47話 誰が何人死んでもいいから、とにかく、俺だけは助かりますように!
47話 誰が何人死んでもいいから、とにかく、俺だけは助かりますように!
(以心伝心の護符は、次元ロックの干渉も受けないから、酒神とは、いつでも連絡を取れる。手筈通り、乱数が調整されれば、サヴァーテなんか余裕)
才藤が、心の中で呟きながら、
そそくさと戦線から離脱した直後、
[さて、それでは始めましょうか。これまでのじゃれあいとは一味違う。どちらかが死ぬまで終わらない――そんな、本当の死闘を]
「……こうなったら、仕方がない。総員、戦闘準備!」
銃崎の号令で、才藤以外の全員が武器を構えた。
――そんな緊迫した雰囲気の中、
才藤だけは、隅の方で縮こまって、胸の前で両手を組み、
「俺は祈る! 誰が何人死んでもいいから、とにかく、俺だけは助かりますように!」
と、何度も叫んでいた。
村人固有スキル『天に祈る』の連続発動!!
才藤の発言に、銃崎が、心底イラっとした表情を向けたが、それも一瞬の話。
すぐに、才藤零児などという『真正のカス』は意識の外に放り捨て、
「サヴァーテさえ倒せば、最下層にいける。辿り着ける。本物になれる。あのアホの隣に立てる。並ぶ事ができる。必ず、あのアホに――酒神終理に、『銃崎美砂』という女を認めさせてやる!!」
銃崎は、即座に召喚した突撃用のマッハドラゴンに騎乗し、両手に魔法陣を展開させる。
銃崎の体を包み込む、二つのジオメトリ。
「《エンシェント/ドラグーン・ランクA》」
一時的にスキル火力を60%上昇させるスキルを発動し、更に、
「《覇王龍の一閃・ランクA+》」
最大火力のスキルを発動。
龍槍の矛先。
一点に収束していく。
空間が震えるほどのオーラ。
――銃崎を乗せた龍は、
「ライジング!!」
命令に従い、一瞬で空高く舞い上がり、
上空二十メートル付近でピタっと止まる。
銃崎は、スゥっと息を吸い、
そして叫んだ。
「ブリィィィイイッツッッ!!」
命じると、龍は、放たれた弾丸のように、
音速で、サヴァーテへと襲いかかる。
高速落下で火力を増幅させた全霊の一撃が、
サヴァーテの防御障壁に直撃!!
激しく、粉塵が舞う!
[相変わらず、素晴らしい火力ですね。自慢のバリアが五分の一も削られてしまいました]
「余裕をこいていられるのも今のうちだぞ! 今日こそは狩ってやる!」
その激闘を安全地帯で見ていた才藤は、
(カスみたいな戦い方だなぁ……リーダーなら、ちゃんと指示をだせよ。なに、一人で突っ込んでんだ。てか、自己紹介の時に、銃崎が言っていた『大きな目標』って『酒神終理に認めてもらうこと』かよ。はっ――っ、しょーもなぁ! ようするには、酒神華日と、ほとんど同じコンプレックスに支配されているバカってことじゃねぇか! どいつもこいつも酒神終理に振り回されすぎだろ。ほんと、キモい集団だなぁ。……でも、まあ……何よりキモいのは、この俺が一番振り回されているって点か……あー、情けねぇ……はぁ)
★
――結果、楽勝だった。
こちら側だけクリティカルが頻発し、
向こうはミスを連発。
(はい、絵に描いたような茶番、ゴクロー様っと。つぅか、酒神(終理)、露骨にやりすぎだ。俺らはTASさんじゃねぇっつぅの。まあ、誰も気づいていないっぽいから、別にいいけど)
才藤がアクビをしながら、
心の中でそうつぶやいた直後、
[素晴らしい戦いでした。本当にお見事です]
ボロボロで地に伏しているサヴァーテを見下ろして、
銃崎は、
「非常に感慨深い。いつしか、君を倒す事が、私の夢になっていた。君との戦いは胸が震えた。まだラスボスが残っているが、しかし、今の私は、とても清々しい気持ちでいる。まだ終わりではないが……しかし、私は、また一歩、『究極の英雄』に近づけた」
胸に右手をあてて、
心底から感動している銃崎の向こうで、
才藤は、
(クソみたいにズルい勝ち方をしただけだから、半歩も近づけてねぇと思うが……まあ、いいや。とりあえず、これにて、第一関門は突破っと。あとは、酒神終理と合流して、世界改変を手伝う。……ようするに、こっからが本番だ。さてさて)
呑気にそんな事を考えていると、
(……ん?)
サヴァーテの体が、まるで、地に落ちた雪の結晶ように、
キラキラと崩れていき、謎の光を放つ粒子へと変わっていく。
その時、『緑色に輝いている護符』がドロップしたが、
誰もそんな事は気に留めなかった。
そんな事を気にしていられる余裕はなかった。
細かい粒子が美しく配置され、地面に奇怪な魔法陣を形成していく。
『サヴァーテの消滅を確認。第一級迎撃プログラム起動。《聖なる死神》のストラトスジオメトリ、生成終了。顕現せよ』
どこからか声が響き渡った。
そして、宣言される。
『 さあ、聖なる死の喝采を聞け 』




