54話 お前は誰だ?
54話 お前は誰だ?
「たかがコスト2000の剣翼を手に入れたからと言って、あまり調子に乗るな。私は聖なる死神セイバーリッチ。異形の頂点。駆っている剣翼のコストは最高位の7000」
「ああ、知ってるよ。お前が影だってことも含め、何もかも、お前よりも遥かになぁ」
[何? どういう意味だ?]
「こういう意味だよ」
そう言うと同時に、才藤は、
高出力のレーザーブレードを右手に転送させて切りかかる。
単調な攻撃。
セイバーからすれば、余裕で対処可能。
[極まって愚か]
緊急回避で右に飛び、
レーザーライフルで迎撃しようとした。
――が、
「お前が、な」
回避した直後の硬直。
それに合わせて、才藤は、
視線を明後日の方に向けたノールック状態のままで、
左手に転送させたフルゼタの引き金を引いた。
[――くぉおお!!]
思いっきりゲロビをくらい、
セイバーは無様に吹っ飛んだ。
[ちぃっ! ゴミがぁ!]
即座に起き上がり、
両手にマシンガンを転送させ、
その二つの銃口を才藤に合わせる。
[死ねぇ!!]
弾丸を連射する。
――が、そのすべての弾丸が、
才藤に当たる直前、
彼の目の前に展開されている青い壁に反射して、
[ぬぁあああああ!!]
数十発の実弾が、
すべてセイバーに返ってくる。
[Mフィールドの事前展開だと……なぜ、そんな事が……]
ビームの被ダメが上がってしまう代わりに、実弾を跳ね返すMフィールド。
展開に時間がかかるので、見てから展開する事は叶わず、
事前に展開してビーム兵器がくると軽く死んでしまうという、
非常にギャンブル要素の強い、カウンター技。
――その後も、
セイバーリッチが繰り出す全ての攻撃に、
才藤は完璧に対処する。
[ぐぬぅう! ど、どういうことだ……なぜこんな事に……ありえない!]
(セイバーリッチ・シャドーの戦闘AIは強襲型A2。思考パターンのメソッドは生存重視の速攻。同格以上の力を持つ者に対しては慎重になり、体力が八十パーセント以上残っている時は緊急回避を主軸とする。そして、体力が十パーセントを切ると……)
[もう遊びは終わりだ! 貴様に、不可避の絶死――聖なる死を与える!]
そう叫ぶと、セイバーリッチは、右手を天に掲げた。
[我が手に! トゥルーデス!!]
見てみると、その手からはキラキラと輝く煙が出ていた。
キュィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!
金属が高速回転しているような音が響いた。
その直後――
ガチャガチャガチャッッ!!
右手に、死を模したような巨大な銃が現れた。
漆黒の銃身が脈打つ狂気。
セイバーは、その凶悪な銃口を才藤に向けて、
[見るがいい。これこそが、聖なる絶望! リミットブレイクウェポン。トゥルーデス!]
体の三倍はある大口径のビームライフル。
あまりにも巨大すぎて持つ事は叶わず、
地面に固定させて使うため、
銃というよりは砲台。
圧倒的な超巨大兵器。
[究極の力を見せてやろう! 抗えぬ終焉! さあ、聖なる死の喝采を聞けぇえええええ! トゥルーデス。ウェポンズフリー。コード、マキシマム。――ブラストオフ!!]
音声入力式超高威力諸刃の剣型ライフル。
使用すると、長時間の冷却を必要とするオーバーヒート状態になってしまう代わりに、究極の火力を体現できるという、この世界に設定した『力』の中でも最高峰の兵器――リミットブレイクウェポン。
セイバーリッチの命令を受けて、超兵器トゥルーデスの砲身が輝きだす。
悲鳴のような駆動音。エネルギーが一点に収束していく。
極限まで高められた『暴力』が解放される。
高密度のエネルギー砲が、才藤を襲った。
――しかし!!
[……なっ……どういう……無傷だとぉおおおお?! ……なぜだぁああああ?!]
「さっきサヴァーテがドロップした『守護天使の護符』を使った……それだけだ。つまりは単なる予定調和。そんなに驚くような事じゃねぇ」
宣言の後、心の中で、
(もともと、守護天使の護符は、ほぼ確定で死んでしまうリミットブレイクウェポンに対する防御策として設定したアイテムだからな)
無傷の才藤と違い、セイバーはボロボロだった。
リミットブレイクウェポンを使った反動で極度のオーバーヒート状態に陥り、その場で膝をついて、明らかに異常をきたしていると思われる黒煙をモクモクと焚いている。
[なぜ、私がこんな簡単に……まるで赤子扱い……いったい、貴様は何者だ……]
「今までの流れを見ていれば分かるだろ」
そう言いながら、
才藤は、ビームマグナムの銃口をセイバーの額に押しつけて一言。
「ちょいと厄介な彼女がいるだけの、どこにでもいる、『普通』の男子高校生だよ」




