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私は異世界で百合の花園(ハーレム)を創ることにした。  作者: 虹蓮華
第1章「異世界生活を始めよう」
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本編1-7「腹が減っては何も出来ない」

2018/07/06

・フォーマットを変更しました。

・本文の一部に、最低限の極軽微な加筆と修正を加えました。

 昨日は相当疲れていたらしく、起きたのはお昼近くだった。


 ベッドで寝られたというのも大きな要因であろう。ティアも珍しく未だに夢の世界に居た。

 とは云え、そろそろ起こした方がいいかも知れない。

 体を軽く揺すると、それにつられて大きな双球もフルフルと揺れる為、ずっとそれを眺めて居たくなるが、バレた後が怖い。


 ちょっと強めに力を加えることで、起こしに掛かる。


「ティア、そろそろ起きた方が良いわよ!」


 そこで漸く、小さな欠伸をしながらティアも起きた。


「お早う御座います、クスハ。私としたことが、すっかり眠り込んでしまいました……」


 語尾になるに連れ消え入りそうになっていく言葉を発した後、フフ……、フフフフフ……、と目のハイライトが消えたような表情で、ほの暗い笑みを浮かべながら笑うティア。


 人智の及ばぬ能力を目の当たりにさせられ、葛藤しているのだろう。

 しかし、そこは私の相棒であるティア。

 何度も経験したが故に、復活も早く、何事も無かったかのように今日の予定について尋ねて来た。


「それで、クスハ。今日は先ず冒険者協会へ行くとして、その後はどうしますか?」


「んー。出来れば市内観光も幾つかして置きたい所だけど、時間が時間だし、手続きの内容によっては、登録だけで今日は終わりかしらね」


 小さくお手上げしながら答える。


「確かにそうですね。今のところ、挿し当たっての急用はそれだけですし、その後の事はゆっくり考えましょうか」


「それと、そろそろお昼に致しましょう」


 そう付け加えた彼女に、「ええ」と答え、お互いに軽く笑いあって部屋を出る。

 結局昨日の夜に決めた方針で行動することになり、階段を下りた所で、休憩用のテーブルに座るエマちゃんを見つける。


「あら? こんな処でどうしたの、エマちゃん」


 私がそう尋ねると、手にしていたコップを置き、振り返ると駆け寄ってきた。


「クスハさん! ティアさんも! 起きるの遅すぎです。私、ずっと待っていたんですよ。伯母さんから聞いてはいましたが、もう出てしまわれたのかと思って、心配しました!」


 そう言って、ちょっと涙目で訴えてくる。


 私は『えー……』と思いつつも、苦笑いしながら彼女の頭をポンポンと撫でてやる。


 すると、彼女も今の自分の様子に気が付いたのか、慌てて顔を俯かせる。

 赤面した顔も可愛いな……などと思っていると、ティアが杖の柄で私の背中を軽く小突いてきたので、用件を問うことにする。


「それで、さっきも聞いたのだけど、どうしてこんなところに居るの?」


 私が少しばかり身構えながら問いかけると、エマちゃんはバッと勢い良く顔を上げ、


「あ、そうでした! クスハさん達、ご飯まだですよね? 本当は朝ごはんからご案内したかったのですが、お昼からでも問題ありません! この辺にも、安くて美味しいお店は一杯あるんですよ」


 と捲し立ててきた。


 そんな彼女の様子に、驚き半分で困ったような笑顔を向ける女将さんに挨拶をすると、彼女を先導にして宿を出たのだった。




 少し歩き、エマちゃんの案内でオープンカフェを思わせる小洒落たお店に到着する。

 屋外席は二つと決して大きくは無いのだが、店全体に手入れが行き届いているのが一目で分かり、好感の持てる佇まいだ。


 そんな感想を抱いていると、立て札が立っている席にエマちゃんが座ったので、それに続いて私達も腰を下ろすと、なんだか『予約』という文字が見えた気がした。

 え? まさか、こんな事まで用意していたの? と戸惑っていると、奥からウェイトレスのお姉さんがやってきて、メニューを差し出しながらエマちゃんに語りかける。


「あら、エマがお友達を連れてくるなんて珍しいわね。道理で、席を予約したいだなんて可笑しなこ

とを言ってきたわけだ」


「ジュディーさん!」


 顔を真っ赤にして慌てて抗議しようとするエマちゃんをコロコロと笑いながら宥めると、こちらに向かい、「この娘、ちょっとそそっかしい所もあるけれど、とても良い子だから、これからも仲良くしてあげてね」


 そう言ってウインクをすると、「ごゆっくり」と言い残して店の奥へ去って行った。

 全くもー、とブツブツ言っていたエマちゃんだったが、直ぐに気を取り直すと、


「あのね、ここの湖水水牛を使ったローストビーフサンドがとても美味しいんですよ!」


 力説気味にメニューを指し示して教えてくれた。

 彼女のオススメなら間違いは無いだろう。私はそれにすると、ティアを伺う。


「そうですね、私はお肉が苦手なので……。エマさん、それ以外で何かオススメはありますか?」


 ティアの種族を失念していたエマちゃんは、「も、申し訳ありません。気が回らなくって……」と萎縮してしまっていたが、良い案が浮かばなかったのだろう。直ぐに助け舟を呼ぶ。


「ジュ、ジュディーさーん。ちょっといいですかー?」


 店の奥に向かって手を振って呼びかけると、「はいはい、どうしたのかしら」とクスクス笑いながら出て来た。

 エマちゃんが縋るように事情を説明すると、


「そうですね……。それでしたら、お肉の代わりにお豆を使ったラザニアが御座いますので、そちらになさいますか?」


 とティアに尋ねたので、彼女も、「それでお願いします」と答える。

 私達は既に注文が決まっていたので、一緒に二人分のローストビーフサンドも頼んだ。


 程なくして、料理が運ばれてくる。


 サンドの方は、四角いパンを半分に切って合わせたものが、4つもバスケットに並んでいた。

 ローストビーフサンドが二切れと、卵サンドが二切れという構成だ。そのどれも、具がたっぷりと詰まっている。

 これ、女の子が食べる量としては多いんじゃないの? とも思ったが、エマちゃんを見ると、量を気にした様子は無い。寧ろ、目が輝いているようにも見える。


 ラザニアはと言うと、こちらもちょっと大きめの四角い平皿に盛り付けられていたが、たっぷり乗せられたチーズから上る湯気がとても美味しそうだった。


 皆で揃って「いただきます」をすると、私はローストビーフサンドを取り出し、直接頬張った。

 実は、小皿とナイフとフォークも添えられていて、乙女の行動としてあるまじき行為であると認識してはいたのだが、サンドイッチは、齧り付くのが醍醐味であり、作法だと思う。

 エマちゃんも同じように食べていて、ティアだけが呆れたように笑っていた。

 そんなティアは、ラザニアを小皿に取り分けてから優雅に食べており、それだけでも絵になるようだった。


 私は次に卵サンドを取り出し、お皿に置く。先ほども伸べたが、私も乙女である。

 エマちゃんは未だに気にしていない様子だったが、ここからは私は優雅にお食事を取る事にする。


 小分けにして一口目を食べたところで、


「そうだ、卵なら普通に食べられるんじゃないの?」


 とティアに聞いてみると、「ええ、問題ありませんよ」と返ってきたので、


「それじゃ、食べ合いっこしましょう。はい、あーん」


 そう言って、彼女の口に卵サンドの一切れを運ぶ。


 ティアは突然の申し出にとても驚き、抗議の意思を目で訴えてきたが、私も目で引き下がらない姿勢を見せると、諦めて、恥ずかしがりながらもパクリと食べてくれた。

 彼女が食べ終わるのを待ってから、


「それじゃ、次は私の番ね。あーん」


 そう言って、今度は私がティアに向かって口を開けた。


 先ほどの行為のお陰か、ティアは更に恥ずかしがりながらも、消え入りそうな声で「はい、あーん」と言いながら、スプーンで一口分のラザニアを掬い、私の口の中に運んでくれた。


 そんな様子を眺めていたエマの心が、チクリと痛んだ事をクスハは知る由も無い。

 そうして楽しい昼食が終わったところで、エマちゃんが身を乗り出しながら尋ねてきた。


「あの、この後ご予定はありますか? 若し良ければ、市内観光など如何でしょう?」


 私はティアと顔を見合わせると、


「それなんだけど、私達はこれから冒険者協会に寄ろうと思ってるの」


「折角のお申し出を断る形になってしまって御免なさい、エマさん。また今度、お願い致しますね」


 と私に続いて、ティアが申し訳無さそうに答える。

 目に見えて気落ちしてしまった彼女だったが、少し考え事をした後、納得の行く答えに辿り着いたのか、


「なら! 私が冒険者協会までご案内致します!」


 気合の篭った声で私達に告げたのだった。


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