第65話 「それは聞くも涙、語るも涙のお話がありましてですわ」
──カチャカチャ。
「所でお姉様。」
食事をしながらラミスは今まで考えていた、ある疑問を姉リンに問い掛けた。
「なーに?ラミス。……ほにょほに、ほにょほほーほ?」
もぐもぐして何を言っているのか、よく分からないリンお姉様。
…………。
「……お姉様。お姉様は、今までどちらにいましたのです?私、お姉様を見つける事が全く出来ずに、大変困っておりましたの……。」
……そう、ラミスはあれだけ必死に探し続けたのだ。それでも見つける事が出来なかった姉リン。……一体何処に居たのか?は、誰しもが疑問に思う事だろう。
それだけではない。姉リンは間違いなく、公国の最高戦力である。
今後、居場所さえ分かっていれば、最高戦力である姉に、何時でもすぐに会える事が出来るのだ。
それは、この困難な状況を打ち砕く、最も重要なカギの一つに違いない。
……まあ、ラミスはそこまで深く考えておらず。ただ単に、「あれだけ必死にさがしたのに、一体どちらにいらしたのよ?お姉様!」くらいだろう。
「もぐもぐ、うーん。」
…………。
「……そうねぇ。閉じ込められていたのよねぇ。」
「閉じ込めら……?えっ、一体どちらに?」
ラミスは疑問に思った。確か城の中の牢は、全て探した筈である。
……では、一体何処に?
「えーとね、最後三人で居たときの事を、覚えているかしら?お父様と私達三人。」
「もちろん、覚えておりますわ。確か、お姉様が一人で戦場に向かわれた時の事ですわよね?……あの後一体何が?」
「あの時、私は貴女達はお父様とそこに残るように言い、私は一度自分の部屋に戻ったのよ、この剣を取りにね。」
リンは壁に立て掛けている、自分の双剣をちらっと見る。
「新品だから、部屋に飾ってたのよねー。それで剣を持って部屋から出ようと、いきなり閉じ込められたのよ。……そう、まるで硝子の様な檻にね。」
…………。
硝子の様な檻に閉じ込められた……。やはり、神々の力なのだろうか?普通に考えるなら姉ナコッタに宿る神々の力と、考えるのが妥当なのだろう。恐らく姉ナコッタが亡くなり、効力が切れた……。と、考えられる。
まあ、後で三人で確認すればいいだけの話である。もう一度、誰かが消えれば三人の内の誰かの力で、誰も消えなければ、ナコッタの持つ神々の力である可能性が高いのだから。
「それにしても、びっくりしたわー。何か私の部屋に、いきなり鎧が入って来たと思ったら、ラミスだったんだもの……。ねえ、ラミス。何であんな鎧なんて着てたの?」
「お、お姉様。あれはですね、色々事情がありましてですわね……。」
…………。
その日の夜。三人は一つのベッドで久しぶりに仲良く、ぐっすりと眠りに付いた。
明日は……。明日は、あの豚とヘルニア帝国の大軍が攻めて来るのだ。
ラミス達は明日の戦いに備え、一時の眠りに付いた……。




