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七つの国、聖なる国

 シルキー邸にて。

 ピーター、ミク、リタは黒板の前にいるシルキーと向かい合って授業を受けていた。

 今日は、魔術とは関係ない特別授業だ。



「今日は、諸外国について、そして明日から向かうハイエストについて教えるわ」



 因みに、シルキーは、今日も眼鏡をかけている。

 というか、ピーターに何かしら教えるときは、大抵彼女は伊達眼鏡をかけている。

 本人は特に認めようとしないが、彼女は師匠扱いされるのが好きらしい。

 だったら、弟子をどうしてピーター以外に取らないのか彼としては疑問ではあるが、まあいいかと結論付けた。

 シルキーにしてみれば、彼だから(・・・・)弟子に取ったのだが。



「さて、問題だけど、国はこの世界にいくつあるでしょうか?」

「はい!」

「リタ、何かしら」

「わかりません!」

「……わからないなら、言わなくていいのよ?」

「そうなんだ!」



 リタは相変わらずである。

 そんな彼女を微笑ましいと思いながら見ていたピーターは反応が遅れ、ミクが先んじて手を挙げた。

 因みに、ミクとリタは授業に参加する必要は全くない。

 リタは、ピーター達と長く時間を過ごしたいがゆえに。

 ミクは、少しでも多くを学びたいと思っているがゆえに。

 それぞれ彼女達自身の意思で参加しているだけである。



「はい」

「ミク、わかるかしら?」

「東方帝国、シルフロード連邦、ハイエスト聖王国、ペンタグラム公国、マギウヌスの五つでしょうか」

「ミク、玉ノ国と、ナウィスロンガを忘れてるよ」

「あ、そうでしたね」

「そうね、ピーターの言うとおり、正解は七つよ」



 騎士と教会の支配する国。

 白を基調とした、高潔で清浄な国、ハイエスト。


 魔法と魔術とための国。

 天空に浮かぶ島々と、地に落ちた犠牲者の国、マギウヌス。


 かつて異世界から来たとされる〈勇者〉が築いたとされる国。

 熱と砂漠と岩山に覆われた国家、ペンタグラム。


 温暖

 涼しい気候と、豊かな自然でできた国家。

 エルフやドワーフ、獣人といった様々な人間種以外の亜人が集ってできた国、シルフロード。


 東方の、広大な大地に根差す国。

 人種も、文化も、様々な文化がすべて皇帝のもとに認められた巨大国家、東方帝国。


 最果てにある島国。

 他国との交流もほとんどなく、独自の文化を形成してきた辺境国家、玉ノ国。

 

 詳細も所在地も不明、されど、その存在だけは確かな国。

 船と機械の国、ナウィスロンガ。

 

 

 

「では第二問、それらが東大陸のどの位置にあるかはわかるかしら?まあナウィスロンガはあちこち移動してる(・・・・・)から、さておくけれど」

「ええと、南部にペンタグラム、東部に東方帝国、そのさらに東に玉ノ国、北部にシルフロード、中央にはマギウヌス。そして、西部にハイエスト、でしょうか」

「正解ね」



 地図を見れば、大陸の東半分が東方帝国。

 それが、様々な民族文化圏に分かれている。

 そして、中央のやや西寄りに、マギウヌスがあり、マギウヌスの南、北、西にペンタグラム、シルフロードが存在する。

 



「こうしてみると、よくマギウヌスは攻められませんね」



 四方を他の国に囲まれているにもかかわらず、この国はいまだ健在である。

 あるいは、四方を囲まれているからこそ、手を出しづらいのかもしれない。

 この国を攻めれば、自然と他の国との国境線を侵犯することになるから。

 


「それもそうだし、潰しても得るものがないのよね。人的資源以外に資源がないのよ」

「まあそれもそうですね」

「人的資源を得るために攻めても、その過程で死人が出ればその分獲得できる資源が減るもの。それなら、金を積むなりして引き抜きをしたほうが早いわ」

「それもそれでどうなんでしょう……」

「実際、教授が一人そうやって抜けてるしね。アンタが来る前の話だけど。パルマフロスト家ってアンタ知り合いがいたでしょう?その前当主よ」



 そうなのか、とピーターは思った。

 そういえばジークは自己肯定感が激しく低い。

 もしかすると、そのせいもあるのかもしれない。



「さて、マクロな話はいったんやめておきましょう。今度は、少しミクロな話をしていくわ」

「ハイエストの話、ということですか?」

「そう、もっと言えば、王都ハイエンドについてね」



 シルキーは、また別の地図を取り出す。

 それは、どうやらハイエストの地図らしかった。

 


「この中央にあるのが、ハイエンド。ハイエストの中心ね」



 ピーターは言われて、地図のハイエンドとは別の点を見る。



「アルティオスはこのあたりですか……」 

「そうね。シルフロードに近いから、亜人もそこそこいるんじゃないかしら」



 言われてみれば、冒険者の中には亜人もちらほらいた。

 ピーターの知り合いの冒険者にはいなかったが、確かサブマスターが獣人だったはずだ。

 改めて、地図を見る。

 ハイエンドより遥か北。

 シルフロードとの国境線に比較的近い場所。

 それが、ピーターが半生を過ごした場所。

 そしてもう一つ。



「どれなんでしょうかね……」

「どこが?」

「いえ、なんでもありません」



 ピーターが人生の大半を過ごして、追い出された場所。

 今となってはもう、思い返しても意味がない。

 意味がないから、してはいけない。

 辛くなるだけだから。

 そもそも、あの村の名前もピーターは知らない。

 もう、忘れてしまった。



「ねえねえ」



 リタが、シルキーの方を向く。

 


「はんばーとむらってどこかな?」

「地図にはなさそうですね……」

「もう滅んだ村でしょう?たぶん載ってないと思うわ」

「そっかー」



 リタは、どうやら自分のルーツに興味があるようだ。



「なんなら、帰りに立ち寄ってもいいわよ。フランシスコに訊けばわかるだろうし」

「しんせつなひとだね!」

「……どうかしらね」



 目を輝かせているリタを見て、シルキーは目を伏せる。

 どこか申し訳なさそうに、ピーターには見えた。




「あの、シルキー様、目的地はハイエンドということでよろしいのでしょうか?」

「そうね、建国百年を祝うんだったかしら。それで王都に行かなきゃならないのよ。マギウヌスの代表者としてね」



「これは、アンタ達には言ってないからわからないかもしれないけれど、ハイエンドは元々ハイエストだったのよ」

「「「?」」」



 ある意味当然のことを言われ、三人は困惑する。

 それも想定内なのか、彼女は眼鏡をずり上げて説明する。

 彼女はどうやら、師匠よびだけではなく眼鏡も気に入っているようだとピーターは最近気づいた。

 こういうところは微笑ましい。



「元々、今ハイエストがあるところは、ハイエストも含めて都市国家が乱立していた。群雄割拠の戦国時代が、五十年前くらいには確かにあったわけ。まあ、それもあるとき終わりが来たわけだけれど」

「それはもしかして、邪神戦争が原因ですか?」

「そうね……。あの子たちが国という国を滅ぼしまくって、生き残った国も一つにまとまらざるを得なかった。ハイエストを中心に西方がまとまり、マギウヌスやシルフロード、ペンタグラム、東方帝国が力を合わせて”邪神”とその配下に挑んだのよ」

「ナウィスロンガと玉ノ国は参加しなかったのですか?」



 ミクが質問した。



「玉ノ国は連絡つかなかったし、ナウィスロンガができたのは邪神戦争が終わった後だからね。本当に新興国なのよ」

「なるほど」

「ともあれ、百年前の建国当時、ハイエストの領土は王都ハイエンドと、その周辺のみだったの」



 つまり、建国を記念しての式典であれば、建国当初からハイエストであった場所でなくてはならないということだ。

 王都ハイエンド以外に、祝う場所の選択肢はないということだろう。

 それでなくても都市間の移動はリスクを伴うため、どの道ではあったかもしれないが。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょっと遅いですが100話達成おめでとうございます! [一言] ハイエストとハイエンドがそれぞれあるってシルキー先生に言われるまでわかってなかったヨ
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