2話 やりすぎの信念。
2話 やりすぎの信念。
全員が一瞬、ビクっとした。
才藤は構わずに続ける。
「テメェごときが、海星中学に通っていた超天才の俺様に同情? ざっけんじゃねぇ! 死ねぇ! そこの『死んだ方がいいブス』以外の連中も、よく聞け。『その他大勢』に属するモブのゴミども。てめぇらみたいな、『残念な劣等種』は『この上なく優れた俺』に、ただただ嫉妬していればいいんだ! その結果として、俺は、優越感に浸りつくす! この糞クラスは、そのサイクルのためだけに存在している! 分かったか、非生産的な低能共!」
その発言を受けて、比較的マトモに分類される連中も、
「なに、あの態度……」
「サイテー」
「風見くん、がんばれ。もっとやっちゃえ」
ボソボソと、あちこちから、才藤を侮蔑する発言が聞こえてくる。
そこで、風見は、山村の事など意識から外して、
ワナにかかった動物を見るような、
とびっきり楽しそうな顔で才藤をロックオンした。
そんな風見の視線に、
ついぞ、どこ吹く風の才藤は、
(これで、もう、余計な口出しをしてくるヤツはいねぇだろ)
心の中でそう呟きながら、
ホっとした表情を浮かべた。
――背中に追い風を感じた風見は、
ノリノリで、才藤の胸倉をつかみ、
「おい、お前、本当、いい加減にしろよ。クラスの輪を壊すのは楽しいのか? 他人を傷つけるのは楽しいのか? 人を見下すのは……楽しいのか? ふざけんなよ」
そう言うと、風見は、才藤の頬をガツンと殴りつけた。
女子連中が少しだけ悲鳴をあげたが、
すぐに、『風見、よくやった』という空気になった。
風見は、この熱気の中における絶対的な主役になったのを肌で感じて高揚していた。
二発目をどうしようか考えている顔。
――その時、
「レイたん、いまちゅかぁ」
クラス内に、巨乳ギャルが入ってきた。
おかしなノリと口調のギャルは、
謎のステップを踏みながら才藤に近づいてきて、
「ちょっと見せたいものがあるんで、ついてきてもらっていいでちゅか?」
「……状況を見てモノを言おうか」
才藤がそうツッコんだ直後、
ついポカンとしていた風見が、
反射的に才藤の胸倉から手を放し、
「あ、あんた、酒神の姉貴……ぃ、いったい、何しに――」
「しゃべるな、臭い」
そう言い捨てると同時に、
風見の顔面ど真ん中に、
ガツンッッと裏拳を決めた。
凶悪な暴力を受けて、
マンガのように吹っ飛び、
ドカンッ!
と、壁に激突する風見。
「ぅ……ぅぅ……」
鼻が完全に砕け、口から血を垂れ流し、
グタっとして呻いている風見に、
全員の視線が集まる。
あまりにも凄惨な光景に、悲鳴をあげる者すらいない。
誰もが茫然としていて、クラス内はシーンとしている。
「さあ、行きまちょう」
「……流石にやりすぎだぞ。一般人を、魔力込めた拳で殴るとか、絶対やめとけ」
「そうでちゅね。昨日のミスの件でイライラしていたから、つい八つ当たりをしちゃいまちた。今は反省していまちゅ」
そう言いながら、酒神終理は、風見のもとに近づいていき、
仰向けで倒れている風見の腹部を思いっきり踏みつけた。
「がはっ! ごほっ、おぇっ」
腹を抱えて、血を吐きながら苦しんでいる風見に、
ペっとツバをはいて、
「じゃあ、行きまちょう」
クラスを出ていく彼女の後を追いながら、
才藤は、
「まったく反省してねぇじゃねぇか。追撃して、ツバまで吐くとか、完全にやりすぎだ」
「オイちゃんクラスの超美少女に踏んでもらえて、かつ、ツバまで吐いてもらえるなんて、彼らの業界では完全にご褒美でちゅよ。悪い事したなぁと思ったから、グラム単価にして兆を超えるオイちゃんの唾液を、彼にプレゼントしてあげたんでちゅ。ほんと、オイちゃんって女神でちゅよねぇ。ただの女神ではなく、超女神。いやいや、もっと上の究極超女神ってところでちゅかね。究極超女神に踏んでもらえた彼の幸福度は天上MAX。すでに人生の運は全て使い切ったと言っても過言ではありまちぇん。……ま、そんな事より、昨日の件でちゅ。流石でちゅね、レイたん。きっと生きて帰ってくると信じていまちた」
「……そんな事って……これ、結構な大事件だぞ。言い訳のしようがない暴行傷害罪だ」
「問題ありまちぇん。オイちゃんがその気になれば、仮に、5~60人ほどウッカリで殺しちゃったとしても、簡単に無かった事にできまちゅから」
「世界を守ってきた救世主様の発言じゃねぇなぁ」




