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〈神祖〉とゆかいな仲間たち

 冒険者とは何か。

 それは、もともとならず者たちのことだった。

 かつて、とある都市国家があった。

 市民の守りはおざなりであり、それでいて私腹を肥やす術だけはうまかった。

 一方的に、支配され、自由はなかった。

 そのくせ、誰も守ってはくれなかった。

 マギウヌスの支配の方が、ある意味ではマシだったかもしれない。


 

 そうなってくると、市民は各々で武装しなくてはならない。

 戦闘に秀でたものが、モンスターを狩り、そうでないものが裏方に回って支援する。

 そうして、彼等は勢力を徐々に拡大させ、ハイエスト――今のハイエンドの騎士たちと組んで国を滅ぼし、ハイエンドに下る代わりにアルティオスの自治と、武力を持った民間勢力としての活動を許可されている。



 長い時がたち、顔ぶれも仕事の内容も様変わりした。

 少なくとも、クーデターに加担する必要性はない。

 だが、彼等の志は変わっていない。

 自由に生きる、そのために戦う。



 彼等には、自負がある。

 国のためではなく、各々のために、あるいは自由のために戦ってきた。

 モンスターを狩り、人を守り、荷物を運んできた。

 そして今この時も、彼等は戦う。

 彼らの戦う理由はそれぞれだ。

 金のために、家族のために、友のために、出世のために。

 各々の自由でそれを選んできた。



 ◇



「そんな君らが今、街を守るために戦っている。かつて自由のために街を潰してきた君たちが、今度は街を守るために、この不自由な()の中で戦っている。なんて皮肉なんだろう」



 〈神祖〉レヴィ・マリーブラッドは、へらへらと笑う。

 籠、というのは結界のことだ。

 この街を囲う結界。

 それは本来、外敵からの襲撃を防ぐためのゆりかごだが、今この瞬間は外へ逃がさないための檻である。

 本来、四つだけ開けられた結界の穴。

 それが、塞がれてしまっている。

 これは、偶然ではなく、レヴィの仲間が仕組んだことである。

 ゆえに、ハイエンド近辺の村落に避難しようとしたものもいたが、それは叶わない。

 膨大な魔力を蓄積した結界ゆえに、破ることはほぼ不可能であり、仮に破れてもすぐに修復されてしまうだろう。



「おっとお」



 〈弓手〉らしき冒険者が、スキルで、矢の雨をレヴィに対して降らせる。

 矢が、彼女の胴体を貫通して無数の穴をあける。

 さらに、いつのまにやら接近してきた前衛が五人。

 各々の武器を振るい、首を刎ね、手足を切り落とし、胴をないでバラバラにして。



「無駄なんだけどね」



 次の瞬間には、すでに元の状態に戻っている。

 細切れにするほどの刀傷も、矢でできた胴体の穴も全て何事もなかったかのように戻っている。

 更には、彼女が来ている赤黒いドレスも修復されている。

 彼女の服は、彼女が【鬼血創操】で作ったものであり、彼女がスキルを使えば何度でも作り直せる。



「【鬼血創操】」



 自らの爪で柔肌を裂き、血を流しながら彼女が宣言する。

 あふれ出る血が、長大な棒を作り出し、レヴィを吹き飛ばす。



「来れるものなら来てごらんよ」 



 冒険者は追いかけ、彼女は逃げる。

 先ほどから、彼女はずっとこれを繰り返していた。

 ハイエンドのありとあらゆる場所を周りながら、である。 



「なぜだ……」



 冒険者の一人、弓を抱えた男が問う。



「なぜ?」

「なぜ、反撃しない?」



 先ほどから、彼女は攻撃を受けるか、逃げるばかりで一向に反撃する気配がない。

 


「それはそうでしょう。何も、私が単なる虐殺者と同じというわけではないんだからね。暴力は好きじゃないんだ、得意でもないしね」

「…………攻撃再開」

「あれ?今私達会話してなかった?」



 民間人を巻き込むテロを起こしておいて、それが虐殺者ではないというのは暴論でしかない。

 それに突っ込んでいたららちが明かないので、黙殺したまま攻撃を続ける。



(まあ、理由は言えるわけないんだけどね。大技(・・)の準備中だから、攻撃できませんだなんて)



 首を斬られて、血が噴き出す。

 頭部を潰されて、血と骨と肉と脂肪が飛び散る。

 それもすぐに吸血鬼の頂点としての回復能力ですぐに治ってしまう。

 血をまき散らしながら、彼女は踊り続ける。




(まあ、その大技も使う意味がないかもしれないね)



 彼女が大技を使わなくても、この街を壊滅させることは可能だ。

 何しろ、既に彼女以外の超級職が二人いる。

 その中の一人は、〈剣舞王〉グレイ・アラビアータ。

 【剣舞】というスキルによって、無尽蔵に攻撃力をあげられるというもの。

 たかが剣圧によって、家屋を倒壊させ、人間の肉体を粉砕できる。

 時間をかけて準備をして、まともに剣を当てさえすれば、倒せないものは存在しないだろう。



 もう一人は、とある場所に潜伏し、結界の管理をしている。

 ある意味では、この計画において誰よりも重要な役割を担っている。

 


 そしてほかにも、実力者を数名仕込んである。

 蓄積次第では、無尽蔵に悪魔軍団を送り込める〈高位拝魔師〉ラーシン・デモンストレイト。

 硬化能力と新藤派のコンボで、近距離遠距離両方で村一つ滅ぼせるほどの火力を発揮できる〈白波術師〉ダガン・ブレイクスルー。

 そして、もう一人。

 鬼としての能力と、職業のシナジーを発揮したレイドという男。

 火力だけならば、グレイに並ぶほどの存在。

 彼に、冒険者の殺害を命じたのは、彼ならば〈魔王〉以外の冒険者には全員勝てると思ったからである。



「彼の炎を、君たちは止められるかなあ?」

 


 彼女のつぶやきは、血しぶきの音に紛れて、誰の耳にも入らなかった。



「おいおい、どうかしたのかあ?」



 赤い肌の、五本角の鬼。

 奇妙なことに、全身から、炎を発している。

 触れたものは、崩れて焼けて炭になっていく。

 さらに、口から火を噴いている。

 その日に触れた者も、物も全て焼けて溶けていく。

 



 この場には、五十以上の冒険者がいたが、もうすでに大半が撤退したか、炭になっている。

 【眷属化】でできた鬼の中には、特殊なスキルを獲得する鬼もいるという。

 全身から炎をまき散らすスキルの職業はないから、おそらくは鬼としての能力なのだろう。

 そう、その場にいた冒険者は想像したし、それは事実だった。

 


「雑魚しかいねえのかよ、つまらねえな」



 彼こそは、〈神祖〉側における、最大火力の持ち主。

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