第95話 「さあ、優雅〈エレガント〉に参りますわ」
そんなわいわいやっている中、またラミス達に良い知らせが舞い込んで来る。
「姫様ー!援軍でございます。ツインデール公国を奪還する為の援軍が、ホースデール王国より到着致しました!」
……援軍。
「かっ、数はどのくらいですのっ?」
援軍が……。これで、これでやっとヘルニア帝国に勝てる。……そして、遂に城を。ツインデール公国を取り戻せる日が来たのだ。
「ホースデール王国より送られた、援軍の数は五千。そして二日後には、レティシア将軍率いる二万の軍勢が到着する予定です。」
……レティシアが?
「それは楽しみですわ。……あら?でも二日後ですのね。」
「はっ!そんなの関係無いわよ。今すぐ、取り戻しに行くわよ!!」
リンお姉様はこの機を逃さんとばかりに、やる気満々のご様子だ。
「お、お姉様。」
……いやしかし、まあクリストフ将軍が居れば何とかなりそうな気もしないでもない。あの強靭な豚を一瞬で葬る、クリストフ将軍が居れば……。ラミスはちらっと、クリストフ将軍の姿を見る。
すると将軍は、すたすたと姉リンに近付き、そして跪く。
「……姫様。恐れながら申し上げます、進軍は二日後の援軍を待つのがよろしいかと。」
…………。
クリストフ将軍の意見は、かなり慎重のようである。ここは、やはり二日待つのが得策なのだろうか?
「なーに言ってんのよ。リーダーは私なのよ?私の命令に従いなさーい。」
確かに……。お父様亡き今、長女である姉リンが公国の君主であり、リーダーである。
……うーむ。
「はっ、姫様。姫様はご命令とあらば、このクリストフ。身命を賭して戦う所存であります。」
「決まりねー。よし、皆ー。行くわよー!!」
姉リンは意気揚々とツインデール城を指差し、高らかに宣言する。
「取り戻すわよ!私達の公国を!!」
「オオオオオオオオー!!」
先程の勝利もあり、高らかに沸き上がる兵士達の歓声。兵士達の士気は、これ以上無い程上がっていた。
ラミスはこの沸き上がる歓声の中、姉リンの判断が正しいのだと確信する。やはり二日後よりも今、行くべきなのだと。
鉄は熱い内に打て。この好機を生かすべく、ラミス達は進軍を開始した。
自分達の城を目の前にし、ラミスは想う。
これが最後の戦いなのだと。この戦いに勝利すれば全てが終わる。この長い長い戦いが。
……これは聖戦なのである。
この長い戦いに、終止符を打つときが来たのだ。
「皆、覚悟は出来てる?さあっ、勝ちに行くわよっ!!」
「オオオオオオオオ!!」
リンお姉様の檄に呼応し、沸き上がる兵士達。ラミスもまた、その激に乗せられ勝利を確信し突撃を始めた。
「さあ、優雅に参りますわよ!」




