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王子がシンデレラを追ったわけ  作者: 相内 充希


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5/5

5.前世②

 それは彼女と別れて1年ほどたったころだった。

 俺は高校の部活仲間である友人の結婚式に参列したのだが、そこで玲良と再会した。新婦がたまたま玲良の従妹だったのだ。


 四季は夕方から開かれるナイトウエディングというやつだったが、会社から会場までが徒歩圏内だったこともあり、俺は普通に仕事を終えてから参列した。かなりギリギリに入ったこともあって、案内された席から玲良の後ろ姿が目に入った時は心臓が止まりそうだった。


 俺に気づいているだろうか?

 参列者の名前を見れば嫌でも気づくか。


 会えたことは嬉しかったが、復縁の期待はしていなかった。いや、できなかった。

 1年前よりずっと綺麗になっている彼女を見れば嫌でもわかる。新しい恋人がいるのだろう。俺よりずっといい男で、きっと彼女は幸せなのだろうと。


 ふとこちらを向いた玲良と偶然目が合い、彼女が知人に会った程度の会釈をしたことでそれは確信に変わった。元カレでもなんでもない。俺は過去なんだって。


 それでも出来ることなら彼女に、一言謝りたくて機会をうかがった。


 和やかな式。

 友達の幸せそうな笑顔や、花嫁さんの綺麗なドレス姿になぜか鼻の奥がツンとしたけれど、そんな情けない姿は意地で(おもて)には出さない。


 新婦と一緒に笑っている玲良はすごく綺麗だった。ミッドナイトブルーのシンプルなドレスも、ゆるっと結われた髪もおくれ毛も、耳元に揺れるピアスも華奢なアンクレットも銀色の靴も全部似合っている。


(幸せにしたかったな)


 ふとそんなことを思い、バカみたいだと苦笑した。――その時だ。

 二次会の会場へ向かう階段の上で、体勢を崩したように玲良がふらつくのが見えた。


「玲良っ!」


 とっさに飛び出し、彼女の頭を守るように抱きかかえたまま一緒に階段から落ちた。

 どこで止まったのかも分からない。

 スローモーションのように、彼女が履いていた銀色の靴がコンコンと遅れて落ちてくるのがぼんやり見えたことを覚えている。


「史郎っ!」


 一瞬気を失っていたのか。

 視界から靄のような暗闇が薄れると涙でぐちゃぐちゃになった玲良の顔があって、そんな場合じゃないのに、少しだけ俺の唇に笑みが浮かんだ。


「……無事か?」


 そう聞いたけど、背中や胸が痛くてほとんど声にならない。

 それでも彼女がこくこくと頷くから、彼女の涙を拭おうと思い右手をゆっくりと動かした。


「泣くな」


 彼女以外何も見えないし、音も遠い。


(俺、お前を泣かせてばかりだな)


「ごめん、な……」


 やっと言えた言葉は届いただろうか……。


 史郎の意識はそこで途切れた。


   ◆


「あー、史郎《おれ》の死因ってこれだったのか」


 夢から覚めて、ガシガシと頭をかいてため息をつく。

 でも今の夢に引っ掛かりを覚え、それが何かを考えた。


 ミッドナイトブルーのシンプルなドレスに銀の靴。

 もちろんデザインは違うけど、どうしても玲良と、6回目で出会ったシンデレラに印象が重なる。


「玲良もこの世界に来てしまった、とか?」


 まさかと思う。彼女のことは守れたはずだと信じたい。

 でも無性にシンデレラに会いたかった。確かめたかった。これが最後なら、もう一度会いたいのは一人だと気づいてしまった。


 ――だが、どうすれば会える?


「せめて名前を教えてもらえたらよかったんだが」

次はシンデレラ視点です

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