第77話 「私〈わたくし〉も、そう思いますわ」
急いで外の状況を、確認しに行くラミス。
「確か、こっちでしたわね……。」
……したたたたた。
「えっ!?姫?何で来た!ここは危険だ、すぐ戻るんだ。」
ラミスが来た事に酷く驚き、グレミオは家の中に戻る様に告げた。ラミスはとりあえずグレミオが、まだ生きていた事に安堵する。味方兵士の負傷者は二人いるが、命に別状は無さそうだ。
倒れているヘルニア兵は、五十近く。思ってたより強いグレミオ隊長。まあ、仮にもグレミオは隊長なのである。ガルガ隊長と同じ"剣豪"の称号を持っているのだから、ある程度強いのは当然であった。
「……戻りませんわよ?グレミオ。私は、こちらに闘いに来たのですわ。」
──キリッ!
当然だが、やる気満々のラミス姫様。
「正気か?……無茶だ。君の様な華麗な姫君が、ヘルニア兵と戦える訳がないだろう?早く戻るんだ。」
…………。
「……わっ。」
「私も、そう思いますわー。」
──ぱぁー!!
頬に手を添え、にこにこしながらお嬢様ポーズをするラミス。
「私も、そう思いますわー!」
何だか嬉しそうな、姫君ラミス。ほのぼのと会話をするラミス達だが、敵であるヘルニア兵士は待ってなどくれない。とりあえず戦場に出る令嬢に、ガラ悪く絡んでくるスタイルのヘルニア兵達。
「へっへっへ……。何だぁ、お前。何処ぞのお姫様か何かかぁ?」
ヘルニア兵達は、笑いながらラミスの腕を掴む。
「姫っ!」
「貴様ぁ、姫様に!」
叫ぶグレミオや兵士達を余所に、にっこりと微笑むラミス。
……にっこりですわ。
「へっへっへ……。」
──ドゴォ!
──姫咬み!!
「う、うごぉあ。」
どさりと倒れるヘルニア兵士を、冷ややかな目で見つめるラミス。
「……汚い手で、触らないで頂けるかしら?」
ラミスは怒っていた。このヘルニア兵達は、前の時間軸において。事もあろうに、姉ナコッタに手をかけ、殺しているのだ。ラミスが激しく憤りを感じるのは、至極当然である。
「……貴方達だけは、許しておけませんわよ!」
ラミスは高々と飛び上がり、うつくしいドレス姿のまま、戦場を舞った。
──ドガガガガガッ!!
しばらく東の山で戦い続けていた性か、ラミスの動きは、以前と比べ物にならない程だった。もう並の強さの兵士では、ラミスに攻撃を当てる事さえ、至難の技に違いない。
ラミスは次々とヘルニア兵を倒していく、その数は既に五十に達していた。
「……ひ、姫様!?」
敵兵も味方兵も、そのラミスの闘う姿に息を飲み、我を忘れる程だった。
「…………。」
ラミスは辺りを見回し、警戒する。
「……そろそろですわね。」
この戦場……。いやラミスの闘いは、一般のヘルニア兵士達を幾ら倒しても然程意味は無いのである。
……そう。ラミスの敵は、あの"豚"と"凄腕の剣士"なのである。
──ざっ。
ラミスは立ち止まり、ポーズを決める。
「居るのでしょう?そろそろ出ていらしたら?……凄腕の剣士さん。」




