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反理想郷の孤独

 ピーター・ハンバートは、己の目的を常々「家族とともに生きる」ことだと語ってきた。

 それはもちろん、嘘ではない。

 ピーターの本心ではある。

 そもそも、彼等と一心同体である以上は、嘘は通じない。

 だがしかし、それがすべての真実でもない。



 彼は、「家族とともに生き続けたい」わけではない。

 彼は、「家族に看取られて死にたい」のだ。

 家族に、捨てられた。

 彼にとって、家族が、故郷が生きる意味だった。

 だというのに、彼はある日捨てられた。

 彼には何の責任もない、理不尽な理由で。

 そして、それを知ることもなかった。知っていたとしても変わらなかっただろう。



 そうして、彼は知った。



「人を殺すのは、孤独だ」




 孤独は、孤立は、人の心をむしばむ。

 今ラーシンが、心のよりどころを失い虐殺に加担しているように。

 ピーターがかつて、世界のすべてに絶望し、どうにでもなれと思っていたように。

 だから、あの日リタと出会って、彼は気づいた。

 ラーシンに教わる前から、気づいていた。



「誰かが、隣にいてくれるだけで、人は生きられる。僕みたいな、クズでも」

 

 

 彼は自分を、クズといった。

 それは、ピーターの掛け値なしの本音だ。

 彼は、結局のところ自分の命を大事にできない。

 もとより、存在意義のほぼすべてがリタとともにあること。

 一つの願いをよりどころにする、

 ある意味では、彼の精神は人よりむしろアンデッドに近い。

 一度死んで、一度名前を変えてまた歩き出したもの。

 ただ一つの目的のために歩き続けるもの。

 それは、人間であるといえるのか。

 むしろ、生ける屍と呼ぶべきではあるまいか。



「リタが隣にいてくれる終わりが、僕の理想だ」

「そんな、そんなつまらない理想で、この私と互角だと?」 



 ラーシンは、彼を睨む。

 ピーターは、彼から視線を切っていた。

 見ていたのは、爆炎の余波の結果。



「まずい……」


 家屋が崩れる。

 そこに、人がいた。

 ピーターの父親と、三人の兄だった。

 


「ーー!」



 なぜ、ここにいるのか。

 どうして避難していないのか。

 それを聞いている余裕などありはしない。

 ただ、彼に出来るのは足を踏み出すことだけだった。



「化け物!」


 

 庇われた男は、ピーターを見てそう口にした。


「あ」

「ねえ、ぴーたー、あのひとたち」

「知らないよ」

「おい、ピーター!」

「…………」



 ピーターは、自分によく似た中年男性を見た。

 その周りにいる、男三人も見た。



「何でお前が生きているんだ!」

「そんなこと、どうでもいいでしょう」



 なぜ、ピーターが生きているのかなど、説明したくもない。

 だって、理解してもらえるとは思えないから。

 家族を得た。

 恋というものを知った。

 友人を、恩人を、知人を得た。

 だから、生きている。生きていられる。

 そんなものを、彼等と共有したいとは思っていない。



「許さない!」



 ピーターの父親だった男が。

 叫んでいる。



「お前を許さない!妻を死なせたお前を!俺は絶対に許さない!」

「父さん!」


 

 兄らしき男が、父だった男に叫ぶ。

 ピーターは、黙って彼等を見つめた。

 それも一瞬。 

 彼は、彼等の無事を確認すると、走り始めた。

 音の成る方向へ。

 破壊と、血の待つ戦場へ。



「ぴーたー」

「大丈夫だよ」



 彼は、目の前にいるラーシンを見ながら、ピーターは前を見ていた。



「僕の家族は、君達だけだよ」

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