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王子がシンデレラを追ったわけ  作者: 相内 充希


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3/5

3.過去

(うちの両親は恋愛結婚だったから、それほど難しいことではないと思ったんだろうな)


 政略結婚ではあるのだが、お互いひとめぼれからの大恋愛だったというのだから、我が親ながら恐れ入る。


 まあ、そんな感じだったから、最初の人生では妻は自由に選んでいいと言われて育った。

 で、それなりにモテていた俺。某伯爵家の令嬢と恋に落ち結婚。誓いの口づけの後死んだ。


 2度目は1度目のことを夢だと思っていたし、両親も黙っていたから、同じ伯爵令嬢を選んだ。

 慕ってくれる姿が可愛かったのだが、実は彼女には他に本命がいた。俺に近づいたのは、親に言われて仕方なくだったのだ。

 しかし、それを知ったのは3回目に死んだあと。


 3回同じ女の子と結婚式を挙げて死んだ俺に、ようやく両親は呪いのことを話してくれた。

 いや、早く教えてくれよ。


 さすがにしばらくは荒れた。

 でも兄はこのことを知らない。知っていたら、俺に甘いあの兄だ。どう考えてもブラコンをこじらせ、呪いを引き受けかねない。

 まあ、そうはいっても可愛い嫁とはラブラブな兄だから、呪いはあっさり解いただろうか?

 ……いや。もとは政略結婚で後で仲を深めたらしいから、結婚式の時点では駄目だったか?


 そんなことを考え、俺によく懐いてる甥たちをかまっているうちに心が落ち着いた。


 結局4回目は親が選んだ幼馴染の公爵令嬢と結婚したが、まあ、結果は同じ。

 愛してはいるけれど、お互い兄妹みたいな関係だから仕方がない。泣かせて悪かったなと思ったくらいだ。


 5回目は王子の身分を捨てて旅に出た。遠い国に行けばいいのではと思ったのだ。カウントの存在に気づいた頃でもあり、自棄になっていたともいう。


 そこで出会った平民子持ちの未亡人と結婚したが、やはり誓いの口づけのあと死亡。おそらくだが、彼女の子どもの父親にはふさわしくなかったのだろう。もしかしたら未亡人というのも嘘だったのかもしれないが、確認はしなかった。


 6回目。

 その頃にはだいぶ史郎の記憶がはっきりしてきて、嫁を探すなら舞踏会を開くのではと、有名童話のまねをすることにする。舞踏会を開かなかったのが良くなかったのかもしれないと考えたのだ。


 その舞踏会で俺は、かなりドストライクな女性を見つけて踊ることができた。が、いい雰囲気になったところで猛ダッシュで帰られてしまった。

 深夜の鐘が鳴る前の頃だ。


(もしや、というかやっぱり、ここはシンデレラの世界だったのか?)


 階段に残された靴を拾い上げた瞬間、ピカッと雷が落ちたような気がした。暗闇を照らす稲妻みたいに、答えが見えたように感じたのだ。

 そうか! 相手はシンデレラだったのか! と。


 落としたのはガラスの靴ではなく繊細な銀糸の靴だったが、足のサイズがぴったり合う女性は複数人いた。

 そりゃそうだ。1人しか合わない靴って有り得ないよな?

 しかもまあまあぴったりを含めれば、条件に合った女性は7人もいたんだ。


 でも顔を見ればわかると楽観視していた俺は、集められた7人を見て愕然とした。

 あんなに好みだと思ったのに、女性たちの顔の見分けがつかないのだ。というか、人の顔の見分けがつかないなんて初めてのことで、かなり混乱もした。

 それも呪いの一つだったのかもしれないが、結局周りの助言でいくつかのテストをし、王子妃にふさわしいという視点で一人の女性が選ばれた。


 確信は持てなかったけれど、相手のことは大事にした。

 侯爵家の三女だということで身分は申し分なかった。でも人見知りらしく最初はおどおどしていた彼女が、だんだん笑顔を見せてくれるようになったのも嬉しかった。

 しかし、またも結婚式で俺は死んだ。

 たぶんシンデレラではなかったのだろう。


 そうして7回目で目覚める前。

 かなりハッキリしてきた史郎の記憶の中に、一人の女性がいた。

 大学のときに出会い、ずっと好きだった彼女。

 卒業のときに彼女から告白してくれて、無事付き合い始めた。

 十年付き合い、プロポーズして……別れた女性。


玲良(れいら)……)


 顔もよく思い出せないのに、名前を呼んだだけで胸が苦しくなる。

 プロポーズにすぐ頷いてくれなかったことに勝手に腹を立てた史郎(おれ)は、世界一の愚か者だった。

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