第73話 「ここは、私〈わたくし〉向きの戦場ですわ」
『9144回目』
…………。
「ミルフィー。」
「お姉様ー。」
この辛い死闘の毎日の中。ミルフィーとの会話は、ラミスにとって一番の癒しの時間だった。ヘルニア軍が来る迄の、その一時の間。ラミスはミルフィーとのお喋りを楽しんだ。
「この前、ミルフィーが使えた攻撃魔法は、一体何だったのかしらね。……どうして今は、使えないのかしら?何か他に、条件でもあるのかしらねぇ……。ミルフィーは、どう思いますの?」
……パリパリ。
お菓子をほお張りながら、お喋りするラミス姫様。
…………。
「……お、お姉様。……一体、何のお話をされていらっしゃいますの??」
かくかくしかじか……。しかのこのこのこ……。
……ふむふむミルフィー。
「はあー!!」
そして拳に闘気を込め、ひたすら豚を殴り続けるラミス。
「そろそろローストポークにっ、おなりなさーい!」
──ドガガガガ!
ラミスは豚の攻撃を幾度も回避し、次々に攻撃を仕掛けて行く。そのラミスの闘う姿に、味方の兵も敵兵も皆驚いていた。
……ラミスは何度も挑み続けた。
何度、豚に挑み敗北しようとも。果敢に挑み、これを繰り返して行った。……ラミスは決して諦めず、豚との死闘に挑み続ける。
……そして。
天井を見上げていた。
「ム、ムリですわー。」
ラミスは真っ白になり、何時もの様に天井を見上げていた。
「……これ、本当に人が倒せますの?」
まあ、姉リンは倒せていたのだ。一応倒せるのであろう。
……せめて一度でも、クリストフ将軍やバラン将軍の戦い方を、見ていれば良かったと。……ラミスは少し後悔をした。
…………。
「フフフ……。」
ラミスは笑った。(牢屋の中ダヨ。)
「……フフフ。お次は"アレ"を試しますわ……。あの必殺技をねっ!!」
──キリッ。
ラミスは立ち上がり、にやりと不敵に笑う。
「豚さん退治と参りますわ!」
『9278回目』
ミルフィー達と合流し、ミルフィーと会話を楽しむラミス。……そして敵陣に単身で突っ込む姫様。
──ドガガガガッ!
ラミスは恐ろしい速さで、次々とヘルニア兵士をなぎ倒して行く。
──ガガガガッ!
「ぐはぁっ!」
その速さは、何度も繰り返す事により更に洗練され、その攻撃は鋭さを増していく。
──ズガガガ!
「ふっ、不用意に崖に近付くなっ!他の場所から攻めろ!」
ヘルニア軍の、指揮官らしき男がそう叫んだ。その強さに恐怖し、ヘルニア兵は次第にラミスに近付かなくなっていった。
ヘルニア兵士達は、ラミスのいる中央の道では無く、端の味方兵が少ない箇所から攻め始める。
──ザンッ!
ヘルニア兵が、一斉に吹き飛ぶ。
「ここはお任せ下さい、姫様ぁ。」
──ザシュ!
ガルガ隊長は一撃で、ヘルニア兵十数人を斬り裂いていく。
「……フフフ。頼もしいですわ、ガルガ隊長。」
──したたたたたっ。
手薄になったラミスは敵の指揮官目指し、切り込んで行った。




