第76話 「小人さんいるもん、ラミス見たんだもん、嘘なんかついてないもんですわ」
ヘルニア兵の姿に驚き、急いで隊長や将軍に知らせに走ったのだろう。あまりの必死さに周りが見えておらず、扉の入口に居たラミスに気が付かずに、ぶつかってしまった兵士。
「…………。」
顔面から倒れた為、思いっきり床に顔を強打するプリンセスラミス。
「なっ!?ヘルニア兵がもう……。」
「くっ……。もうこんな村まで来るとは……。村人を避難させておいて、正解だったな。」
…………。
「……所で、その床に倒れておられる御令嬢は?」
……む、むぎゅう。
…………。
「えっ……!?ラミス?……まさかラミスなのっ!?」
この圧倒的起き上がりにくい空気の中、どうやって起き上がろうかしら?……と、悩むラミス姫。
…………。
「……ふふふ。お元気そうで何よりですわ、ナコッタお姉様。」
「ひっ、姫様ー!?たっ、大変申し訳ありません!……おっ、俺は何て事をっ!」
自分のした行動に、酷く青ざめる兵士。
……まあ。これでもラミスは、仮にも一国の姫君である。兵士が青ざめるのも無理は無いだろう。
「……あら?何の事かしら。私は床に小人さんが居たから、ちょっとお話をしていただけですわよ?」
兵士の心配をする、心優しいプリンセスラミス。
……しかし。小人さんは、ちょっと無理があるのでは?姫様。
「そんな事より、ヘルニア兵ですわ!ヘルニア兵がこちらに迫ってますわ!」
「そっ、そうだっ。ヘルニア兵の軍勢がっ!」
「俺が行きます。お前達は、村人の避難が終わっているか確認を。」
グレミオは配下の兵士に、そう指示を出し。クリストフ将軍とナコッタ姫に一礼し、外に向かって行った。
しかし、グレミオは急に立ち止まり、少し考える。
…………。
そしておもむろにラミスに近付き、優しい瞳でラミスを見つめた。
「君が無事で良かったよ……姫。今は無理だけど、後で少し話そう。」
「グレミオ……。」
グレミオはフッと少し笑い、外へと向かって行った。
「私も、すぐにそちらへ向かいますわ。……さてと、やる事が沢山ありますわ。急がないといけませんわね。」
ラミスは前回同様。クリストフ将軍を抱擁し、その労を労う。そして、大事なのはここからである。
姉ナコッタに宿る神々の力の説明なのだが、姉ナコッタはまだその力に気が付いておらず。しかもその力は、まだどの様な力なのかは完全に把握出来ていない。
とりあえず、かくかくしかじか~するラミス姫。
……恐らく、姉リンが消えたのは、姉ナコッタに宿る神々の力だと思われる。ラミスは姉ナコッタに、消えるか試して貰う手も考えたのだが。……今はまず、やるべき事がある。
ここに攻めて来ている、ヘルニア兵を何とかしなければならない。
……それは、ラミスにしか出来ない事である。
ラミスが闘わない限り、姉ナコッタは救えない。
ナコッタ、グレミオ、クリストフ将軍。
ラミスが闘い、勝利しなければ。……運命は変えられないのだ。
このままでは、また。あの悲劇が繰り返されてしまうのだから……。
「では、行って参りますわ。お姉様。」
「……ひっ、姫様!?」
「ラミスっ、一体何を!?外は危険よ?あぶないわ。」
「……すぐに、戻りますわ。」
ラミスは姉に微笑みかけ、そして戦場へと向かって行った。




