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私は異世界で百合の花園(ハーレム)を創ることにした。  作者: 虹蓮華
第1章「異世界生活を始めよう」
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本編1-4「二人で世界に飛び出そう」

2018/07/05

・フォーマットを変更しました。

・サブタイトルを変更しました。

・本文の一部に流れが不整合な部分があった為、加筆と修正を加えました。

 彼女が落ち着いたのを見計らうと、私は“4人”を紹介することにした。


「そうだ、ティア。今から聖霊ちゃん達を紹介するわね」


 え? 紹介? なんて困惑している彼女を置いておき、聖霊達を呼び出す。


「出ておいで、皆」


 胸に手を置いて呼び掛けると、同じく胸の辺りから4人の聖霊が飛び出してきた。

 それぞれに挨拶をするように伝える。


「私は炎の聖霊のホムラっていいます。宜しくね、巫女さん」


「私は……、水の聖霊の、スイ、です……。よろしくお願いします」


「私は風の聖霊のフウって言うんだー。よっろしくー」


「わたしは~、つちのせいれいの~、ミコトっていいます~。よろしくおねがいします~」


 特徴的な自己紹介が続く。


 挨拶を聞き終えた彼女は、固まっていた。

 それどころか、立ったまま気絶のような状態になるという、とても器用な事になっていた。

 私は彼女の目の前で手をひらつかせ、現実へと引き戻す。


「ティア~、こんな所で固まってどうしたの? さっさと戻ってこないと、おっぱい揉んじゃうよ~」


 その台詞は余程衝撃的だったのだろう。

 彼女はハッとした表情になった後、胸を両手で押さえ、顔を真っ赤にして抗議の声を上げる。


「な……、何を言っているんですか!? クスハ! 破廉恥です!」


「ごめんごめん。でも、どうしたのさ。この子達を見た瞬間固まっちゃって」


 私は軽く笑いながら謝罪する。


 それを聞いた彼女は何か重要な事を思い出したようで、酷く慌てた様子で私に掴み掛かる様な勢いで質問してきた。


「そうです! クスハ! この4柱の聖霊様方は一体どうされたのですか!?」


 私はそれに面食らいながらも、淡々と説明をする。


「え? どうって……。なんか、力を貸すとか授けるとか言ってたから、有難く受け取った」


 そんな私の様子に気勢を削がれそうになる彼女だが、それでも直ぐに体勢を立て直し、


「いえ、そう言う事では無くてですね、何故聖霊様が4柱もここにいらっしゃるのかと言う事です。それにですね、何故聖霊様方はそれぞれ意思を持っておられるのですか!?」


 更に勢いを増して捲し立ててきた。


 それに対し、私は今朝からの一連の流れを説明する。

 すると彼女は、今日二度目の異次元旅行に旅立ち、頭を押さえて呻っていた。


「ふふふ……、まさか、聖霊様4柱に愛される方がいらっしゃるとは。しかも、聖霊様には御意思があり、その上で使役している? これは何かのご冗談なのでしょうか……? それとも、私は夢でも見させられてでもいるのでしょうか? それとも、これは幻覚?」


 などとブツブツ呟いている彼女の様子を見るに、どうやら完全な帰還までは暫く時間が掛かりそうだった。


 十分な時間を要し、彼女が漸く落ち着きを取り戻したのを見計らった後、私は質問してみることにした。


「ねえ、ティア。聖霊が4人も居るというのは、そんなにも珍しい事なの?」


 素直な疑問を口にした私に対し、彼女は、


「当たり前です。通常は、1柱の聖霊様の御加護を得るだけでも奇蹟なのです。過去に存在した勇者様であっても、2柱が最大でした。それなのに、4柱とか、常軌を逸しているとしか言い様が在りません。それに加え、聖霊様の御力は唯でさえ人の身に余る強大なものですので、最低限使いこなす為にも聖霊様の御意思を除いた純粋な力として授けられるのです」


 これまでの狼狽えっぷりが嘘みたいな落ち着いた様子となり、まるで子供に言い聞かせるかの様な口調で饒舌に語ってくれた。


 それに私は安堵するが、これまでの彼女の様子を伺うに、驚き疲れたのか、現実を受け止める事が出来たのか、はたまた諦めの境地に達したのかまでは分からない。

 ただ、彼女の眼から若干光が失われているのを見るに、最後の予想が当たっているのかも知れない。

 私はそれを無視し、今の言葉で引っかかった部分を尋ねる。


「ちょっと待って。聖霊達もそんな事を言っていた様な気がするけど、そんな強大な力なら、尚更聖霊に意思があった方が制御し易いんじゃないの?」


 私の思ったままの問い掛けに対し、事実のみを教えてくれるティア。


「いいえ、寧ろ逆ですよ、クスハ。魔力とは、魂の、言い換えれば、意思の力。聖霊様の御意思が残っておられると、逆に力が強すぎて我々に扱えるものでは無くなってしまうのです。下手をすると、自我を崩壊させかねません」


 なんと言うことでしょう。聖霊の力とは、そこまで強力で危険なものだったとは……。

 これは今後、取り扱いに色々と注意する必要がありそうだ。


「成程ね、良く分かったわ。そうなると、この子達は隠した方が良さそうね」


「寧ろ、そうして下さい。貴女が4柱もの聖霊様に愛されているなどと知られてしまえば、大騒ぎどころでは無くなってしまいます。それこそ、歴代最高の勇者として盛大に持て囃されてしまうでしょうから……」


 諦観の表情の中にも悪戯っ子の様な笑みを薄く浮かべ、彼女は言った。




 事態が収拾した後に私達に訪れたのは、肌寒さと空腹だった。


「ティア、そろそろ家に入りましょうか。私、もうお腹ペコペコ」


 私がおどけた調子でそう言うと、


「ええ、私ももうお腹がペコペコです。このままではお腹が背中とくっついてしまいそうですので、御夕飯にしましょう」


 漸く心からの笑顔を浮かべると、彼女から先に家に入った。


 私も、聖霊達を仕舞うとそれに続く。

 いつもの席に着くと、直ぐにご飯が出てきた。どうやら、下拵えは済んであったみたいだ。


 今日は香草と木の実のスープだった。

 私はその素朴な味のスープを堪能しながら、予てから検討していた予定を告げる。


「ティア、私ね、そろそろ街に行ってみようと思うのだけど」


 それを聞いた彼女は、何を勘違いしたのか悲しそうな顔をしかけたので、直ぐに言葉を続ける。


「それで、街までの案内を頼みたいのだけど、良いかしら?」


 旅への同行を求められた彼女は少し嬉しそうな表情になり、


「ええ、喜んで。街まで確り送り届けて差し上げますわ。それで、出立は何時頃?」


 だなんて、どこか他人事の様な返事を聞いて、そこでふと言葉が足りなかった事に気が付く。


「ああ、御免なさい。街まで、では無く、その先も含めた案内のお願いだったわ」


 何せ、貴女が居ないと私、何にも出来ないんだから。と付け加えて冗談めかして笑い掛けると、彼女は顔を赤くして俯いてしまった。


「それにね、街まで行くと言っても、今回は様子見。どちらかというと、観光に近いかな。その序でに、冒険者にも登録してみようと思ってるの。その為にも貴女の案内は必要なのよ」


 そこまで言うと、彼女はあからさまに安堵した表情で、


「分かりましたわ。そう言う事でしたら、お供致しましょう」


 とても快い返事を返してくれたので、ここで駄目押しの一撃を加えてみよう。


「あと、若し向こうで暮らすことになっても、その時は貴女にも一緒に来て貰うから、その積もりでいて頂戴」


 改めて彼女に向き合いながら告げる。


 その言葉の内容に嬉しさを滲ませながらも、苦渋を含んだ薄い笑みを浮かべて彼女は謝罪を口にした。


「その申し出は大変嬉しいのですが……、申し訳ありません、クスハ。私は聖霊の泉の守り手。この場を離れる訳には……」


 そこまで言い掛けたところで、更なる追撃を発する。


「あら? だとすると、尚更私と一緒に居なければならないのではなくて? だって貴女は“巫女”なのでしょう? 巫女が護るのは、泉なの? それとも、勇者?」


 私の問い掛けに対し、言葉を失ってしまった彼女にトドメを刺す。


「どうしても泉が気になるのなら、こうしてあげる」


 一拍置いて、


「“勇者”として命じます。私に同行しなさい」


 有無は言わせないぞと目に力を込めてそう告げると、漸く観念したらしく、


「そんな事言われたら断れないじゃないですか。こんな時だけ勇者を名乗るのはズルいですよ、クスハ……。解りました。何処までもお供させて頂きます」


 ぺこりと頭を下げようとする彼女を笑いながら制し、


「さて、一件落着したところで、ご飯にしましょ。折角の美味しいスープが冷めてしまったら、勿体無いもの」


 ワザと軽い口調で告げると、


「ふふっ、ご安心下さい。冷めてしまいましたら、その都度温めて差し上げますので」


 などと彼女も負けじと軽口で返して来てくれたので、その後はこれまでで一番穏やかな、されども一番楽しい時間を過ごすことが出来た。




 思い立ったら吉日の精神で、出立は明後日ということになり、この日から遅くまで準備に追われる事になったのだが、それも2人で行うと楽しくて仕方が無かった……。



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