第60話 「お姉様、丘には四人で行きましたわ」
ラミスとその一行は城を出た後、北の街を目指し。その長い道のりの道中、ラミスは子供達と手を繋ぎながら歩き、儚げな表情で遠くの景色を眺めていた。
…………。
そして悲しい瞳で俯くラミス。
……まだ城に取り残された人がいる。助ける事が出来なかった人達が、まだ大勢いる。
ラミスにはそれがとても悲しかった。
それにこの後の事を思うとさらに胸を締め付けられ、苦悩する。
…………。
「どうしたの?お姫さまー。」
暗い表情のラミスを心配し、一人の子供がラミスに話しかける。
「大丈夫よ……。何でもないの。」
ラミスは精一杯の笑顔を作り、子供達に微笑んだ。
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翌晩、ラミスの部屋に姉妹三人が集まっていた。
…………。
しかし、誰一人会話もせずただただ時間だけが過ぎ去って行った。
姉リンはただ呆然と、窓から外の景色をじっと眺め。ミルフィーはベッドから出ようとせず、ずっと泣きじゃくっている。
「お姉様……。昨日から何も召し上がってらっしゃいませんわ。何か食べないと、お体に障りますわ……。」
ラミスがそう言っても、リンはただ無言で首を横に振る。
…………。
ラミスは二人に掛ける言葉が見付からず、ただ静かに妹ミルフィーの手を握りしめる事しか出来なかった。
…………。
昨晩ラミス達三人は、北の街に着いた後。すぐに馬車を用意し、西の村へと向かった。
…………。
ラミスはこうなる事は理解していた。ある程度の覚悟はしているつもりだった。
しかし、実際にそれを目の当たりにしてみると。絶望に駆られ、哀しみに暮れ……。溢れ出す涙が止まらなかった。
特に泣き叫ぶ、リンとミルフィーの姿を見ていられず。ラミスは呼吸も出来ない程、後悔の念に苛まされ、苦しみ哀しんだ。
それは姉ナコッタの無残な姿だった……。
自決したのだろう、その手には短剣が握りしめられていた。
ラミスはこうなる事は、ある程度覚悟をしていた。ラミスに宿る力により、繰り返し未来を見て知り、幾度も涙を流し続けて来たからだ。
……そんなラミスでさえ、実際姉ナコッタの死に直面すると、死んでしまいそうな程辛く悲しんだのである。
しかし、二人は違う。二人は……。リンとミルフィーは何も知らず、ナコッタの姿を見たのだ。
それがどんなに絶望感なのか、どれ程深い悲しみなのか……。それは今のラミスとは比べ物にならないのだろう。
ラミスは泣き叫ぶ二人の姿を見て、自らが選んだ選択肢が誤りだったと、嘆き悲しんだ。




