第78話 「そーゆーとこですわ」
……ラミスは挑発する。
そう、あの凄腕の剣士。奴を倒さない限り、こちらに勝利は無いのである。
…………。
──ザッ。
段々と、近付いてくる足音。
「……それは、俺の事か?」
大剣を手に持ち、大柄な歴戦の戦士が姿を現した。
…………。
…………。
……誰?
……うん、違う。何か違う人が出て来た。ザ・人違いの為、その対応に困ってしまうラミス姫様。
「あ、あの……どちら様ですの?」
大柄なその戦士は、剣をラミスの方へと向け名乗り出す。
「その通り、凄腕の剣士こと。……セルゲイだ。」
…………。
…………。
……G。
……またG。
またGの名を持つ一族が、ラミスの行く手を阻む。
「……またGですの?」
そう、この名を持つ一族には……。何故かラミスの魅力が通じないのである。その様な事は決して、あってはならない事なのだ。麗しきラミス姫の魅力が理解出来ないなど、おバカさんと言うより他ならない。
Gはラミスの天敵であり、人類の敵なのである。……おのれGめ!
「おいおい嬢ちゃんよ、ご指名はありがてーんだがよ。俺に舞踊でも踊れってぇのか?俺は女を斬る剣何て持ち合わせてねーし、舞踊も踊れねーぞ?」
…………。
…………。
その言葉を聞いて、ラミスはわなわなと震え出す。
……わなわなですわ。
…………。
「私は、お下品な冗談は嫌いでしてよ。」
ラミスはまるで塵を見るような、冷ややかな目でセルゲイを見る。
何よりも下品な話を嫌い、お上品が極まるプリンセスラミスの御前で。事もあろうに下品なネタを連発するセルゲイに、ラミスの怒りは頂点に達していた。
……断じて、許すわけにはいかない。
「……は?」
セルゲイは、不思議そうに首を傾げる。
「あ、いや……。かなり、上手い事を言った様な気がするんだがな?」
……そーゆーとこやぞ?セルゲイ。
「……許しませんわ!セクハラですわ!よって、極刑にして差し上げますわ!!」
ラミスは激しく怒り、セクハラセルゲイに蹴りを喰らわす。
──ギュルン!!
ラミスは飛び蹴りを放った後、空中で駒の様に回転し。およそ人の動きとは思えない速さで、セルゲイに蹴りを二発叩き込む。
──ドゴォ!!
姫神拳奥義、十五式プリンセス"双牙"!!
華麗に宙を舞い、一つ目の牙"風牙"を放った後。右足を軸に駒の様に回転し、そしてそのまま空中で二つ目の牙"雷牙"を瞬時に叩き込む、ラミスの新奥義である。その強襲する二つの牙からは、何人たりとも逃れる事は出来ない。
──ガキィ!!
だが、その技を籠手で防ぐセルゲイ。
「……っ。」
「おいおい、嬢ちゃん。とんだじゃじゃ馬みてーだな。どんだけ恐ろしい蹴りを、持ってるんだよ?俺じゃなかったら、死んでたぜ?」
……止めた?私の双牙を?
「……ふふふ。私の双牙を止めたのは、貴方が初めてでしてよ?」
……それは、そうだろう。先程ラミスが初めて使った技なのだから、当然である。




