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騎士との再会

 城に入った後、ピーター達は客間に通され、待機していた。

 しかし、シルキーだけが王族に呼ばれた。

 その結果。



「暇だねえ」

「ひまー」



 ピーターは特にやることもなく、リタとともに城の中を歩き回っていた。

 白の中は広大であり、予め渡された地図があっても、道がわからなくなりそうであった。

 いつの間にか、騎士と何度かすれ違った。

 もしかすると、騎士が過ごす区画にいたのかもしれない。

 


「ピーター?」



 彼の名を呼ぶ声を聞いて、立ち止まった。

 声の主は、彼の後ろにいた少女だった。

 年のころは十二、三歳くらいだろうか。

 長い紫色の髪に、紫の瞳。

 銀色のフルプレートメイルに身を包み、腰には一本の十字剣を佩いている。

 そんな彼女の姿には、ピーターにも見覚えがあった。



「お久しぶりです、ユリアさん」

「久しぶりですね、ピーター、リタ。お変わりないようで何よりだわ」



 〈聖騎士〉ユリア・ヴァン・カシドラル。

 ピーターとリタの友人だった。



 ◇



 一年前、ピーター達とユリアたち騎士団、そして〈猟犬の牙〉によって、児童誘拐事件の首謀者であるグレゴリー・ゴレイムを討つことに成功した。

 かたや、打倒すべきアンデッド使い。

 かたや、初対面の相手をいきなり殺しにかかる危険人物にして狂信者。

 最初の印象こそお互い悪かったものの、自分のダメージを顧みないピーターの性格に加えて共に戦った経験故に、彼等は友人になることができた。

 その直後ピーターはすぐに国を出てしまい、音信不通になっていたが……。

 今こうして、再会することができていた。



 王都にある聖騎士団の食堂。

 そこの片隅で、彼らは食事をとっていた。



「ひさしぶりだね、ゆりあ!」

「そうね、本当に再会できてうれしいわ」

「嬉しいですね」

「やっぱり敬語なのね……」

「すみません、本当にこれは癖で」



 彼は、どうしても家族以外には敬語で話してしまう。

 相手を立てる意味はあるが、それと同時に、心のどこかで警戒してしまっている。

 あの日から、家族に捨てられたから、彼には心から人を信頼できなくなってしまった。

 友人相手でも例外ではない。



「まあ、仕方ないわね」



 ユリアも、彼のことはある程度分かっているため、今更特に咎めようと思っていなかった。

 それでも、寂しいと感じてしまっているのもまた事実ではあったが。

 ピーターは、空気を変えようと、行動しようと考えた。




「せっかくなので、新しい家族を紹介しますね。ミク、出ておいで」



 ピーターは、【霊安室】からミクを出す。

 ミクは、一礼して席に座った。



「お初にお目にかかります。〈僵尸〉のミクと申します」

「また幼女を手なずけてるのね」

「その言い方はやめてもらっていいですかね?」



 ピーターは顔をしかめる。

 その変態的で狂気的な言動ゆえに誤解されがちではあるが、別に彼は小児性愛者ではない。

 ピーターが、恋愛的な目で見ているのはリタだけである。

 ミクのことも、妹のような庇護対象としてのみ見ており、性的な目で見ているわけではない。

 たまたま好きな相手がロリだっただけであって、あたかも幼女に目がない変態であるかのように言われるのは正直心外であった。



「冗談よ。あなたが異常なのは知っているけど、幼女趣味だとは思っていないわ」

「それは良かったですよ」

「お兄様、まさか本当に……?」

「違うよ!」



 ピーターは本当に慌てて弁解した。

 ミクはその一言で納得できたのか、ピーターの皿の上のサンドイッチを食べ始めた。

 いつものことなので、ピーターは特に何も言わなかった。



「明日と明後日は護衛があるのよね」

「ああ、建国記念の式典ですね。私の師匠も護衛に就くらしいですよ」



 式典は、二日に分けて行われる。

 初日は、前夜祭。

 王族貴族が表に出ることもない、単なるお祭り騒ぎだ。

 そして二日目が本祭。

 王族貴族によるパレードが行われる、荘厳で壮大な祭典。

 王族が人前に現れる数少ない機会でもあり、同時に王族たちにとっては、最も危険な瞬間でもある。

 護衛として、ユリアたちがわざわざ呼ばれたのも道理である。

 が、ユリアとしては別のことが気になったらしい。



「師匠?」

「シルキー・ロードウェルっていう人なんですけど」

「シルキー・ロードウェル!」



 ガタン、と音が鳴った。

 ユリアが、椅子から立ち上がったのだ。

 椅子が倒れている。

 ミクが、【尸廻旋】を使って椅子を戻す。

 周囲を見回して、大声を出し過ぎたと察してユリアは声を潜める。



「シルキー・ロードウェルってあのシルキー・ロードウェル?〈精霊姫〉で〝妖精女王〟で、十賢の?」

「そうですね」

「そーだよ!」

「そうですね」

「とんでもない人のところで修業しているのね……」

「おかげさまで、レベルも随分と上がりました」



 因みに、ピーターのレベルは現在78である。

 これは、まだ上級職に就いて一年であるにしては、考えられない数値である。

 シルキーによって課された、文字通り命を削るような地獄の修業。

 さらに、学院のカリキュラムがピーターの代になってから急に難易度が上がったこと。

 極めつけは、〈神霊道士〉シュエマイ・チャンシー、ネームドモンスターである〈継炎肉像〉をはじめとした格上との戦い。

 経験値を積んでレベルを上げるというのは、単にモンスターを倒せば経験値がもらえる、といった単純な代物ではない。

 その職業に対応した経験を積まねば経験値は得られず、経た経験が困難なものであればあるほど、得られる経験値は多くなる。

 圧倒的格上のアンデッドやアンデッド使いとの戦いは、その最たるものだ。



「すごいわね……。私はさほど成長できていなくってよ。最近はレベルの伸びも悪いですし」

「早熟だとそういうこともありますよね。でも、何も成長していないということはないでしょう?アルティオスでの騎士団長としての生活とか、学んだことはたくさんあったのでは?」

「それはもちろん貴重な経験だったのですけれど……」



 彼女にしてみれば、武力的なさらなる強さが欲しいというのもあるのだろう。



「護衛と言えば、ルークたち……〈猟犬の牙〉も護衛に就いているらしいですわ」

「そうなんですか。会えるといいですねえ」



〈猟犬の牙〉までいるとなると、本当に知り合いばかりということになる。

 護衛のクエストに参加しているのであれば、会うことは難しいかもしれないが。



「冒険者たちは〈魔王〉とか一部の実力者を除いて街中の見回りだから、普通に会えるんじゃなくて?」

「そうですか……それは良かったです」



 ピーターにとって、彼等も友人である。

 それゆえに、会えるのであれば会いたいと思っていた。

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