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私は異世界で百合の花園(ハーレム)を創ることにした。  作者: 虹蓮華
第1章「異世界生活を始めよう」
26/43

本編1-24「花園計画、始動」

 あれから一ヶ月……。

 とうとう、我が家の改修と改装が完了した。


 話はトントン拍子に進み、今に至る。


 報告に訪れた不動産屋には、何故か領主さんと協会支部長さんが居て、私の説明に血相を変えていた。


 討伐報酬でお金は要らないと言ってくれたが、それは辞退して置いた。

 私が、好きで勝手にやったに過ぎないから。


 後、報酬扱いの場合、行政上の手続きや、冒険者としての功績記録に残ってしまうというのも、面倒くさかったからだ。

 貰うより、買った方がより自分の物って感じで、気分が良いというだけの自己満足もあった。


 翌日には、極秘で支部長さんと数名の腕利き冒険者さんが屋敷を調査し、安全が確認されたので、その場で購入契約を締結。


 協会に預けて置いた皇国金貨袋を一つまるっと持参し、現金にて一括払い。

 序に、屋敷の補修と改修も依頼した。


 幸いにも、街一番の大工さんを紹介して貰い、三日に亘って綿密な打ち合わせを行なった結果、皇国金貨が100枚にも及ぶ大規模な工事になってしまったけど、拘りに妥協は許されないのです。


 期間は一ヶ月程掛かるとの事だったので、その間にシアの肉体の素材集めに奔走する。

 人体を生成する以上、人に近ければ近いほど適しているのは当然なのだが、そんな都合の良い素材が在る訳でも無く……。


 犯罪者や狂人には成りたくなかったので、動物系の肉体情報を持つ魔獣を、狩った。“秘密裏”に、兎に角狩った。

 協会や他の冒険者に見つかったら、面倒だと思ったから。

 狩り尽くすとそれはそれで問題なので、少し足を伸ばしつつ、必要な量が集まるまで狩りまくった。


 見つけられれば、ゴブリンやオーガ等の比較的人間種に近い魔物も狩った。

 偶々見つけた洞窟に、冷凍保存して備蓄しておく。


 そうして、漸くこの日を迎えた。




「いやー、やっとと言いますか、それともあっと言う間だったと言いますか、漸く、私の家が完成しましたねー」


 新築と見紛うばかりに、綺麗に補修された我が家の外見を眺める。


「おめでとう御座います、クスハ」


「おめでとう御座います、クスハ様」


「みゃぁう!」


 3人からのお祝いがこそばゆい。


 錆が浮いて汚らしかった門扉や鉄柵も、取り替えられてピカピカだ。

 僅かな軋みだけを上げる鉄門扉を抜け、3人を連れて石畳の伸びる、整えられた庭園を歩く。


 途中で横に逸れ、咲き誇る花が敷き詰められた一角の前で立ち止まる。


 花の絨毯の中心には、シアを包む土棺。

 その奥や周辺には、普通の人には見えないが、大量の魔物の死体が山積みになっている。


 土棺を解除すると、少女の骨が姿を現す。


「花の中で眠る私を見るのは、なんだかとても恥ずかしいですね……」


「今日が貴女の、第二の人生の門出なのだから、もっと胸を張りなさい!」


「そうですよ。これから起こるのは、神にしか許されない領域の所業なのですから」


《創造》――人体生成――起動。


 花畑全てを内に納める魔方陣が展開される。


「聖霊ちゃん達、出番よ!」


 4つの影が飛び出し、私を除いて正方形の形に位置どる。


「並列接続、演算開始!」


 魔方陣が眩いばかりに発光し、超常が訪れる。


 積み上げられた魔物の死体が融けだし、蛋白質の液体が次々と生産されていく。

 液状の蛋白質はアミノ酸等に分解され、更に、分子、原子の次元まで細かくほどかれる。

 それを、原子核の段階から再編成し、人を形成する分子、細胞へと組み立ててゆく。

 高い魔力適性を持たせる為に、細胞を圧縮しては成形を繰り返す。


「これより、受肉を開始する!」


 遺された骨、髪の毛、霊体情報を基に、完璧な状態で、生前の姿を取り戻させる。

 その際に、自分の髪の毛も一本混ぜる事で、より人体の組成情報を組み込み再現させる。

 細胞液の全てが固着すると、美しい少女の裸体が出現する。


 完璧に再現したと言ったが、あれは嘘だ。

 実は、胸にちょっとだけ細工を施した。私の嗜好で、増量してしまった……。


「シア、ちょっとこっちに来てくれる?」


 何も知らない彼女の霊体を捕まえると、《創造》で魔力を流し込んで、霊体を肉体の変化に同調させる。

 自分の身? に起こった急な変化に戸惑い混乱するシアを、そのまま強引に宥め透かし、横たわる彼女の肉体と重ね合わせる。


「肉体に、霊体を定着させる段階に移行する」


 シアのお腹部分に手を当て、魔力を流し込みつつ慎重に進める。

 見てくれの手順は蘇生魔法とほぼ同じなのだが、内容と難易度は桁違いだからだ。


「霊基配列と塩基配列を同期、霊体情報と肉体情報に相違なし。同位次元、同位座標に固定完了。再びこの世に生を受けよ、フリーシャ・ウィザルディア」


【神威魔法】――《新生》――


 魔方陣から目が眩む程の膨大な光と魔力が溢れ、シアの中心に向かって収束する。

 光りの奔流が収まり、先程と何一つ変わらない、穏やかな静寂が髪を揺らす。


「シア、目覚めの気分はどう? どこか、不具合や違和感を感じる場所はある?」


 ゆっくりと、目を開けた彼女に問い掛ける。


「あ……、えっ……と……、そ、の……」


「ああ、まだ体が馴染んでないわよね。無理しなくて良いわよ」


 シアの体に、大きな布を掛けてやる。

 次いで、水を操って、大きな姿見を彼女の正面に出現させる。


 虚ろだった彼女の目は、その姿を確認した途端、急速に光を取り戻してゆく。


「え……、ま、さか……、これ、が……、わたし、なのですか……」


 両手で顔を触り、何度も何度もその感触を確かめている。


「どう? 我ながら、完璧に再現出来たと思ってるんだけど……。あ、胸に関しては、私の趣味だから諦めて受け入れて頂戴」


 顔をしきりに弄っていた彼女は、両手でそのまま顔を覆うと、これまで張り詰めていた糸が切れたのか、大きな声で泣きじゃくった。


「ひっく、うくっ……。あり、がどう、ございます……、ありがとう、ございます……。ふえぇぇ…………」


 シアが泣き止むまで十分な時間を要したが、その間、吹き抜ける風がとても心地よかった。




 彼女が泣き止んだのを見計らって、ティアが声を掛ける。


「綺麗なお顔が台無しですよ、シアさん。ほら、これでお顔を拭いて下さい。大丈夫ですか? 自分で出来ますか?」


 彼女の返事を待たずに、持っていた柔布で顔を拭ってやるティア。


「大丈夫です。これ位なら、自分でも出来ます」


 ティアから布を受け取り、目や口の辺りをゴシゴシと擦ると、上半身を起こし、


「私は正直、クスハ様と出会った時は、この屋敷の魔霊を倒した後、星に帰る積もりで御座いました。ですが、今は違います。私の、身も、心も、全てを捧げさせて頂きたく存じます。どうか、お傍で仕える事をお許し下さいませ」


 まだ自由の利かない体で、傅く彼女。


「うーん、そのお願いは、聞けないかな……」


「え…………?」


 絶望の表情で固まるシアに、優しく微笑んで告げる。


「だって、前にも言ったでしょ。貴女は『仲間だ』って……。私は貴女の主人でも無ければ、貴女は私のしもべでも無い。私を慕ってくれるのは嬉しいけど、それじゃ、駄目なのよ。貴女にメイドをして欲しいのは本当。でもね、それは召使だとか、使用人だとかじゃなくて、同じ立場の人間として、友達として、身の回りを手伝って欲しいの。無茶苦茶な事を言ってるのは百も承知だけど、これが嘘偽り無い私の本心。どう? これが出来るなら、私の手を取りなさい」


 片膝を付き、彼女の指先に自分の手の平を上にして翳す。

 私の顔と手の平を交互に見遣ったシアは、口を固く結び、私の左手に、右手を触れさせた。


「契約成立ね」


 その手を確りと握り締め、体を引き寄せて、おでこにキスをする。

 これまでの仮初の口付けとは違い、半永久的な聖霊回路の接続が確立される。


 口と口でのキスとの違いは、愛情表現か、親愛表現かの違い。

 愛情表現での回路接続の方が強度は上だけど、今はこれで良い。その時が来れば、改めて結び直そう。


「あ……、う……。こ、これから、よ、宜しくお願い致します、クスハ様。誠心誠意、お世話させて頂きます」


「私を忘れて貰っては困りますよ? クスハ、シアさん」


「忘れてなんて居る訳ないでしょ……」


「ティア様も、どうぞ宜しくお願い致します」


 クスクスと涼やかな笑いで満たされていたが、何時までもそうしている訳にはいかない。


「シア、何時までもそんな格好でいるのは、女の子として問題があるから、間に合わせだけどこれを着て頂戴」


 予め買って置いた下着と、侍女服を渡す。


「この侍女用の服、すっごく可愛く無いから、後で採寸して、とびっきり可愛いメイド服を作るわよ!」


「ふふっ、はい!」


 初めて見せてくれたとびっきりの笑顔は、歳相応の美少女の物で、眩しく輝いて見えた。




 ぞろぞろと庭園を抜け、玄関の扉を開けようとした直後、後ろから誰かが駆け寄ってきた。


「あ、あの、クスハさん! わ、私も、お仲間に、入れて、貰えないでしょうか!?」


 振り返ると、そこには息を切らせたエマちゃんが立っていた。


「あら、エマちゃんじゃない。いきなりどうしたの?」


「行き成りじゃ、ありませんっ! 良く考えて、決めました!」


「お父さんは知っているの?」


 何度か深呼吸を繰り返し、息を整えるエマちゃん。


「勿論です。何度か相談して、最初は渋ってましたけど、最後には賛成して貰えました!」


「理由を聞かせて貰っても?」


「私、昔から冒険者さんに憧れてたんです。お父さんも、お母さんも、昔は冒険者をやってて、そこで出会ったんだって、子供の頃よく聞かされてました」


 ふむ。


「お父さんは戦闘は苦手だったんですけど、用具の勉強をしたくて冒険者になって、その時一緒のパーティを組んでいた、前衛のお母さんと恋に落ちたんだって話を聞いて、素敵だなって思って、それで、私もなりたいなって、ずっと思ってたんです」


 素敵な話じゃない。


「2人は結婚した後も冒険者を続けていたんですけど、私を身篭ったのを機に引退して、小さいながらも用具店を開いたそうなんです。本当は、そのまま幸せが続けば良かったんですけど、私が小さい頃に流行り病に罹ってしまって、お母さんはその特効薬を探すのに無茶をして、命を落としてしまったんです」


 悲しい話はどこにでもある、か……。


「それ以来、私は、お母さんの分までお父さんを支えようと決めてました。用具店は、お父さんとお母さんの夢だったから。冒険者さんが減った所為で、売り上げは思わしくないけれど、小さいお店で幸せに暮らせればいいかなって、思ってたんです」


 うん。


「でも! クスハさんが、私に夢を思い出させてくれたんです。冒険者になりたいという、夢を! 私を助けてくれた時のクスハさんは、私の理想の冒険者さん其の者でした。憧れました、その強さに嫉妬しました。ですが、私には魔物や盗賊と戦えるだけの力は在りません。なら、せめてクスハさんの冒険を手助けして役に立ちたいなと思ったんです。商人としてでは無く、同じ冒険者として!」


「それってつまり、家を出る覚悟が在るって、事よね?」


「っ、はい!」


「お父さんのお手伝いは、もう良いの?」


「悩みました。お父さんを1人にして大丈夫かと云う不安、お父さんを裏切るのではないかと云う不安、私なんかが上手くやって行けるのかと云う不安、全てお父さんと話し合いました。そしたら、『エマのやりたいようにやりなさい。エマにとって幸せな人生を送る事が、お父さんとお母さんの願いであり、幸せなのだから』って、言ってくれたんです」


 エマちゃんの顔は、何時の間にか涙でぐちゃぐちゃになっていた。

 その覚悟と決意、買いましょう。


「冒険者になるって事は、危険な魔物と戦って死ぬ危険性が付き纏うのよ?」


「わがってまず……、でもぞれは、商人でも同じ事でず。長距離の商隊とがだと、全員無事なのは珍じいですがら……」


 様々な質問が浮かんでは消える。これ以上の問答は、無粋かも知れない。


「良いでしょう。エマちゃん、貴女を私の仲間として受け入れます。貴女には、財務管理を一任しようと思います」


「! ありがどう、ございまず!」


 正直、エマちゃんの魔法適性は無いに等しい。これでは、どんなに体を鍛えても、トルプが関の山だろう。

 しかし、商人としての経験は貴重だ。物価や相場に精通しているだけで、大きな戦力と言える。


「それじゃ、荷物を纏めて、明日またいらっしゃい。今日は、お家でゆっくりするといいわ」


「はい! 明日から、宜しくお願いします。今日はこれで失礼します!」


 落ち着きを取り戻したのか、大分鼻声も治まり、確りとした口調でお辞儀をすると、足早に自宅へと引き返して行った。




 今日は、新たな門出に相応しい、目まぐるしい一日だった。


 私は今、一階の広いリビングに置かれた、新品のソファに座っている。

 勢いで購入したものの、この邸宅は数人で暮らすような大きさじゃないね、うん。


 家具は全員分揃えて搬入済みだが、それで使用率1割というのはどうなのだろう。

 明日からはエマちゃんも住むことになるけど、それでも一室が埋まるに過ぎない。


「『花園』か……」


 花園を実現するのであれば、この大きさは逆に好都合だ。


 しかし、その為には解決すべき大きな問題がある。避けては通れない。


 ティアは今の時間、自室の内装に手を加えている筈だ。

 タマモは、私の横で丸くなって眠っている。

 シアは、夕食の準備の為に厨房に篭っている。とても張り切っていた。


 タマモの頭を一撫ですると覚悟を決め、立ち上がる。向かうは、ティアの部屋。

 二階にある彼女の部屋の前まで移動し、戸を叩く。


「ティア、ちょっといいかしら?」


 中で少し物音がしてから、戸が開かれる。


「あら? どうしたんですか、クスハ」


 どこか無理をした笑顔の、彼女が出迎えてくれた。


「私ね、ティアに話さなくちゃならない事があるの」


 一瞬、ビクリと体を震わせた彼女は、直ぐに平静を装い、


「ここでの立ち話もなんですね、中へどうぞ」


 彼女の部屋は、既に綺麗に纏められていた。

 向こうの家から持って来た物もあったけど、数は少なかったし、部屋の広さも4倍程になってしまったので、寧ろ殺風景に見える。


 部屋に入り、途中で彼女を追い越すと、床に敷かれたふわふわの丸い絨毯の上に、向かい合う様な形で座る。お互い、正座だ。


「これからの行動方針と、私の本音を聞いて欲しいの」


「はい」


「好きです。私の恋人になってくれませんか?」


「はい……。って、ええぇぇ!!??」


「私ね、女の子が好きなの」


「は? え? あの……、え? 女性が好きって、本当ですか?」


「冗談でこんな事言う訳無いじゃない」


「私がおかしくなってしまったのかと思ってました……。まさか、本当に同性を好きになる感情が存在していたとは……」


「普通は、そう云うもんじゃないの?」


「いえ、違うのです。種の保存だとか、そう云う次元の話では無いのです。本能……なのでしょうか……? 頭のどこかで、最初から存在しない感覚だと思っていました……」


「ふぅん。よく分らないけど、それじゃ、今は違うって事よね?」


「はい。私も、クスハの事が好きです。ですが、この感情を説明する事が出来ませんでした」


「それって、恋愛感情としてって事?」


「そう……なのかも知れません……」


「そっか……。なら、良かった。私だけの、勝手な勘違いじゃなくて……」


 だからこそ、言わねばならない。


「それでね、ティア。告白した直後にこんな事を言うのはもの凄く気が引けるんだけど、私ね、可愛い女の子が好きなんだ」


「はい」


「ティア以外の女の子も、好きになるかも知れない……」


「それのどこに問題が?」


「はいぃ!?」


 今度は、私が驚かされる番だった。

 私が言うのもアレだけど、問題大アリなのでは?


「力在る者が伴侶を1人しか持たないなんで、有り得ませんからね」


「え? そうなの!?」


「? 当たり前じゃないですか。寧ろ、1人に制限する道理が在りません。自力に見合った数の伴侶を伴うのは、当然の権利です。中には、貴族や有力商人でも伴侶を1人しか選ばない者も居るみたいですが、稀ですね。単純に好みの異性に巡り遇えなかったか、遺産相続絡みといった、何かしらの理由でもあるのでしょう」

 ――兎に角、相応の実力があるのに伴侶を1人しか迎えないのは、よっぽどの物好きか何かしらの理由持ちくらいですよ――との事だった。


 これが、世界文化、常識感覚の違いか! こっちの世界に来て、人生一番の衝撃だわ。

 ティアに軽蔑される恐怖を押し殺して、告白した、私の覚悟って一体……。


 けれど、これで私の野望は、ティアだけでなく、社会的にも同意を得たも同じだ。

 私とみんなが幸せに暮らせる、花園を創ろう。改めて、心に誓う。


「ティア。私は、貴女が好き。勿論、これは恋愛としての好きよ。それと平行して、エマちゃんもシアも、タマモも好き。これは、友達や仲間としてだけどね。だけど、タマモはともかくとしても、何れ2人ともそうした仲になる可能性だって十分にある。若しかしたら、2人以外にも増えるかも知れない」


「クスハなら、十二分にあるでしょうね」


 私の事を良くお解りで……。


「だけどね、若し今後、私の愛する人が増えたとしても、一番は貴女だけだから。愛する人に順番なんて付けられないけれど、それでも、一番は貴女だから。だから、私と……」


 ティアが私の唇に人差し指を添えて、優しく囁く。


「それ以上は、言いっこ無しですよ。この先は、行動で示してください」


 二人の顔は徐々に近づき、どちらとも無く…………、いや、曖昧な表現は止そう。

 私は彼女を求め、彼女も私を求めて、確実な意思と共に口付けを交わす。


 そっと触れ合うキスではない、求め合う様な、深いキス。

 時折、僅かに漏れる吐息だけが、時間の経過を教えてくれる。


 ああ……。最初は、邪な気持ちだった。軽い気持ちで考えていた。

 でも、今は違う。

 人を好きになるって、愛されるって、どうしてこんなにも胸が締め付けられ、幸せな気持ちで一杯になるんだろう。


 この世界に来て、ティアと出会えて良かった。


 やがてお互いの唇は離れ、細い銀糸が照明に照らされ煌く。

 私はそれを、切れる前に素早く舐め取る。


 ティアは舐められた下唇に指先を当て、ぼーっと私の顔を見ている。いや、見ているのはその先かな? 心此処に在らずって感じだ。


 視線が手の甲に向いた瞬間、彼女の頬は真っ赤に燃え上がり、次いで、ポロポロと涙を流し始めた。


「え!? 何か泣かせるような事をしちゃった!?」


「いえ、違うんです……。確かに、してくれたんですが、違うんです……。私は今、幸せなんです。夢が、現実になったんです。そう実感したら、何故か涙が溢れてきてしまったんです……。どうしましょう。止まりません……」


 あやす様に、受け止めるように、正面から強く抱き締める。


「愛しているわ、ティア」


「はい……。私もです、クスハ」


 抱き締め合ってから幾許か、再び唇同士が触れ合いそうになった時、


「クスハ様、ティア様。何処にいらっしゃいますかー? 夕餉の準備が出来て御座います!」


 廊下から、私達を呼ぶシアの声が聞こえた。


「あら、もうそんな時間……」


「残念です。この続きはまた今度ですね」


「なんだったら、今晩にでも続きをする?」


「もう、調子に乗らないで下さい? でも、それも良いかも知れません……ね」


「クスハ様ー、ティア様ー」


 呼ぶ声は、大分近くまで来ていた。


「そろそろ返事をしてあげないと、シアさんが可哀相です」


「そうだ、どうせなら今晩、皆で一緒にお風呂に入らない?」


「それは素敵な提案です。ふふっ、今晩の楽しみが増えました」


 クスクスと顔を見合わせて笑いながら、手を繋いで部屋を出る。


「ごめんごめん。待たせたわね」


「いえ、此方にいらっしゃいましたか。……あら? どうしましょう……。今日は新居のお祝いですので腕を振るわせて頂きましたが、お祝い事がもう一つあるなんて聞いて居りませんでした。今からご用意するにも時間が遅くなってしまいますし、どうしましょう……」


「いや、どうもしなくていいから」


「左様で御座いますか? でしたら、結納のお祝いは明日改めて、御用意させていただきます」


「いやいやいや、まだそんなんじゃないから!」


「ですが、もう御結婚なされた様なものなのでは?」


「ん、まぁ、そうなんだけどさ……」


 ティアをチラリと伺うと、真っ赤になって俯いていた。


「兎に角、この話はお仕舞い! また今度、その時が来たら正式にするから!」


「畏まりました。では、明日は御婚約のお祝いに変更……」


「もうそれはいいから!」


「承知いたしました。御夕食が冷めてしまう前に、どうぞお召し上がりくださいませ」


 クスリと微笑い、「食堂まで御案内致します」そう言って、先導して歩き出す。

 ――はて、この場合、クスハ様が旦那様なのは当然として、そうすると、ティア様が奥様になられるのでしょうか?――だなんて、態とらしく独り言を呟くシアが、とても楽しそうに見えた。




 翌日になり、エマちゃんも合流。その日の内に、冒険者協会へと赴く。

 登録を済ませ、街で一番の装備用品店で、上から数えて一番の装備を整え、早速、初級依頼に向かう。

 私達と同じチームだったので、単独よりも時間が掛かってしまったけど、それでも七日でダブレへ昇級。

 これでエマちゃんも、正式に冒険者の仲間入りだ。


 立派な拠点、素敵な仲間達。

 こんな最高の異世界生活になるなんて、思っても居なかった。




 ――――さて、今日はどんな依頼をこなしましょうか――――


えー、ここまですね、

チラシ裏レベルの乱雑文にお付き合い下さり、誠に有難う御座いました。



投稿当初の目標であった、

第一章(ほぼ13万文字)、完結致しました。


手前味噌では御座いますが、

一定の範囲内で納得の行く方向に纏められたと思っています。


美少女同士がキャッキャウフフするだけの作品も良い物ですが、

百合を名乗る以上、この程度は踏み込んだ作品が読みたかった。


その結果、割とガチ目でしたかね?

この表現が、私の全年齢向け百合作品に対する最高到達点となります(多分)。

スキンシップのボディタッチ位は、ある程度入れてもいいかも?

要検討です。(安易なエロにならない程度に)

タグキーワードやあらすじ、序章1の後書き注意文が、多少変化するかも知れません。



続きの物語(二章以降)の構想は脳内にありますが、

一応、一章だけでも終わらせられる締め括りに出来たと自負しております。


ゲームで例えるなら、

最後まで書き切った時が【トゥルーエンド】。

今回は、【ハッピーエンド】 と言った所でしょうか。


トゥルーエンドを迎えるのは何時になるやら……。


二章目に取り掛かっては居ますが、投稿の目処すら立っていません。

自分が読みたい以上、エタる事は無いと思いますが、

それと投稿ペースや完成とは無関係である事、御承知置き下さい。




最後になりましたが、主題をちょっと修正しました。『百合の』を追加し、


「私は異世界で花園ハーレムを創ることにした。」


改めまして、


「私は異世界で百合の花園ハーレムを創ることにした。」


本作を応援して下さった読者の皆様、

投稿種別は『連載中』ですが、

暫定的に、一旦締めとさせて頂こうと存じます。



それでは、皆様、御手を拝借。一丁締めでお願いします。


いよ~~~おっ パン!

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