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28話 攻略法の糸口。


 28話 攻略法の糸口。


「暴言を取り消すというセリフを、よりクリティカルな暴言で包んで投げつけられる日がくるとは、流石の俺も、一度として想定したことがなかったな。斬新な経験をありがとう。ところで一ついい? なぜか『強固な前提』として大事に取り扱われている『お前が俺を探すのに苦労した』という言い分だけれど、あまりにも俺サイドに落ち度がなさすぎ――」


「ペチャクチャうるさいわね。あんたの意見なんて聞いていないという事くらい分かるでしょ。ほんと、落ち度しかない男ね。反省しなさい」


「……お前の言う通りだ。こんな事態に備えて、『全損している大脳をも修復できる優秀な脳外科医』を前持って調べておかなかった俺にしか、根本的な落ち度はない。全面的に謝罪しよう。反省はしている」


「最後に一つ聞いていいかしら。ゴーレムと闘った時の事なんだけど」


(……こいつ、マジか。俺のファントムトークを、ことごとくシカトとか、どんな耳、いや、どんな神経してんだ? どうやったら、そこまで唯我独尊なファンタジスタ・コミュニケーションを炸裂させられるんだ? 五人抜きどころじゃない、次元が違う置き去りのされ方に、俺のイデアが、あらゆる思考を放棄しかけていやがる。なるほど、これが、イデオロギー批判ってやつか。確かに、魂が震えていやがる。とんだハプニング。そこまでして、俺を『哲学的な無』にしたいのなら、最初から意識の外に置いてくれればいいのに)




「――あんた、本当に、ゴーレムの動きが分かっていたの?」




「もう、話の矛先が爆裂しすぎて、脳の処理が追い付かねぇよ。意味のない哲学用語を必死に無双乱舞させてんのに心が安定しないなんて、この現状が初めてなんだぞ。俺の自律神経をかどわかすのも、その辺にしてくれませんかね。ただでさえ、俺の中枢は常に虚空を彷徨って――」


「さっさと答えなさいよ。あたしは、ヒマじゃないの」


「園児が組んだAIでも、たぶん、もう少しマシな会話してくれるぞ。チューリングも真っ青だ。おまえが交信相手だったら、実験が成立しない」


 ドン引きしながらも、

 才藤は『仕方ない』という顔で、

 ――深くため息をついてから、


「答えたところで、どうせ聞きゃしないくせに……えっと、確か、ゴーレムの動きがうんたらかんたら、とか言ってたっけ? なんやねん、それ」


「あの土人形は、動いている者と、体力の多い者を狙っていた。それが分かった上で、あの行動をとったのかと聞いているのよ、ゲロ野郎」


「俺を傷つける行為を呼吸と勘違いしていないか、お前」


 摩耗してきた可哀そうな精神を抱えて、


(んー、しかし、なんで、そんな結論に? ああ、そういえば、こいつ、聖堂に絡んでいたな。それ経由でか。なるほど、なるほど。うーむ……)


「で、どうなの?」


(この問題は、重要な指針になりそうだな。『あの行動』は、製作者としての『明確な知識』をもとに、『利を求めての行動』だった、が、しかし、ゲロは吐かなかった。つまり、直接的ではない迂遠なサポートはOKということ……ならば)


「ちょっと? 聞いているのだけれど。どれだけ、あたしの時間を奪えば気が――」


「あの訳わからん土人形に、どんな言動プログラミングが施されているかなんざ、『絶賛はじめまして』で解る訳ないだろ。おまえの脳髄、奇抜に歪みすぎ」


 そこで才藤はポンと手を打ち、


「つか、なるほど。あのとき、あの土くれが俺を攻撃してきたのは、そういう理由があったからか。そうと知ってりゃ、お前も聖堂も、まとめて確実に抹殺できたのに。残念無念」


 才藤の言葉に、華日は眉をひそめた。

 滅多に見せない表情。

 奥歯を噛締めている。



 華日は決して『愚かな人間』ではない。

 『前提』を組み合わせれば、

 解答に近づく事ができる。


 ――だから、



(ひねくれていて、常に『偽悪』的であろうとする。こいつ、キモい。本当に気色が悪い)



 心がザワザワする。

 気持ち悪さの向こうにある感情。


 その『正体』に、


(まさか、この男に、最初から抱いていた『嫌悪感』の正体は……)


 華日の思考は、ついに、届いてしまう。



(こいつの、この『訳わかんない思想の奇怪さ』……それが、方向性の違いはあれど、しかし、ほんの少しだけ、姉様に似ているから?)



 トリッキーをグツグツと煮詰めて、

 炭火でジンワリと炒めたような異物感。


(いや、まさか、それ以上に……あたし自身に……くっ、嫌な推測だわ。吐き気がする)


 美しくない。

 あまりにも。



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