13話 君たちなら、あるいは、混沌の向こうに……
13話 君たちなら、あるいは、混沌の向こうに……
「うるっせぇ、ぼけぇ! 耳がキンキンするっつってんだろ! 黙ってろぉ! なに、妙な深読みしてんだ、クソ厨二野郎! ああ、もういい! 話は終わりだ! どうせ、てめぇらは、私を殺せねぇ! 所詮、私頼りで生きてきたこの世界は、私を排除する事がどうしても出来ない。回復したら、また新しい作戦を練って、必ず、てめぇをブチ殺し――」
そこで、聖堂が、終理の頭に杖の先を押しつけた。
「確かにそこのクズや、あそこにいるバカ女共は、貴様に引導を渡す事ができないだろう。だが、私は別だ。零児を殺そうとしているクズを殺すのに躊躇などしない」
「しゃしゃりでてくるな、ダメンズ好きの無能なバカ女がぁ。私が必死に頑張ってきたから、てめぇら無能どもは、のうのうと生きてこられたんだ。私を殺せる資格を持つヤツなんざこの世にはいねぇんだよ」
「資格? 貴様は何の話をしている? 私は『私の復讐を邪魔するヤツは許さない』と言っているだけだ。才藤零児はこの手で殺す。私の『この手』によって殺されるその日まで、才藤零児が死ぬことはありえない。もし、私が『誰か』を殺さなければ『零児が死ぬ』というのなら、何人でも、何百人でも、何百億人でも殺してやる」
「本当に狂っていやがるな……このクソパラノイアがぁ……」
そこで、
「――非常に興味深い対話だった」
『世界のGM』を自称する、女神のように美しい『彼女』は、しみじみと呟いた。
「聖堂雅。君の存在は非常に興味深い。才藤零児は、3歳の時、12歳の時、そして、先ほどと、何度もチャンスを棒に振っている愚か者だが……しかし、君の存在は、私に可能性を感じさせた。君がそばにい続けるのであれば、いつか、彼は『辿り着ける』かもしれない。混沌の向こう側。運命の最果てに」
「あ? 何を言っているのだ、貴様は。というか、そもそも貴様は一体――」
「ちょ、ちょっと待て、聖堂!」
そこで、
才藤は『世界のGMを自称する彼女』に、
「12歳の時は分かるんだが……3歳? 3歳の時にチャンスって……いったい、何の話だ?」
「君が3歳のころ、私は同じ質問を投げかけている。君は8歳より以前の記憶を完全に失っているので、決して思い出す事はないだろうが」
「……」
「あの日、君は、私の『仮に君が神なら世界に何をあたえる?』という問いに対し、『万能のヒーロー』と答えた。『助けてくれ』と叫びながら。『この歪んだ世界を救ってくれるヒーローがほしい』と願った」
「……は? それって、――なっ、まさか――」
「そうだ。君が望んだから、この世界は『酒神終理』というヒーローを得た。結果、テロリストの数は減り、数え切れないほどの麻薬工場が焼かれ、『確定で起こるはずだった、核を撃ちあう第三次世界大戦』は回避された。しかし、それだけだ。ご存じのとおり、根本的な解決には至らなかった。――あげくのはてには、そのヒーローを腐らせる始末。この世界に……人間に、可能性はないのかもしれない。もういっそ、『大いなる混沌』に飲み込まれてしまった方がいいのかもしれない。私は、いつしか、そう思い始めていた」
「……そんな……」
「――ただ、先ほども言ったように、『聖堂雅』の存在が私を動かした。才藤零児。所詮はただの人間でしかない君が、『酒神終理』という、反則的スペックを積んだ万能のヒーローと互角に渡り合えたのは、『聖堂雅』が君の心を支え切ったからだ。もし、君が、どこかで、僅かでも諦めていたら、私は、全ての『祈り』を無効にしていただろう。だが、君は決して諦めなかった。君は自分の力で、君が切に望んだ、『諦めないヒーロー』になったのだ。彼女に背中を押された事により、君は『絶望を数えるだけの弱い自分』を殺せた」
――非常に興味深い。
小さく、そう呟いてから、
「だから、私は、与えようと思う。本当の、最後のチャンスを」
「……チャンス……何を……」
「君が望み、創造したダンジョンを見て、私にも創作意欲というものが沸いた。『聖堂雅』と『彼女の支えによって成長した君の存在』は、私の核に希望を植え付けた。……だから、創造した。そして、たっぷりの期待をこめて、そこにおいてきた。『安っぽい皮肉』などではない『本当の答え』を」
「どういうことだ。わけがわからんのだが――」
「具体的に言おう。『本物』の『真理の迷宮』を創ってみた。そして、全ての絶望を殺せる可能性を、その最奥においてきた」




