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婚約破棄された令嬢とパーティー追放された冒険者が国境の隠者と呼ばれるまでの話  作者: あかね
恋人(偽)と一匹

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二人の答え合わせ 2

 葉に包まれ中身は薄焼きのパンで中には軽くマリネした野菜と薄切り肉が入っていた。マスタードがかかっているのかちょっとぴりっとするのが良いアクセントになっている。


 しばらく、ミリアは無心に食べていたがふと視線に気がつく。なにか、微笑ましいものでも見るような目でナキに見られていた。なんだか恥ずかしい。


「気に入ってくれて良かった」


 ナキはそう言って、二つ目の包みを開いていた。いったいいつの間に一つ消滅したのだろうか。

 ミリアは手元に残ったパンを見下ろした。まだ半分以上残っている。口の大きさが違うから、だろうか?

 試しに大きくかぶりついてみたが、あまり減った気がしなかった。


「急いで食べなくてもいいよ」


 苦笑混じりに言われて小さく肯いた。そうではなかったのだが、そういうことにしておく。自分のペースでパンにかじりつく。それが一番だ。


「それで。どうしたの?」


 ミリアは咳払いをしてから問いかけた。

 ひっそりと呟くような、かわいいなぁ、なんて聞こえなかったのだ。


「皇女様がお見合いで隣国行くんだって。それも、三日後くらいにここに泊まるらしい」


「……それは、想定外ね」


 今回は問題があったのは帝国側であるという認識なのだろうか。

 確かに皇女の見合いという名目なら、高官がついていっても問題はないだろう。見合いを隠れ蓑にして、落としどころを両国で探るのも目的としてあってもおかしくはない。

 最終的にお見合いのほうは折り合いがつかなかったと無かったことにしても問題はないだろう。


 ミリアが想定外と思うのは、もっと好戦的であると思っていたのだ。あるいは強気な態度であると。帝国から、皇女を送り込むというのはかなり下手に出ている気がした。

 皇帝は思ったより、好戦的ではないのかもしれない。思い返せば、その治世は安定的だった。もっともそれは喧嘩を売らない、程度であって、売られた喧嘩はもれなく買っていたような気はする。


 今は、そうするのはまずい何かがあるのだろうか?


「帝国内で、魔物の大量発生とか起きてる?」


「んー? 噂程度で良ければだけど、2、3カ所聞いた。巻き込まれる前に逃げ出したから、詳細はわからない。あれは強制依頼なんだよね。一度で懲りた」


「変ね。帝国内でも大量発生は常に起きるものだけど、年に一つ、二つくらいよ。それも時期がずれる。噂に聞いたというなら、短期間に起きたことになるけど」


「うん? この半年くらいの噂だからどうかな? あとはほら、山越えたファインディだっけ、あっちと揉めてるとか聞いた。鉱山の使用権で地元の小競り合いとかなんとか」


「……あそこは、山賊みたいなものだから、適当にあしらうでしょうけどね。片手間にしても魔物と一緒はきついと思うわ。天災は?」


「特に不作とか、川の氾濫とかは聞いてないかな。商人たちも魔物がって困ってる感じで、物流の断絶はそんなに無かったと思うよ」


「……そう」


「ま、理由はよくわからないけど、すぐになにか起きなくて良かったと思うけどな」


 考え込むミリアに軽くナキは言う。

 そう、確かに考えても答えは出ない。情報が圧倒的に足りないし、情報があったとしてもミリアにできることはほとんど無いのが現状だ。

 それでも、どうなっているのか確認しないと落ち着かない。


「王国は、どうするかな?」


「そう、ね。

 どちらの姫君か、言っていた?」


「言っていなかったよ。例の皇子様以外は影が薄いとかは聞いたけど」


「年頃を考えれば、ルー皇女かしら。ならば陛下の孫にあたる方たちの相手として、なのでしょうけど。

 そうなると王太子殿下は、王にはなれないわね。皇女もらっておいて臣下です、なんてできないもの」


「じゃあ、廃嫡?」


「いずれは、理由をつけて臣籍に入れられるんじゃないかしら。今回の件の責任はとらされるでしょうから。

 やるにしてもすぐにはしないわよ。国外に同じくらいの年頃の従兄弟がいるの。まだ、若いと言うより幼い後継者に継がせるよりは、と難癖つけてくるでしょうし。外国の王族が王になったこともあるけれど、あまり望ましくはないのよね。」


 やってくる後継者によって国同士の力関係が変わりすぎてしまう。属国のような扱いをされる可能性も考慮すれば、娘の子であってもそちらに継がせたいだろう。

 王子の甥たちは、別に悪い子たちではなかった。ある意味優秀すぎて火種になりそうな気配すらあったのだ。

 誰か一人、婿にでもいかないかとミリアは皇女に紹介しておいたのだが。


 逆に嫁に来るかもしれないとは想定していない。誰が、皇女を手に入れるかで次期王が変わる。王宮内は割れるだろう。それに加え、選定途中であった彼らの婚約者の問題も宙に浮く。

 それに帝国からの影響を受けるのは免れない。国力の差は歴然だ。そのあたりを考えれば、ある意味侵略とも言えそうだ。


「修羅場ね……」


「なにが?」


「もし本当に皇女様が輿入れとなれば、その夫が次期王に指名されるでしょうね。帝国への配慮から考えるとそうなる」


「普通、逆そうだけど。どの子が有力なんてのも今はまだ無いのか」


「皆、普通に王太子が王になる想定で物事をすすめているもの。予備としては考慮されても、まだ幼い。あと五年後はどうなるかはわからないけど。それに私がいないから本当にどうなるかはわからないわ」


「いやな時限爆弾……。ミリアルドがいれば回避出来たわけ?」


「たぶんね。それでうまく行くように入念に調整されていたのよ。それをぶちこわしにした重さを知るべきだと思うわ」


 もし、ミリアが国外へと連れて行かれなければ宰相やそれに準じる地位で迎えられる可能性もあった。ただ、どこかの貴族へ嫁がされることはないだろう。

 一国を治めるべく教育された娘を他家に渡すなど、王家は良しとしない。いくら王家や国家に忠誠を誓っても万が一などということがある。


「んー? でも、変じゃない? そこまで念入りにしていたのに、ミリアは出し抜かれたんだよね?」


「え?」


「既に婚約者があるものに求婚して、断られたからさらってくるっていうのも変なんだけど。

 そろそろ、色々教えてくれないかな。対策の立てようがない」


「……言ってなかった、かしら?」


「詳細は聞いてないんだよね。あ、もしかしてクリス様になんか色々話しした? あの猫、端折って話す悪い癖あるんだよ」


 ミリアは少し思い悩んだ。どこから、というとそんなに難しい話ではない。ミリアの状況は特殊で、最初から話すしかないから。


「そうね。ちょっと昔のことからになるけど、いいかしら?」


 それはもう遠いような、記憶。

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