残酷だが思い出して克服して欲しいと思っている。
「そうか。差しさわり無ければ以前の世界でタリスがどういう風に暮らしていたか教えてくれ」
「いいわよ。他のフェアリーと違う所を一杯教えてあげる」
タリスは胸を張ってそんな事を言ってくる。そもそも普通のフェアリーがどうなのか自体知らない訳だが……。
本人が楽しそうなので気にしない方が良いだろう。
「それでエルフだっけか。やっぱり居るのか?」
「ええ、あたしが住んでいた森の近くにも普通に居たわよ。弓と精霊魔法で遠距離攻撃を得意としていたわ」
あの木々の隙間から撃って来るのだろうか。
やり返そうにも木を盾にされたらかわされそうだ。
奇襲には気を付けねばならないだろう。
そういう便利なスキルでもあれば良いのだが……。
「解かった。皆遠距離攻撃には警戒をしてくれ。さて、これ以上の情報はなさそうだから、迷宮へと向かおう」
「はーい」
「うん」
タリスとティアが返事をする。ネクは頷いて答えとしていた。
俺たちが鎧を身に付けて転移の石を使用して2階層2階へと移動した。
「隊列は俺とティアが先行、後ろにネク、その中間にタリスが入ってくれ」
山小屋の中で隊列を指示する。全員正面に出れれば良いのだが、見晴らしが悪い以上後方の警戒も必要だろう。
タリス以外は鎧や兜を着用しているが、タリスだけは弓矢だとしても当たれば致命傷だ。
妖精用の防具とかあれば良いのだが、生憎今の所は出ていない。
俺たちは山小屋を出て一方向へと歩き出す。
特に決まった道順は無いが、少なくともその場所に行かないとマップの解放が出来ない。
街道のようなモノがあればそれに沿って歩く事も出来るが、生憎深い森なのでそんなものはない。
当てもなくただ彷徨う様に探索を続けて行った。
「ん? 何か動いているな」
「こっちでも見えた」
少し遠くの方で何やら細長いモノが動いた気配があった。
ティアも確認したのなら恐らく何かが居るのだろう。
「ネクはそのままタリスを守ってくれ。俺とティアで様子を見る」
ネクに指示を出すと背後に了承する意思が伝わってくる。
気配でそういうのが解かるのは便利だと思う。
俺とティアは剣を抜くとその細長い何かに向かって歩き出す。
罠である可能性もあるから警戒は解けない。
「これは……蛇か?」
「そうみたい」
全長1mほど、太さは5cmもない蛇だ。この迷宮に出現するくらいだからモンスター扱いなのだろう。
だが、このサイズで森の中に居たら普通に見逃しそうではある。
とは言え、モンスターなら倒せば宝箱が出現する。なら、倒さない手は無い。
俺は剣を振りかぶって蛇に向かって振り下ろした。動きも鈍くそのまま斬り付ければ倒せそうな感じだったからだ。
「うおっ」
剣が蛇に当たる直前に突然蛇が飛び跳ねる。そして俺の左腕の二の腕辺りに噛み付いた。
この世界の蛇は飛ぶのか。
蛇の牙が布製の服を貫通して俺の腕に突き刺さる。
「――ッ!」
「ご主人様!」
ティアが少し慌てながら蛇の尾の方を掴みその体を両断する。どうやらかなり弱い部類のモンスターのようだ。
すぐに蛇は粒子になって消滅する。牙が突き刺さっていた所は少し血で滲んだくらいで済んだようだ。
ここに来てから筋肉が結構付いたのもあり、思ったより深くは突き刺さらずに済んで助かる。
「大丈夫? 回復薬はいる?」
「いや、いいよ。これくらいなら探索に影響は無い」
心配そうに見てくるティアの意見を拒否して宝箱を開ける。
モンスターよりでかい箱が出現するというのは違和感しかないが今更だろう。
「さて、進もうか」
箱を開けて戦利品をアイテムボックスに仕舞うと探索を再開する。
しばらくオオカミや蛇を倒しながら進む。先ほどの様な不覚は取らない。
そうして歩いていると遠くに洞窟が見えた。いかにも怪しい。
「洞窟だよな? あれ」
「そうにしか見えないけど……マスター大丈夫?」
俺が聞くとタリスが心配そうな顔でこちらを見てくる。どうしたのだろうか。
「ん? 俺はいつもと変わらないと思うが、何か違うのか?」
「ご主人様、凄く汗をかいてる」
そう言ってティアはアイテムボックスからタオルを取り出して俺の顔を拭く。戦闘が続いていたからだろうか。
いつもだったらここまで汗はかかないと思うのだが……。
「何だろうな。今の所不調は感じない。この洞窟を調べ終えたら戻ろうか」
「そうしましょ。無理しても仕方ないしね」
洞窟に入ると所々が光っている。それのお陰で思ったより明るいようだ。ヒカリゴケだろうか。
苔の数が多く、壁がエメラルドの光によってイルミネーションの様に飾られている。ある種幻想的な光景である。
その中を2,3分歩いて進んでいると大きな広間に出た。その中を見渡すと奥の方に蠢く存在が居る。
「あれは……蜘蛛か?」
「う……苦手なのよね……」
俺がその存在を確認するとタリスが嫌そうな表情をする。
以前森に住んでいたと言っていたし蜘蛛に関する嫌な思い出でもあるのだろうか。
「苦手でもやるぞ。タリスは遠距離から支援を頼む。ネクと俺は前衛にティアは周囲の警戒とタリスを頼む」
「ん、了解」
「仕方ないわね」
返事を聞いてネクと共に広場へと飛び出す。ネクは相変わらず感情を飛ばしてくるので意思の疎通が楽だ。
広場の中央まで入ると蜘蛛も気が付いたのかこちらに寄ってくる。数はおよそ10体程度だ。
その体の大きさは全長60cmくらいだろうか。こんなのが現代の日本で見つかったら大騒ぎである。
最初の1体目がこちらに突撃してくる。それをタリスが炎の矢を撃ち出して迎撃する。
その炎はすぐに蜘蛛の体に引火し燃やしていく。2体目はネクが待ち受ける。ネクなら問題ないだろう。
それを横目に見ながら正面の1体を見る。その蜘蛛は体当たりをしてきた。
俺はそれを盾で受け止めてその隙に蜘蛛の体を剣で貫こうとした。
だが、盾に蜘蛛がぶつかった瞬間盾が吹き飛ばされた。
「えっ?」
思わず素っ頓狂な声が漏れる。自分の左手を見るとそこには腕が無かった。
どういう事だろうか。盾が飛ばされたのではなく俺の腕が飛ばされた?
腕から血が溢れて出てくる。その光景を自分の事ではない様に呆然と見ていた。
「ご主人様!」
ティアの叫びで我に返る。盾を……いや、俺の腕を吹き飛ばした蜘蛛がこちらに迫ってくる。
俺はどうにか剣を突き出し正面からその蜘蛛を突き刺す。心音がバクバク鳴って冷静になれない。
ティアがこちらに走ってきて俺の周囲の蜘蛛に向かって切り込む。恐らく俺に代わって戦うのだろう。
「マスター、これを飲んで」
「え? ああ」
現実味が無く朦朧とした意識の中、タリスに渡された液体をほぼ無意識の内に飲み干す。
2つの瓶の液体を飲み干すと血が止まる。片方は回復薬だったらしい。
お陰で傷が塞がったのだろう。だが、そこには俺の腕はない。あるはずのものがない。
その事実を確認すると意識をせずにいつの間にか膝を突いていた。
剣はいつの間にか手放していたらしく右手には何も持っていない。
既に戦闘は終わっていたらしく、ティアとネクがこちらに走り寄って来る。
ネクは俺の腕と盾を回収したらしくその手に持っていた。
それを見ると俺の目からは涙が流れる。痛みは麻痺しているのか一切ないので、それのせいではない。
自分の腕を失ったという事から、意識をせずに出てしまっているのだろうか。
「ご主人様、戻ろう」
「そうね。ここでは危険だから洞窟から出ましょ。ティアとネクも怪我してたら解毒薬を飲んだ方が良いわよ」
2人が何か言っているようだが、俺の耳には遠くの出来事の様に聞こえる。
ネクは俺の右腕を取り肩にそれを回すと、俺を引き摺るように洞窟の外まで連れて行くのだった。
タリスが羽を使い拠点へと戻る。そしてそのまま俺はベッドに寝転がる事になった。
左腕がジュクジュク音を立てている。何だこれは。
「マスター、ベッドの効能は覚えてる?」
「え? 確か……時間をかけて傷を治してくれるんだっけか」
そこで思い出す。ベッドの効果で部位の欠損すらも修復してくれる事を。
それを思い出したことで俺の心は凄く落ち着いた。そうだ。失った訳ではないんだ、と。
「そう。だから安心して寝て良いのよ」
「ああ、そうさせて貰うよ。ごめんな」
俺はタリスの声に誘われるまま目を閉じた。
ここに来て数日経つが、俺は本当の意味で戦う覚悟が出来ていなかったのかもしれない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【2階層は】攻略スレ総合 part3 【異世界だった】
602 名前:名無しさん
火山がきつい
熱い、暑い
どうにかならないのか、これ
603 名前:名無しさん
薄着をする訳にもいかなしな
604 名前:名無しさん
そんな貴方にクーラード(ry
605 名前:名無しさん
そんなものはない
606 名前:名無しさん
魔法で氷を作るとか
607 名前:名無しさん
魔力が足りないだろ
608 名前:名無しさん
鍛冶とかでアイスアーマーとか作れないの?
609 名前:名無しさん
ああ、その手があったか
でもうちに鍛冶出来る奴がいねぇ・・・
610 名前:名無しさん
アイスアーマーというか鎧に付与で氷属性を付ける事は出来るぞ
だけど、火山だと火属性が多いから耐性が弱くなるけどな
611 名前:名無しさん
何と言う諸刃の刃
612 名前:名無しさん
マジで悩むな
水筒に水を入れて持っていっているんだけど20%踏破する前にすぐ切れる。
大量に持っていくにもDPがなぁ・・・
613 名前:名無しさん
セットじゃないのか
セット以外って高いよな
コップとかは10個まとめで100だけど、マグカップは1つ100とか
614 名前:名無しさん
100くらいは、と思う程度には安定して稼げてはいるんだがな
1階層攻略してた頃を思い出すと思わずケチってしまう
615 名前:名無しさん
そういえば、恐ろしい2階層ネタも随分減ったよな
熱いとかはそこまで恐怖を感じないし
溶岩に落ちたとかなら怖いが
616 名前:名無しさん
早い奴はもうボス戦を攻略とかやっているんじゃないか?
617 名前:名無しさん
もう2階層突破したって奴いたぞ
618 名前:名無しさん
はえーな
何が彼をそこまで駆り立てるのか
619 名前:名無しさん
ネタを提供しよう
毒を食らった
ほっといたら腕がもげた
620 名前:名無しさん
おぃ
621 名前:名無しさん
マジかよ
この世界の毒こえー
622 名前:名無しさん
解毒薬って1階層でも取れたよな
何で使わなかったんだ?
623 名前:名無しさん
毒だと気が付かなかったな
んで、突然ポロリと
624 名前:名無しさん
怪しいと思ったら即飲めって事か
気をつけないとならないな
625 名前:名無しさん
別のポロリなら良いんだけどな
626 名前:名無しさん
そのネタ随分と古いな
あの頃は公共電波でもやばかったよな
627 名前:名無しさん
ああ、何で規制されてしまったんだろうな
628 名前:名無しさん
おいおい、お前ら脱線してるぞ
毒をもっていそうな敵って何だろう
629 名前:名無しさん
俺が受けたのは毒蛇かな
普通の蛇だと思ったんだがなー
630 名前:名無しさん
ゾンビとか
毒装備とか使ってくる人型種族が居そう
631 名前:名無しさん
でも美少女に噛まれて毒になるのならいいかも
632 名前:名無しさん
いや、噛み付いてくる時点でどうなんだよ




