3話 べろべろ、ばあ。
3話 べろべろ、ばあ。
「あ、ところで、聞きたかったんでちゅけど、セイバーリッチって、倒したら何をドロップするんでちゅか?」
「ぁあ? なんだよ、急に……まあいいけど……セイバーは超級のレアアイテムを落とすけど、あいつはシャドーだから、ドロップアイテムのランクは一段落ちる。今回は『宝くじの護符』っていうクソアイテムだった。本物のセイバーなら、こんなゴミは落とさない」
「ああ、アレでちゅか。確か、使用すると、何かのアイテムに変わるっていう」
「SS以上とかに限定しておけば、まだ使えたんだが、全てのアイテムの中からランダムって設定だから、ゴミアイテムになる可能性の方がはるかに高い。俺、無駄にアイテムをたくさん創っていて、その九割以上がC級以下のクソアイテムだから、宝くじの護符は、マジでゴミなんだよなぁ」
と、そこで、遅れて登校してきた聖堂と出くわした。
『酒神終理と並んで歩いている才藤』を見た瞬間、
露骨にイラっとした顔をした彼女に、
「あ、聖堂たんも一緒に来てくだちゃい。見せたいものがあるんでちゅよ」
「は? 何を……って、ん? おい、零児、その頬、どうした? なぜ腫れている?」
終理の発言に対して一瞬だけ困惑した顔をしたが、
目ざとく、才藤の頬が赤くなっているのを見つけ、
「今朝、電柱にぶつかった」
「誰に殴られた? ……風見あたりか? おそらく、地下迷宮研究会に入った事を嫉妬されたのだな? ……あのゲロカス野郎ぉ……」
聖堂の顔が、グググっと、無表情から剣呑な般若へと変わっていく。
「……なんで、そんな詳細まで分かるんだよ。なに、お前、もしかして、俺の事ばっかり考えて生きてんの? ほんと、キモい女だな……って、待て待て」
才藤は、
『いざ報復せん』と言わんばかりの勢いで教室に向かおうとする聖堂の腕を掴む。
聖堂は凍てつく瞳を才藤に向けて、
「私に触るな。放せ、クズ」
「もういいから、やめとけ。つぅか、あれ以上やったらマジで死ぬ」
「は? どういう……殴られたくらいで、貴様が手を出す訳――」
そこで、聖堂は、酒神に視線を向けた。
ニタァっと笑っている酒神の表情で、
『全て』を察したらしく、
「……ふん」
般若になっていた表情を戻して、
酒神の方に体を向け、
「見せたいものがある……だったか? なんだ?」
「とりあえず、部室に行きまちょう。ほかの人たちにも集まってもらっていまちゅから。ちなみに、見せたいものは迷宮内部にあるんでちゅよ」
★
「――という訳で、やってきまちた。地下8階ぃ! ドンドンパフパフぅ!」
部室につくと、
そのまま、流れるように、
全員を引きずりこむように、
迷宮へと突入した酒神終理。
――銃崎が、
「おい、こら、バカ」
「誰か呼ばれていまちゅよ。バカ……ということは、レイたんあたりでちゅか?」
「1ミリも否定はできないが、今、銃崎に呼ばれてんのは、あんただよ」
「え、でも、オイちゃんはバカじゃないでちゅよ? 対極と言ってもいい、超天才のスーパーヒーローでちゅよ? なんせ、オイちゃん、幼児の時からこの世界を守ってきたミスターZその人でちゅからねぇ。えっへん」
「うるさい。いいから、さっさと見せたいものとやらを見せろ。アホの君と違って、私はヒマじゃないんだ」
「オイちゃんだってヒマじゃないでちゅ。世界を創り変えないといけないでちゅちぃ、運命を弄ばないといけないでちゅちぃ、時空の超越とかもしないといけないでちゅちぃ」
「いい加減にしろ、酒神!」
ふいに立ちどまり、そう叫んだ銃崎の声には、
本気の怒りが込められていた。
「ありゃりゃ、どうちたんでちゅか、銃崎たん。そんなにイライラちて。カルシウムが足りないんじゃないでちゅか?」
「いつまで見下すつもりだ。私は、こうして、辿り着いただろうが。この最下層、地下8階に辿り着いた。ほぼ才藤のおかげだが、しかし、事実として、私は今、真理の迷宮の最下層に立っている。つまりは、私だって超人という事だ。私――銃崎美砂は、君の隣に立てる超人なんだ。バカにするのは、見下すのは……赤子扱いするのは、もうやめろ!」
終理の超越的な才能に焦がれ、
その輝きに圧倒されていたのは華日だけではない。
関わった者は例外なく、
酒神終理の輝きに掻き消される『影』になり下がってしまう。
「酒神終理。君は確かに、私よりも格上の超人だ。だが、ここまでたどり着いた私のことを、少しは認めてくれてもいいのではないのか?!」
「まあ、まあ、落ち着いてくだちゃい。ほら、べろべろばぁ」
「やめろ! 私は何もできない赤ん坊じゃない!」
幼児語は、赤子が使う言葉じゃない。
――赤ん坊に対して使う言語。




