第88話 「ぴょんぴょんしますわ」
「急報、急報!」
──!?
伯爵の屋敷に慌てて駆け込んでくる兵士。その声に屋敷全体が、急に慌ただしくなる。
「まさかっ、ヘルニア帝国がもう!?」
急に真剣な面持ちになるグレミオ。グレミオが報を知らせに来た兵士の元へ駆け出すのを見て、ラミスもまた走り出していた。
…………。
ラミスは昨日。伯爵の屋敷を訪ねた時、すぐにヘルニアの軍勢が攻めて来る事を、皆に伝えていた。
その為、今朝から街の人は街の北側へ、避難を始めている。
兵士達も皆、ヘルニア帝国の襲撃に備え、緊張が高まっていた。
……しかし、ラミスには分かっていた。
ラミスはすぐに街の入り口にある、門目指し走り出していた。ヘルニア帝国が攻めて来るのは今日では無い、明日なのだ。
緊張が高まる中、今兵士が見て驚く物と言えば一つしかない。
──つまり。
したたたたたたたっ。
「城門が閉まってますわ。」
当然ながら、固く閉ざされている城門に気付き。面倒なので、しゅたっと飛び上がり、城門の上へと飛び移るラミス姫様。
三回じゃんぷしたら、いけましたわ。
「んー。」
城門の上から見回すと、それはすぐに見つける事が出来た。
「……やってくれましたわね。」
ラミスはそれを確認し、微笑み安堵する。
……いや、飛び降りていた。
「ひっ、姫様ー!?」
それを見て、驚きたまげる兵士一同。
「ふふふーん、ですわー。・~・」~♪
たたたたたたっ!
「ミルフィー!」
妹の名を呼びながら、恐ろしい速さで一直線に馬車に突進する姫様。
──バリバリバリ!
余程待ちきれなかったのか、体に雷を纏い更に加速して風の様に馬車の扉を開ける。
──しゅばばばばっ。
「うふふ、ミルフィーを発見しましたわ。」
「お、おおおおお姉様!?」
「ひっ、姫様!?」
とにかく、ひしっと妹に抱きつくラミス姫。
……ひしっ。>_<
「ふふふっ。無事で、安心しましたわ……。」
「……お姉様。」
再会を喜び合う姉妹。そしてラミスは隣に座っていた、メイドに話しかける。
「感謝しますわ、ロクサーヌ。よくミルフィーを、私の元へ連れて来てくれましたわね。本当に心から感謝致しますわ。」
……ラミスの三つ目の策、それは。
ラミスは城から出る前に、ちょこっと一暴れ(いや実際は、かなりぼこぼこにしていた。)し。その隙にロクサーヌをこっそりと逃がし、ミルフィーの元へと向かってもらう事だった。
この日。ラミスは初めて、22045回目にしてようやく。姉妹四人全員との、合流に成功したのである。




