49話 酒神終理の本音。
49話 酒神終理の本音。
通信を切った後、
酒神は、ニタっと笑って、
「オイちゃんがそんなミスする訳ないじゃないでちゅか」
ボソっと、
「黙っていまちたけど、実は、オイちゃんの元にも来たんでちゅよ、あの女神みたいな超絶美人。ふふ……女神に選ばれたオイちゃんなら、一人でも、世界の設計くらいできまちゅ。ただ、問題なのは『世界改変の最終決定権』を持っているのは『真理の迷宮の設計者だけ』って事でちゅ。『レイたんだけの特権』である『改変能力』をオイちゃんに移すため、レイたんには、一足早く、この世界から退場してもらいまちゅ」
そこで、酒神は、空中に、
複数のエアウィンドウを出現させる。
『慣れた』手つきで、
いくつかのシステムを弄りつつ、
ニコォっと微笑み、天を仰いで、
「やっと……ようやく、アホとカスしかいない、このクソ退屈な世界をぶっ壊せる。何もかも全部なかったことにして、あたしのすべてを満たす完璧な世界に変えてやる」
★
――セイバーリッチ・シャドーは圧倒的だった。
止まらない爆発と雷鳴。
交差する魔力の線と点。
探究者たちは、みな、自身が放てる最強の技を、
これでもかとセイバーに叩きこむ。
全力で魔力を練り上げ凝縮させ炸裂させる。
だが、通じない。
――セイバーは、つまらなそうに、ため息をつき、
[退屈だな]
一言そう言って、大剣を、ゆっくりと薙いだ。
その瞬間、衝撃波が起きて、探究者たちに襲いかかる。
凶悪なダメージにより、生命力バリアが一気に削られた。
あんまりな状況に、銃崎が、泣きそうな顔で、
「ちょ、ちょっと待て……これはないだろう……強さの次元が違うじゃないか」
「……勝てるわけがありませんわね」
「こんなの、チートだよ。つか、酷くない? 何? もしかして、強制負けイベント?」
[……貴様らで遊ぶのも飽きた。そろそろ終わりにしよう。さあ、聖なる絶望を数えろ]
余裕たっぷりのセイバーと、
ボロボロになって愚痴っている先輩達を見て、
才藤は、
(どうする……どうする……このままだと全員死ぬ。だが、逃げられない。どうにかして、セイバーを殺さないと。でも、どうやって? ステ差がありすぎて、まともにやっても勝てる訳ねぇ。……『勝てる可能性』は二つほどある……けど、一方は『流石に屁理屈すぎて通らない』だろうし、もう一方は『単純に成功確率が低すぎる』……くそがぁ……どうする、どうすれば――)
と、絶望を数えているばかりだった才藤の肩に、
聖堂が、ポンと手を置いて、
「落ち着け」
凛とした声で、
「こんなところで、貴様は死なない」
顔を向けると、
聖堂は、いつも通りの、
問答無用な無表情のまま、
「貴様を殺すのは私だ。私に殺される運命の日まで、貴様は死なない」
いつものセリフを言った。
その瞬間、
スゥっと、頭の中がクリアになった。
そして、頭の中が、プクプクと泡立つ。
才藤は、思わず、左肩に置かれた聖堂の手に、自分の右手を重ねた。
二秒だけ目を閉じて、
ゆっくり開くと、
「俺に触んな、パラノイア。頭のおかしさがうつったらどうする」
「心配するな。貴様は生まれる前からラリっている」
「そうか……なら、もういっそ、精子の時からイカれているファンタスティポなサイコパスらしく、限界を超えて、とことんの果てまで行ってみようか」
グっと奥歯をかみしめると、
(どれだけ甘く見積もっても、成功率は、せいぜい15%……死ぬほど運が悪い俺にとっては、絶望的な数字だ。失敗する未来しか見えねぇ。……けど……やるしかねぇ! 絶対に死なせねぇ!)
スゥウと息を吸って、
「総員!! 俺の指揮下に入れぇええ!!」
喉がちぎれるほど叫んだ。
その場にいた全員の視線が才藤に集まる。
「今からてめぇらは、俺の手足! 俺が死ねと言ったら死ね! いいなぁ!」
「……アホか」
銃崎が、虫を見る目でボソっとそう言った。
「君の愚劣さに付き合ってやれる余裕がない事くらい、状況を見て気づ――」
「セイバーリッチ・シャドーを覆っているナイトメア・バリア(弱)の耐久値は物理攻撃減少80%の63000000! てめぇらの火力じゃあ、削りきるのに39時間20分はかかる! それだけの時間があれば、ヤツは、俺らを520回ほど全滅させる事ができる! まともにやっていても死ぬだけだ! だが、俺の指揮下に入れば、生きてココから出られる! 絶対にだ!!」
「「「……」」」
「銃崎! 確か、ドラゴンフィールドが使えたな! パラディンのスキルもフル投入し、全力展開でタンクに徹しろ! 攻撃はしなくていい! 龍属性の物理しかないお前では火力として使えん! 聖堂! ダークブレイクをかけ続けろ! ヤツは、あの見た目だが、実はダーク系の完全耐性を持っていない! 羽金! 銃崎のドラゴンフィールドの防御力を信じて、カミカゼをブッパし続けろ! 確率は低いが、通れば、数秒だがスタンさせられる! 怪津! サイレントウォーカーをAGI値全フリで三体召喚して羽金の支援につかせろ! 血液不足で動けなくなるだろうから、銃崎の背後で行え!」




