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私は異世界で百合の花園(ハーレム)を創ることにした。  作者: 虹蓮華
第2章「異世界生活を快適にしよう」
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本編2-13「僅かでも危険性が在るならば、事前に排除するのは当然の危機管理である」

 聖霊ちゃん達にお礼を述べ、おでこやほっぺに『チュッ』としてから帰って貰った。


「目的は済ませたので、今から急いで戻ります」


 ティアとエマちゃんに向き直り、言う。


「解りました。それで、ハヤテ……ですか? その娘はどうされるのですか?」

「この娘はまだ体が快復していないから、私がおんぶして運ぶわ。走っている最中、振り落とされないようにこれで縛って頂戴。それと、この娘の存在は内緒にしておきたいから、あらゆる存在感知妨害の魔法を掛けて貰える?」


 どうやらハヤテも、無事ティアに受け入れられたようだ。良かった良かった。


 彼女の質問に、《創造》で作り出した特製の帯を渡しながら答える。

 非常に良く伸び、人の力では引き千切れない程の頑丈さを持つ。これでグルグル巻きに固定して貰えば完了だ。


「あ、魔法は近付いてからでいいか」


 ティアが魔法を行使する前に、止める。


「それもそうですね」


 同じ思いに至った彼女も頷く。

 背中を揺すって具合を確かめ、皆に告げる。


「それじゃ、移動開始!」




 少女一人背負おうとも、私にとっては一切負担では無い。最初から全力で走った為に、来た時よりも更に短い時間で戻る事が出来た。


 まだ戦闘地点には距離があるにも関わらず、前方に人の気配を感じた。私はそこで一旦停止し、ハヤテを降ろした。


「この先に居るの、斥候のキーリィさんだわ」

「事後処理も粗方済んで、他の動ける方々も周辺警戒に当たっているのかも知れませんね」

「それじゃ、予定通りハヤテに魔法を掛けて貰える?」

「承知しました」


 幾重もの魔法が重ね掛けされる。認識阻害から、気配遮断。隠蔽と遮音も忘れずに。感知魔法の阻害魔法まで、それはもう念入りにやってもらった。当然ながら、エマちゃんにも見えなくなった。


「エマちゃんの後ろで隠れて、控えていなさい」


 ハヤテに向けられた私の言葉に反応して後ろを振り返るも、彼女には呼吸音の一つすら感じられないだろう。


 ここからは、態と音を出して歩を進める。百メートルも歩いた位で、相手方も私達に気が付いたようだ。


「あら? クスハちゃん達じゃないの。今までどこに行っていたの? いえ、それより、今までどこまで行っていたの?」


 流れるような身のこなしで木の枝から飛び降り、私達の前まで駆け寄ってきてくれたキーリィさん。どうやら、素で心配してくれていたみたいだ。


「ああ、すみません。遠方の森まで来るのは初めてでしたので、ちょっと珍しさで散策していましたら、思いの外遠くまで行ってしまっていたみたいです。心配をお掛けしました」


 ペコリと軽く頭を下げる。


「いえ、皆が無事ならそれでいいわ。私達もついさっき全員の治療が終わって、動ける者達だけで周囲の警戒に出たところなの」

 そう言って、「こっちよ」と案内してくれた。


 壮絶な戦闘跡地は今は臨時休憩所として、野戦病院さながらの様相を呈していた。

 比較的軽傷者は思い思いに木の根や小岩に腰をかけ、重傷者は平らな地面に敷かれた布の上に寝かされていた。天幕が無い分、通常の野戦病院よりも境遇は下か。


「よお、随分と念入りな哨戒だったじゃねぇか。何か脅威になりそうなモンでも見かけたか?」


 休憩地本隊の警護をしていたベルカさんが、軽い調子で話しかけてきた。別に本気で索敵の結果を訊いている訳では無くて、話のタネとして聞いて来ただけなのだろう。


「いやあ、特に何も。面白そうなものとか一切見つかりませんでしたね」


 なので私も、コレと言って特筆する様な事は無かったと返す。


「そうか、そいつは何よりだ。それで、今から動ける連中だけで、グリフィスの“残し物”が無いかを調べに行くんだが、お前達も来るか?」


 やっぱりそう来るか。先手を打って置いて正解だった。


「いいえ。私達は物見から戻って来たばかりですので、ここで待たせて頂こうと思います」


 私が反応するよりも先に、ティアが返事をしていた。見事な素知らぬ顔で。いや、私だってシラを切る演技くらい、出来ますよ? 自信は無いけど……。

 因みに、こっちの世界では表情を一切動かさない事を、“無変貌”って言うんだって。これ、豆ね。


「そうなのか? 今から行く場所にゃあ、クスハの言う “面白そう”なのがあるかも知れないんだが、本当に良いのか?」


 如何してそこで私に訊いてきますかね?


「あ、あはは……。残念ですが、私達も魔物を探して森の中を歩き通しだったので、ここらで一旦休憩しようと思ってたんですよ」


 私からも辞意を確認したベルカさんは、


「うん。それなら無理強いはしない。決して快適とは言えないが、私達が戻るまでゆっくりと疲れを癒してくれ」


 そう言って、生き残りの討伐隊を編成しに、離れて行った。


「やっぱり、子供であっても殺しちゃってたのでしょうか……?」


 声を潜めて懸念を口にしたのは、エマちゃん。


「絶対とは言い切れませんが、その可能性が非常に高いとは言えるでしょう。幼くとも既に孵っていた場合、人類種の敵になる前に事前に排除するのは誰もが考える事ですし、若し卵の状態で発見されれば、持ち帰って研究対象にするなり、雛から育てる事で手懐けて軍事に利用するなりで、余り気分の宜しくない方向に使い道が用意されるのでしょうしね」


 この時ばかりは、本気でティアの声に感情が乗っていなかった。



 さて、蛻の殻となったグリフィスの巣へと向かった追撃部隊の皆さん。彼等、彼女等が帰ってきた頃には、もうすっかり日が暮れていた。


 熟練の冒険者の集まりなので、万全の状態なら夜通しの行軍も容易だ。しかし、想定を遥かに越えた被害を被ってしまった。


 流石に、どんな手練れであっても重病人を抱えたまま夜の森を進む愚考を提案する者は無く、今夜はこの場に留まることになった。当初は日帰りの予定だったので、碌な装備も無い。

 中々に気が滅入る野宿となってしまった。


 私達は〔紅雷〕の皆さんと一塊になり、味気ない携帯食で夕食を済ます。火と水は簡単に用意出来るので、小さな鍋に干した肉と野菜を入れて煮込めば、最低限度の荒汁の完成だ。実に不味い。


 こういったモノを食べると、シアの作ってくれた料理が恋しくなる。彼女は上位貴族家の侍従長まで勤め上げた敏腕っぷりであったと共に、その才は料理にも向けられていたらしい。

 役職柄その腕を振るう機会はほぼほぼ無かったそうだけど、当時の料理長も舌を巻く程だったとか。私には勿体無いくらいのお付だね。帰ったら、全身で感謝を伝えるとしよう。


 その後、女性は女性だけで集まり、就寝となった。

 寝る前に、自分が入りたくて倒木の影にて黙々とお風呂を作っていたらベルカさん達に発見され、流れで女性の皆さん全員に振舞う事になった。


 ドロや汗でひどく汚れていた事もあり、甚く感激された。


 別に、隠すつもりも独り占めするつもりも無かったし、随分と楽や優遇もさせてもらっていたので、それくらいはお安い御用だった。


 その結果かどうかは分からないけれど、夜警用の女性要員からは免除された。


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