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無刻結界

 〈神界師〉。

 〈結界術師〉系統超級職であり、この国を支える要の一人である。

 わかりやすい話をすると、この都市を覆う結界システムの構築。

 更には、王国の全都市とその周辺の結界システムを作り出した張本人でもある。

 〈天騎士〉がこの国最強の矛であり、〈神界師〉がこの国を守る最大の盾である、とも言われている。



 そんな彼が、今王族たちに、この国そのものに牙を剥いていた。



「あなたが、〈神祖〉の仲間なのか?」



 ピーターは、彼に訊いた。

 聞かずにはいられないほど、衝撃的な事実だった。

 この国を守る立場にある人が、王都での虐殺に加担しているなどというのは。



「ええ、そうですよ。私の仕事は、【無刻結界】で彼等を足止めすることです」



 〈神界師〉は穏やかな顔で、シルキーやアランのほうを見る。

 穏やかなのは、彼だけではない。

 彼の周囲にいる騎士や貴族王族、冒険者たちもなにも反応しない。

 彼が、テロに加担しているということが分かったのに、犠牲者が出ているなんてことはわかり切っているはずなのに、講義も攻撃も一切ない。

 これはあまりにも不自然だ。

 まるで、全てが止まっているかのように。

 


「この結界は、|内部の時間を止めているのか《・・・・・・・・・・・・・》?」

「ええ、そうです。聖属性の本質をよく理解しているようですね、君は」



 聖属性と邪属性の本質。

 それは、都合のいいものの生成と、都合の悪いものの消去。

 ゆえに、この結界の内部に限り、時間の流れを消去(・・・・・・・)し、停止させた。

 アランたちが動けないのはそれが原因だ。

 時間そのものが止まれば、基本的に何をしても関係ない。

 ようやく、ピーターにも事の全容ができてしまった。

 まずは強固な殻を、〈神祖〉が作り出して、王族たちを収納して隔離。

 そして、外から破壊されないように彼女の配下が守っている。

 さらに、内側から壊されないように〈神界師〉が【無刻結界】を展開。

 殻の内部の時間を止めて、彼等を足止めした。

 超級職一人で、三、四人足止めできるのであればこの行動に意味があるのは理解できる。

 だが、それをなしたのが今まで王国に貢献してきた人物であるというのは、目の当たりにしてもなお受け入れがたかった。



「苦労しました。この【無刻結界】はレベルが高い物には効果が薄いので、予め膨大な魔力を蓄えておく必要があったのです。まあ、結界設備に紛れ込ませるだけの話なのですが。あと、鬼としてのMP回復スキルもありましたしね」

「外道……」

「心外ですね。私の道は、常に一つ。道を外れたことなんて一度もありません」

「…………」

「とはいえ、奇妙な話です」



 彼は、ピーターからのそしりにはこれといって何の反応も示さず、しかしその目は動いているピーターをとらえて離さない。

 無理もない、動いているものに目がいくのは当然だ。

 まして、この世界で動いているのは二つしかないのだから。



「なぜ、君はこの結界の中で動けるのでしょうか?超級職でさえ、この中では動けないのですが」

「…………」

「まるで、話に聞いていた”邪神”様のような……まあいいでしょう。どうでもいいことです」



 〈神界師〉の直感は正しい。

 結界の効果を弾いている【邪神の衣】は、かつて”邪神”が保有していたギフト。

 ギフトを持った人間が死亡した場合、ギフトが全く別の人間に移る場合がある。

 死んだ直後か、数年後か、或いは数十年後か。

 それはまちまちだが、生まれながらにギフトを持っているものはたいていこのパターンである。

 


「とりあえず、貴方はここで殺しておきましょうか。【攻性破壊結界】」



 まるで、飛び回る羽虫を叩き潰す程度の口調で、〈神界師〉は、攻撃を開始する。

 スキル宣言と同時に、黒い飛翔体がいくつも展開し、ピーターに殺到する。

 大半は避けるが、いくらかは当たり、ダメージをピーターに与える。



「なぜ、ダメージが?」

「うん、効き目が悪いですね。多少は通っているようですが」



 聖属性の魔術は全てピーターには無意味なはずだ。

 聖属性の結界を使えるピーターには徹るはずがないが、ダメージは入っている。

 


「ギフトに由来した聖属性の超級の耐性と、アンデッドと融合したことで獲得した邪属性への耐性といったところですか」

「舐めるな!」

「ああ、それもダメです」

「っ!」



 反撃に転じて、スピードと地中穿孔で、股間に強襲を仕掛けたピーターの攻撃を受け止めている。

 黒い半透明の壁が展開されていた。

 ピーターの【邪神の衣】では無効化できず、リタの能力でもすり抜けられない。

 そんな壁が。

 


「ゴーストとの融合。悪くないですが、アンデッドの手口などすべてお見通しです」

「……最悪」



 ピーターの手の内が、今の一合二合ですべて読まれている。

 加えて、ピーターもまた〈神界師〉の能力をある程度理解する。

 彼は、邪属性と聖属性、両方を使っているのだと。

 結界とは、魔力を糧にして、エーテルによる領域を作り出すというスキル。

 エーテルを使っている以上、結界というのは本来聖属性、邪属性の両方で作ることができる。

 普段、都市の防備に使っているのは、アンデッドや悪魔への効き目などや、人間へのダメージを考慮した結果聖属性になっている。

 そのため、あまり注目されていないが、実際のところ邪属性聖属性両方彼は使えるし、それができなくては、〈結界師〉系統超級職の〈神界師〉に就くことは出来ない。

 ピーターは悟る。

 いかに相性が良くても、いかに彼がほかの結界にリソースを割いてしまっていたとしても、彼を倒すのは無理だと判断できる。

 MPは、彼の鬼としてのスキルで回復できることを考慮しなくても、それでもなおこちらの方が先に力尽きるだろう。

 内部に敵がいた場合、武力制圧するプランAは破綻した。



「プランBだ」



 彼に勝つために、彼を倒す必要はない。

 今の(・・)ピーターなら、目標にさえ触れてしまえば、彼に勝てる。

 


 リタの本質は、ゴーストハウス。

 ゆえに、【降霊憑依――幽人体】はゴーストと屋敷の両方の性質を合わせ持つ。

 誰かに、触れてしまえば勝利の糸口をつかめるはずだ。

 厳密には、囲って(・・・)しまえば、だが。



「触れるつもりだね?させんよ」



 〈神界師〉が、アイテムボックスから杖を取り出す。

 すべて、読まれていた。



「【ブレイズ・レヴォルブ】」



 彼の宣言と同時、炎が杖先から噴出する。

 炎は、無数の竜巻を作り出して、全ての時間停止下にある人を覆い尽くした。

 無論、時間が止まっているのだからダメージはない。

 だが。



「触れられない……」



 圧倒的な火力の竜巻は、耐久性に難のある幽人体では触れられない。

 物理攻撃こそ通じないものの、リタはそれ以外の攻撃にはさほど強くない。

 今までの邪属性攻撃も、リタではなくむしろピーターの持つ耐性の方が強い。



「まだだ!」



 ピーターは、透過能力で地面に潜る。

 炎の竜巻は、地中には影響しない。

 足裏なら、触れるかもしれない。



「うおおおおおおおおおおおおおおお!」



 余熱で、ピーターの腕が崩れかけるが、構わない。

 ピーターの手が、アランに触れようとして。



「惜しい」

「ぐああああああああああ!」



 炎熱で壊れかけた腕が砕け散っていた。

 ピーターは見た。

 先ほどの飛翔体型の邪属性結界が、飛来したのを。

 強度が低くなっていた腕を、連撃で吹き飛ばした。

 とっさに、土から出て再生しようとして。

  


「時間が、来たようだね」



 【降霊憑依】のタイムリミットが、尽きてしまった。

 二人をつなぐ融合が、解除された。



「私の勝ちだ」

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