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牙と共に

今回短めです。

「なるほど、そんな事態になっていたとは」



 ピーター達は、ハルに乗って移動しながら、会話をしていた。

 歩きながらでは、時間が勿体無いと判断した結果である。

 ピーターは、今日何があったかをおおよそ説明していた。

 ラーファやその保護者であるジョージとともに祭りに参加していたが、途中で分かれてしまったことこと。

 そして、そこで例の誘拐事件の主犯格であるラーシン・デモンストレイトと遭遇、交戦することになったということ。

 そしてそれに敗れ気絶していたあと、仲間である精霊のアンバーと「些細なすれ違い」が起こってしまったこと。

 そこにちょうど、ルークたちが来てくれたこと。



 と、会話の最中に一体の()が突っ込んでくる。

 〈猟犬の牙〉が武器を構えて対処しようとするが、それよりもはるかに早く。



「ごぶっ」

「鈍い」



 ハルの尾刃が振るわれ、上半身と下半身が分かたれる。

 そのまま倒れて、転がっていった。



「今のが鬼、ですか」



 一本角の生えた、戦士風の男が倒れこんでいるさまを見ながら、ピーターは呟く。

 【眷属化】によるものか、角が生えているらしいが、それ以外はただの人間に見えた。

 ステータスが変わるとはいえ、あくまで眷属。

 さほど人間から外れることもないのだろう。

 そもそも、〈神祖〉でさえ見た目は人間とさほど変わらないはずだ。

 



「さっき見たのは、間違い、なく、オーガみたいだったんですけど」

「じゃあ、鬼にも個体差があるってことなのかな?」

「……そう考えるのが自然ではあるな」

 


 〈吸血鬼〉にも格差があると、ピーターは書物で読んで知っていた。

 格は角の本数で決まる。

 十一本ある〈神祖〉が頂点で、それ以外は十段階に分かれる。

 今葬られたのは最下層だが、他に強い鬼がいないとも限らない。



「そういえば、ハルさんは、どこに、向かって、いるんですか?」



 フレンが、揺れている状況で舌を噛みそうになりなりながら訊いてきた。



「ええと、ひとまずは師匠ーー〈精霊姫〉シルキー・ロードウェルと合流しようと思っています。連絡がつかないので」



 彼らは、シルキーたちを覆う殻へと向かっている。

 おそらくは、誰かしらが外から割れないように守っているのだろう。

 その中には、ラーシンかそれ以上に強い者もいるかもしれない。

 それでも、救わなくてはならない。

 そもそも、王族貴族ごと人質にとっているわけで、シルキーを助ければ彼等も解放できる。



「そういえば、先ほどは本当にありがとうございました」

「いやいや、友達を助けるのは当然っすから。あと、この状況での人助けも仕事のうちなもんで」

「逃げればいいんじゃないですか?僕のギフトなら逃がすことができるのですけれど」

「ピーターさん」



 ルークは、彼にしては珍しく険しい表情を浮かべた。

 普段穏やかな表情であることが多いが、何かを咎めるような顔つきだった。



「俺は、王都で、ハイエンドで生まれて育ちました。だから、ここが俺の故郷で、生きる意味でもあるんです」

「まあ、そういうわけで引くわけにはいかないってわけだナ」



 ピーターは、思い出した。

 彼等との出会いを。

 彼らが王都からの(・・・・・)ユリア・ヴァン・カシドラルの護衛であったことを。

 彼らが、王都出身かあるいはその周辺であるということは予想出来てしかるべきだった。



 ピーターは、自分と彼等の在り様の違いについて考え、瞠目した。

 彼らは、今この瞬間街を守るために戦っている。

 だが、ピーターはその一方で、ごく一部の人だけを助けたいと、助けられればいいと考えてしまっていた。

 それでは、いけない。

 自分が社会という枠組みで暮らしていくためには、社会に貢献しつつ居場所を作っていかなくてはならないのだから。

 そうしなくてはならないと、彼がおしえてくれたから。



「……いや、違うか」



 ラーシンのその言葉は、嘘だった。

 彼のごく普通の、店を営む優しい店主はもういない。

 否、はじめからそんな人物はいなかった。

 もう何年も前から、それこそピーターを拾う前から、ラーシンはあのゴレイム達に加担し、悲劇を量産していた。

 


 けれど。

 


「ルークさん、ミーナさん、イスナさん、フレンさん」



 ピーターは改めて四人の名前を一人一人呼んだ。

 彼らは、ピーターが人助けをしたことがきっかけでつながりを持ち、友人関係に至った者達である。

 例え、ラーシンの言葉が偽りで、彼が悪人であったとしても。

 それでも、構わない。

 だって、この場にいてくれる彼等は、先ほどぴーたーを助けようとしてくれた彼らの意思は、嘘偽りなく本当のものだから。 

 


「師匠と合流したら、あなたたちと一緒に、鬼の対処に当たろうと思っています。構いませんか?」

「……いいの?」

「ええ、僕も冒険者ですから」

「いいねエ、あの時のメンバー全員集合ってか」

「いや、リタちゃんがいないんじゃ」

「よんだー?」



「リタ、もういいの?」

「うん、まだなおりきってないけど、こっちのわたしはだせるよ!」



 本体の修復は、まだ終わっていない。

 ピーターが確認したところ、まだ半分といったところだ。

 だがしかし、分体に過ぎないゴーストを出すことは出来る。

 これで、全員がそろった。

 


「行きましょう!」

「「「「「おう!」」」」」



 かくして、彼等はまた挑む。

 ゾンビ騒動のように、未知なる困難へと。

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