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私は異世界で百合の花園(ハーレム)を創ることにした。  作者: 虹蓮華
第1章「異世界生活を始めよう」
7/43

本編1-5「女の子二人だけの旅路とか、鴨が葱を背負って歩いてる様にしか見えない」

2018/07/06

・フォーマットを変更しました。

・サブタイトルを変更しました。

・会話の一部に、より説得力を持たせる為、最低限の加筆を加えました。

 今日は、何時もより早く起床する。

 昨日は遅くまで起きていたので睡眠時間としては少なめだが、期待で胸が高まっていた為、問題なく起きることが出来た。


 顔を洗うべく洗面場へ向かうと、台所の方から忙しなく動く音と良い匂いが耳鼻を擽る。

 どうやら、彼女も相当気合が入っているようだ。


 手短に朝の準備を済ませ、ダイニングテーブルに着きながら、邪魔にならない程度に声を掛ける。


「おはよう、ティア」


 すると彼女は一旦手を止めて、軽くこちらを振り返りながら、


「お早う御座います、クスハ。昨夜は良く眠れましたか?」


 なんて聞いてくるので、


「あはは、ワクワクしすぎて、ちょっとしか眠れなかった。でも、寝不足という程では無いから安心していいわよ。それより、ティアの方こそ殆ど寝てないんじゃない?」


 と苦笑交じりに質問で返すと、


「ああ、私はエルフですので、そこまで睡眠は必要では無いのですよ。勿論、寝るときは確り寝ますが、一晩二晩寝なくても特に問題はありません」


 などと軽く衝撃的な事実を、作業を再開しながらサラリと教えてくれた。


 あれ? と云う事は、ティアはこれまで、疲れた私を気遣って眠気があるように振舞ってくれていた事になる。

 そんな彼女の心配りに胸が温かくなるが、それを口には出さず、


「エルフって便利なのね……」


 なんて呟きながら、机に突っ伏して顔だけを上げて、彼女の背中を眺めるのだった。


 朝食を素早く済ませると、準備の最終確認を行う。

 この日の為に、やはり余った布や革を譲って貰い、《想像》の能力で作った服に着替える。


 私の服装は、チェック柄のボックスプリーツのミニスカートに、腿の真ん中位まであるサイハイソックス。

 リアルではとても穿けそうに無いマイクロミニの丈に恥ずかしさも覚えるが、ファンタジーを満喫するならば一度は穿いておきたい。サイハイとの僅かな隙間を作ることも忘れてはいけない。

 上半身には首元にフリルをあしらった開襟七部袖Tシャツを着、その上から腰丈のジャケットを肘まで捲くって羽織れば完成だ。

 おっと、肩から袈裟懸けに掛けるポーチを忘れる所だった。……因みに、ポーチは軽いのでパイスラは発生しないんだけどな!


 世界観を完全無視した出で立ちではあるが、気にしたら負けと言うものだ。


 ティアの服装も、遠出ということで革を主体にした丈夫そうな物だったのだが、如何せん、野暮ったくて可愛くない。

 渋る彼女を説得して、こちらも可愛く改造させて貰った。


 レンジャーを思わせる服装の方向性はそのままに、全体的に茶色かった服を緑色で新緑の青葉を思わせる色合いに変更し、森の木々を思わせる装飾を全体にあしらう。

 上着部分は長袖の革服だったのを、チューブトップの上から半袖ジャケットとベストを組み合わせた上着を羽織る形に変更し、腕を保護する目的として、指貫を施した肘上まである革製の手袋を着用する。肩から背中を覆う外套も付属済みだ。


 そして、一番の残念部分であった革製の無骨な長ズボンであった物は、さらなる大幅な変更を加えた結果、完全な別物へと変貌を遂げる。

 ギリギリ、ボックス型を維持出来る程度に短くしたショートパンツは会心の力作だったのだが、彼女が全力で拒否してきたものだから――正直、私も遣り過ぎたと思った――、折衷案として、腿のほぼ全体を覆うような革製のサイハイ型ブーツを用意する事になった。


 ――ぶっちゃけ、計算どおりである……。


 完成した服を身に纏ったティアは、それは大層恥ずかしがっていたが、何度も可愛い事を強調して宥めると、諦めた様子で着用してくれる事になった。


 可愛いと言われる度に貌が綻んでいたのを私は忘れないよ。口には出さないけどね。


 お互いの格好に満足していると、彼女は最後の準備として、矢筒とナイフを装備していく。

 そして、あろうことか、その上から膝まである大きな外套を羽織ってしまった。


 ――その手があったかっ……!

 なんたる不覚っ……、なんたる失態っっ……、なんたる絶望っっっ……。


 全て問題無し。

 彼女の無慈悲な準備完了の合図に、私はただ黙って頷くしか出来なかった……。




 私達はお互いの持ち物を確認し終えると、領都に向かうべく家を後にした。


 泉とは逆の方に向かい、道なき道を進む。

 偶に獣道らしき部分もあったが、基本的には深い森の中をひたすら歩き続ける。


 エルフである彼女のお陰で真っ直ぐ進むことが出来ているが、自分一人だけだったなら、ものの十分かそこらで迷子になってしまっていただろう。

 ティアの背中を頼もしく思いながら、これから向かう街に思いを馳せる。


 ――エングリン辺境伯辺境領エングルの領都《エングリンド》――


 名前がそのまま領名や街の名になっているあたり、皇国内での地位の高さが伺える。

 実際、聖霊の泉は皇国と王国とそれぞれ面しているのだが、その内皇国側に所属している貴族の領地で、王国との国境を守護しているとだけあって、皇国内でも最重要な立場にあるようだった。


 立地は、広大な高原の中を大きな河が大蛇行して流れており、その河に挟まれるような形で都市が形成されていて、河を自然の堀としつつも街全体を壁で覆われた、円形の美しい街並みだそうだ。


 話しを聞いているだけでも、どんな場所なのか想像が溢れてきてワクワクしてしまう。

 異世界転生でファンタジーな世界と言えば中世の世界観が王道ではあるのだが、この世界もご他聞に洩れず、中世感満載な雰囲気に溢れている。


 魔法は実在するし、広く認識はされているものの一般的には特別な存在の為、使える者は限られており、そういった者の多くは国家の中枢で働いていると言う事で、文化水準は中世よりかは進んでいるが、産業革命まではほど遠いといった感じだった。


 但し、上下水道などの治水、衛生面はかなりの高水準で整備されており、ティアの家でも水洗だったのには驚いたと同時に有り難かった。

 シャワー機能があれば云う事無しだったが、それは無い物強請りというやつだ。欲張りとも言う。これらは何れなんとかすればいいだろう。


 因みに蛇足だが、ティアの家の下水処理は排泄物がほぼ全てで、排水は養分として森に還元されると云う。森が浄化し、森の養分として還っていくとだけ聞いた。

 大きな都市ともなるとそうは行かず、下水は魔法改造されたスライムを主体として浄化し、綺麗になった水を川や海に流すのだそうだ。


 こういった部分がファンタジー全開だね!


 そんな都市部に於ける日常生活のあれこれを聞いたりしつつ、日が暮れたところでその日は手近な大木の洞を探し、そこで野宿をすることになった……。




 二日目。

 お昼を過ぎたあたりで、遂に森を抜け、左右に続く街道に出る。


 右に進めばロエンという村に辿り着くらしいが、今回用事があるのは領都エングリンドである。左に延びる道を見遣る。


 街道とは言っても、この辺は幹線からは外れた道らしく、その道も小さな村が終点と言う物なので、碌に整備もされていない見窄らしいものだった。

 それでも、踏み固められ均された地面は森と比べると遥かに歩きやすい。成程、これなら今日だけで一気に距離を稼げそうだ。


 弾むように歩きながら無人の街道を歩いていると、十メートル程前方の岩陰から、二人の男が突然現れた。


「ちょーーっと待ちな、お譲ちゃん達。ここから先は通行止めだ。通りたけりゃ、通行料を払いな」


 そう言いながら、その手に持つ鉛色の獲物をひらつかせる。

 片方はナイフで、もう一人は曲刀のようだった。


 そんな二人組みに気を取られている間に、後ろにも4人の気配を感じる。

 どうやらこの人達は山賊か何かのようで、前後の道を塞ぐように囲まれていた。


 そんな中、後方に居た一人の男が前方に移動し、私達を見て口笛を吹いた。


「オイオイ、まさかこんな上玉だとは思わなかったぜ。こりゃ、今晩はお祭りだな!」


 そんな勝手な事を言いながら、無遠慮に私達を眺め回す。

 その声を聞いている周りの男共も下卑た笑みを思い思いに浮かべている。


 はぁ……、気持ち悪い。


 それでも私は確認の為、諦観の念に駆られつつ、質問を投げ掛ける。


「さっき通行料って言ってたけど、幾ら払えばいいの?」


 すると先程の男がさらに醜悪に顔を歪め、


「そうさなあ……、金貨で百万枚ってとこだ」


 もったいぶるように顎を撫でながら言った男の言葉を聞き、ゲラゲラと笑い出す周囲の者達。

 ウンザリする事この上無いが、念のため会話を続ける。


「そんなお金持ってないって言ったら?」


「そりゃ、おめえ。そん時はそのカラダで払ってもらうしかねえだろうよ」


「じゃあ、払うって言ったら?」


「ハンッ、出任せを。そんな大金持ってるわけねえじゃねえか。お前達はこの後俺達のアジトに連れ帰って、飽きるまで楽しんだ後、奴隷商の奴らに売り飛ばすんだよ!」


 こんだけの上玉、使い古しであっても相当高く売れるぜ。なんてゲタゲタと笑いあう下種共。


 さて、言質は取った。


「一応確認して置くけど、貴方達は私達に対して、危害を加えようとする“敵”という事でいいのね?」


「ああん? 女が二人で何が出来るってんだ?」


 そんな私の言葉に不快気に顔を歪める頭目らしき男に対し、軽い挨拶程度の攻撃で返答する。


「ホムラ!」


 私がそう叫ぶと、目の前の男は一瞬で火に包まれ、炭になった。


 あれ? 確かにそう命令したけど、 “軽く”って言わなかったっけ?

 軽く火達磨にするように指示した積もりだったが、思いの外火力が強すぎたみたいだ。


 しっぱいしっぱい。


 今度は間違えないよう、正しくミコトに伝える。

 そうこうしている内に、目の前で起こった事態を飲み込め始めた山賊共が、悲鳴を上げて一斉に逃げ出した。


 逃がす訳無いだろ。聖霊の力の実戦実験に付き合って貰わねばならないのだ。

 逃げる山賊全てに対し、複数の力を行使してみる。


 ――ホムラの力による火炎攻撃で黒焦げに。

 ――スイの力で口と肺を水で満たしての溺死。

 ――フウの生み出すカマイタチによる斬撃で真っ二つ。

 ――ミコトにフウの補助を付けての、電撃。

 ――ホムラとスイ合同での、体内水分の沸騰。


 これらが全て同時に行われた。


 これは聖霊それぞれに意思があるが故に出来た芸当であり、人間の脳だけで処理出来るものでは無い。そう言った意味でも、聖霊を使いこなせていると言えた。上々である。


 そんな結果に満足していると、ふと隣で黙りこくっているティアが無性に気になった。

 しまった、やり過ぎて引かれたか? と心の底から恐怖に駆られていると、


「凄い……。聖霊様の御力がこれ程とは……」


 なんて呟いているのが聞こえた。

 どうやら、目の前の殺戮劇にドン引きしていた訳では無さそうだ。


 一応、その事を訊いてみると、「え? 賊なんですから、倒すのが当たり前じゃないですか」などとそれが当然であるといった答えが返ってきた。


 念のため追加で質問をすると、


「だって、向こうがこちらの命を軽んじている以上、こちらが相手の命を尊重する理由が有りません。大抵の場合、相手を殺さなければ自分が殺されてしまうんですよ?」


 との事。


 成程、至極最もだ。

 この世界では命の遣り取りはそう珍しい事では無いらしい。


 勿論これは、賊は奪うことを躊躇わない存在なので、こちらも護ることを躊躇していては守るモノも守れないという意味であり、善良な一般市民の間では法が適用される。殺しなど以ての外だ。

 人の道を外れた存在であるからこそ、外道死すべし、慈悲は無い。と言う事なのだろう。


 目には目を、歯には歯を。

 その考え、私はとっても大好きです。

 だって、自分が痛い目を見たくなければ、人に痛い思いをさせなければ良いだけなのだから。


 おっと、話が脱線しかけた。


 私は戦利品を物色し始める。

 その点についてもティアに質問してみると、


「この者達は奪う者だった訳ですから、負けた以上、奪われるのは当然だと思います。ですが、この者達が価値の在る物を持っているとは思えませんが……」


 と、なかなか辛辣な言葉が返ってきた。


 しかし、私が欲しいのは金目の物ではない。コイツらの装備品だ。

 辺境の貧乏山賊だったためか、身なりは貧相で防具関係は使い物にならなかったが、鉄で出来た武器を6本入手することが出来た。

 鉄の質自体が宜しくなかったが、今はこれでも十分だ。


 これらを《想像》の能力で精製し直し、一本の刀に再成形させる。

 一振りの日本刀。これが私の最初の武器となった。


 残った鉄は、服に組み込むことにする。

 流石に全身を覆うには量が少なすぎるので、網目状の防具、鎖帷子を想像する。

 そうして出来上がった物を、自分の服と融合させる。

 強度は心許無いが、所謂チェインシャツ、チェインスカートの完成だ。

 ミニスカート自体がこの世界に存在しないというのは、この際置いておく。


 本当はサイハイにも鉄を編み込んだ、チェインソックスも作りたかったが、

 残念! 鉄が足りない!

 またの機会にするとしよう。


 通貨を含め、他に有用なものが無い事を確認した私達は、再び領都を目指して歩を進める。


「それにしても、以前ここを通ったときには山賊なんていなかったはずなのですが……。といっても、人間暦で十年以上も前の話なのですけどね」


 山賊に襲われた辺りから少し進んだところで彼女が零していたが、十年も経っていればそれなりに時代も変化するだろう。特に気にするような内容でも無いので、直ぐに別の話へと切り替わり、雑談しながら街道を行く。


 この日のうちに、王国との交易と防衛拠点の街、ウルムスタンの近郊に到着したが、入街に関わる手数料と審査が煩わしかったのと、そもそも宿屋に泊まるお金を持っていなかった事もあり、この日も近くの森で野宿する事になった。


 ホムラとスイの力のお陰で身体を綺麗に保つことは出来るけど、気分の問題としてお風呂に入りたい……。




 三日目は日の出と共に起床する。

 野宿で痛む体をほぐす様に伸びをし、近くの小川で顔を洗い、手早く朝食を済ませる。


 ウルムスタンを迂回するようにしてエングリンドへ続く街道へ出ると、街道と呼ぶべき石で舗装された道路に出た。

 しかし、まだ朝早くだからだろうか、人通りは見当たらない。

 朝の清清しい空気を吸い込みながら、まるで自分専用となったかのような街道を進む。

 少し歩くと石畳から土道に変わるが、足取りは軽い。田舎道と違い道幅も広く、整備が行き届いているからだ。


 途中、数組の旅人や行商とすれ違ったものの、特に何事も無く、一日掛けて道半ばにある小さな宿場町まで到着する。


 ここでも宿代をケチ……節約する為に、物陰を探して野宿の準備をし、この日を終えた。


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