11話 ヒーローになるってことは……
11話 ヒーローになるってことは……
「何もかもを終わらせてやる。そして……始めるんだ」
体の三倍はある超巨大な大口径のビームライフル。
地面に固定されているがレティクルは自由。
――それを見た才藤は、
「終わらせる必要なんかないのさ♪ ぼくちゃん達なら変えられるからね♪ なんせ、ぼくちゃんたちはヒーローなんだから♪」
「私よりバカで弱いくせに、なにハシャいでんだ。私にも勝てないカスの助力なんかいらねぇよ、ばぁああか!!」
「じゃあ、見せてあげちゃう♪ 死神にして英雄である『ぼくちゃん』の底力♪ いでよぉ♪ リミットブレイクウェポン、トゥルーヒーロー♪」
宣言の直後、例の叫びが世界を包みこむ。
彼の右腕に顕現する巨大なビームライフル。
互いに、巨大な銃器を向け合っている異質な状況。
「もうほんと邪魔だから、全員、死んでろぉおお!!」
酒神は叫びながら、
トリガーに手をかけ、
「パーフェクトヒーロォオオ!! ウェポンズフリィイ!! コード、マキシマム! ――ブラストオフ!!」
「トゥルーヒーロー♪ ウェポンズフリー。コード、マキシマム。――ブラストオフ♪」
音声入力式超高威力ライフル。
使用すると全身のシステムが長時間オーバーヒートしてしまうという、とんでもないデメリットがあるものの、威力は間違いなく最強の究極兵器リミットブレイクウェポン。
命令を受けて、パーフェクトヒーローとトゥルーヒーローの砲身が輝きだす。
悲鳴のような駆動音。
エネルギーが一点に収束していく。
極限まで高められた『暴力』が解放される。
そして、高密度のエネルギー砲が、ぶつかりあう。
豪速を更に加速させて、次元の断層を擦り減らす。
限界を超えた加速が世界をわななかせる。
空間を覆い尽くすほどの巨大で凶悪なエネルギーが収束する。
そして、いつしか、
――パァッンッ!!
と、高圧縮されたエネルギーは、乾いた破裂音と共に、
完全に消え去ってしまった。
世界が晴れると、そこには、崩れ落ちている満身創痍の二人。
才藤と終理の体からはプスプスと黒煙が漏れ出ており、
どちらも両膝をついて、放心していた。
終理は、なんとか口を開く。
全身が鋭い痛みで包まれていて、
まったく動けそうにはないが、
喋る事は何とか可能。
「ぐふぅっ……ああ、ウゼェ……ガキがぁ」
ボソっと、そう言ってから、
「簡単に言うんじゃねぇ。ヒーローになるって事は、他人の絶望を背負うってことだ。私は見てきた。何人も、何万人も! 何億人も! 犯されている者! 虐げられている者! 貧困を加速させるクズ共の宴を! 正義を掲げて弱者を蹂躙する惨劇を! この世界は地獄だった!」
空間を切り裂くような悲鳴がワンワンと響く。
「一から創り変えるんだよ! 何もかもを無かったことにするんだ! 道端でウジムシに食われながら死んだ赤子なんて存在しなかった! 死ぬまで犯されて捨てられた少女なんていなかった! クソみたいな獣欲を満たすために、身ごもった女性の腹部に刃物をつきたてて惨殺したクズなんざ産まれてさえいない! 無限の欲に支配され、この世を地獄に仕立て上げたブタ共など、ただの悪い夢!」
酒神は叫ぶ。
叫び続ける。
「事実を殺してやる! ヒーローなんかいらない! 『そんなものは必要ない世界』に変えてやる! 他人を思いやれる本物の善人しかいない世界にしてやる! 誰も飢えず! 誰も虐げられない! 誰もが輝く明日を想える完璧な世界に変えてやる! こんなクソだらけの世界など消してやる! その邪魔を! する理由が! どこにある! 才藤零児ぃいいい!!」
「全面的に賛成だ……」
もう暴力は必要ない。
だから、『聖なる死神』としてではなく、
ただの才藤零児として答える。
「創ろう。俺とあんたなら出来る。この世界をベースにして、正しい世界に改変するんだ。……俺が……この俺が証明してやる!」
命に気合を入れて、
『本気の対話』を求めて、
情動の迷路をさまよう。
「ただの村人でも、イカれたパラノイアでも、腐ったサイコパスでも――望めばヒーローになれるんだってことを! 一人一人が、変われるって事を! 俺が必ず証明してやる! 何一つとして諦める必要はないんだ! 失わなくていいんだ! 俺たちは、この、愛する者がいる世界を継続させられるんだ!」




