第83話 「残念ですわ」
「……貴方。どうしてお呼びしたのに、すぐに出ていらっしゃらないの?」
「……フン。」
仮にも一国の姫君の問い掛けに、フンの一言で済ます凄腕の剣士。
「まあ、失礼ですわね。」
……そして、剣士は剣を構える。
「俺が望むのは、ただ強者のみ。」
「名前を、教えて頂けますかしら?」
「……ククク。」
剣士は、姫の問いに笑い始めた。
「……?」
「貴様程度の弱者に教える名前など、このゲイオス。……持ち合わせてなどおらぬ。」
「…………。」
「…………。」
うん、よし。……一旦落ち着こうか。
剣の腕も凄いのだが……。どうやら頭の方も多少、残念な方向に凄そうな剣士である。
……そして少し、顔をしかめるラミス姫様。
──また"G"!?
「……また、Gですわ。」
G、G、G、G……またG。
Gはラミスの天敵であり、人類全ての敵でもある。……よって、殲滅せねばならない。
と言うか……。ヘルニア帝国には、こんなヤバい奴しか居ないのですか?ほんと……。
──ザッ。
「次は、俺が相手をしよう。……女、精々(せいぜい)俺を楽しませてみろ。」
何処までも失礼な人ですわ!無礼ですわ!と、プンスカ怒るラミス姫様だが……。どうやら、そんな暇は無さそうである。
……この男。どうやら頭は多少、残念な様だが実力はかなりのものである。
一瞬の油断が即、死に繋がる事をラミスは理解していた。
恐ろしい殺気を放ち、剣を構えるゲイオス。
……ラミスもまた、身構えた。
──ヒュッ。
ゲイオスの放つ剣速は、恐ろしい程の速さでラミスに襲いかかる。しかし、それを既の所で回避し距離を取るラミス。
──ぱらぱら。
ゲイオスの放つ、その高速の剣はラミスの頬をかすめ、斬られた髪がはらりと地に落ちる。
──強い。
一万回を超える死闘の内、ラミスはセルゲイを倒すのに千回もかからなかった。
……しかし、このゲイオスの高速の剣に対応するだけで、実に一万回を要したのである。
……それ程、ゲイオスの剣速には凄まじいものがあった。
神々の力を宿す、姉リンに匹敵する強さだろう。正直、姉リンとどちらが強いのか気になる所である。
「……ほう、俺の剣を回避すか。少しはやる様だな。……ククク、思ったより楽しめそうだ。」
「…………。」
……じりじりと間合いを図るラミス。確かにこの男、ゲイオスは強いのかも知れない。
だがラミスには勝算があった。……必ず勝てると言う確信が。
そうラミスは今日、ゲイオスに勝ちに来ていた。
「…………。」
奴は……。ゲイオスは鎧を着けていない。もう一度回避し、何とかゲイオスに一撃を入れる事さえ出来れば……。
──当てさえすれば勝てるのである。一瞬の隙を突く事さえ出来れば。
「……はぁ、はぁ。」
両者一歩も動かず、しばらく硬直状態となる。
──ザッ。
先に仕掛けたのは、ゲイオスだった。
──ザシュ!
ゲイオスの放つ高速の刃が、空を斬り裂き真空を走らせる。その高速の刃を避ける事が出来ず、ラミスの体は真っ二つに斬り裂かれた。
──!?
──バリバリバリッ!
ラミスの体に稲妻が走り、高速で駆け抜けるラミス。……ゲイオスが斬ったのはラミスの残像だった。
「頂きましたわ!!」
その一瞬を突き、ラミスは渾身の奥義を放つ。
──"夜叉咬み"!!




