第99話 「無力過ぎて、涙が出ますわ」
──バリバリバリッ!!
準備運動の為、とりあえずその辺りのヘルニア兵を次々に、のしていくラミス姫様。
……ごすごす。
「ひ、ひぃ。」
ラミスのあまりの強さに、その速さに怯え逃げ出すヘルニア兵達。
…………。
ラミスはまた、ふと体の違和感に気が付く。
……?
また、少し体が軽く感じるのだ。思った以上に蹴りにキレがある感じがしないでもない。
「そう言えば、前にもこんな事がありましたわねぇ。」
しかし、それは微々たる物で。ただの気のせいかも知れない。ラミスはあまり気にしない事にした。
──ドゴォ!!
姫様の華麗な蹴りで、吹き飛ぶヘルニア兵士達。
「……ふぅ。」
ヘルニア兵を全て片付け、奴の居るであろう方向をきっと睨むラミス。
…………。
そして、覚悟を決め奴に会いに行く姫様。庭の奥の方に、奴は居た。
……百。いや二百は居るだろう。豚の群れの中に、一際目立つ巨大な怪物豚王。
…………。
ラミスは見ておきたかった。例え勝てないと分かっていても、いずれ倒すべき敵の強さを。
ラミスはもう一度、見ておきたかった。
…………。
……ぐったり。
そして、何時もの様に天井を眺める姫様。
「強いですわね。」
…………。
強すぎる。やはり今のままでは、どう足掻いても奴を倒すのは不可能だろう。
ここは、やはり。クリストフ将軍の進言通り、ホースデール王国の援軍を待つべきなのだろう。
他に何か、手は無いだろうか?何か、他に出来る事は……。
分からない事と言えば、姉ナコッタとミルフィーの神々の力である。
ラミスは牢の中の地べたで、大の字に寝転がりながら。もう一度、自分や姉達の神々の力の事を考え、整理してみる。
長女リン、猛将の力。
その力は申し分無い。強さは明らかに、姉妹四人の中で最強と言えるだろう。姉リンの神々の力については、今の所不明な点は無い。
次女ナコッタ、法術の力。
いまいち、この力の事はあまりよく分かってはいない。人、一人を見えなくし隠す力なのだが。書物によると、仲間を助けるとある。……他にもまだ、何か隠された力があるのでは無いだろうか?
三女ラミス、蘇生の力。
例え死んでも、時間が巻き戻り黄泉返る事が出来る。大変有り難いのではあるが。出来れば、もう少し戦闘の役に立つ力の方が良かった気もする。
……そういえば、私の顔の傷が治ったとグレミオが驚いていた。私は全く気に留めなかったが、もしかすると蘇生以外の力もあるのかも知れない。
末女ミルフィー、幻術の力。
ミルフィーは一度、風の様な攻撃の魔法を使っていたのだ。しかし、次に会った時には使えなかったのだ。これは、一体どういう事なのだろうか?書物には一応、その様な記載がされていたのだ。まだ、ミルフィーには隠された力があるに違いない。
ミルフィーは、一度使えていた筈の魔法を使う事が出来なかった。そして、ミルフィーは複数の力を使えると言う事である。
私含め、姉リン、ナコッタも同様。複数の力が使えても何らおかしい事は無い。
…………。
やはり、もう一度。四人で色々話し合い、力を調べるべきだろう。
「もう一度、お姉様達と合流しますわよ。」




