第59話 「お姉様の死は、無駄にしませんわ」
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「ラミスー、お待たせ。」
シュバッと城外に居るラミス達に追い付き、合流する姉リン。
「お姉様っ!」
「良かったですわ、お姉様……。ご無事で安心致しましたわ。」
「なーに言ってるのよ、あれくらい楽勝に決まっているでしょ。……うっ。」
気丈に振る舞うリンだが、やはり左腕がかなり痛む様だ。無理もないだろう、誰がどう見てもかなり酷い大ケガだ。
「お姉様っ、しっかり!」
リンは痛む左腕を押さえながら、城の方を確認する。
「追っては来ないみたいね……。」
不思議と追っ手は無かった。いや、リンの強さを考えるとそう不思議ではないのかもしれない。
「しっ、死なないでっ。お姉様。傷は浅いですわ、これくらいの傷ミルフィーの魔法で、すぐに良くなりますわ。……だから死なないでっ、お姉様。」
姉のケガを心配し、オロオロするラミス。今すぐにでも命の灯火が消え去りそうな、姉リンの震える手を握り締め心配する。
リンは最後の力を振り絞り、左手で泣いているラミスの頬に手を添えた。
「ラ、ラミス。よく聞いて……。以前、お父様に内緒で二人で湖に遊びに行った時の事を、覚えてる?」
…………。
「お姉様……。一体何のお話を!?」
ラミスの声はもうリンには届いていないのか、リンはラミスの問い掛けには答えず、虚ろな瞳で話を続けた。
「あの湖、とても綺麗だったわ……。私あの時の事を今でも鮮明に覚えているの、まるで昨日の事の様にね。」
「……お姉様、ラミスもよく覚えておりますわ。」
「その湖の畔に、素敵な丘があったでしょう?綺麗な湖を一望出来る素敵な丘が……。そこで小鳥達の囀りを聴きながら、二人で昼食を食べたのよね。まるで……。そう、まるでそこは天国の様な場所だったわ……。」
「お姉様……。お姉様のお体の具合が良くなりましたら、また二人であの丘に行きましょう……。いえ、きっとすぐに良くなりますわ。そうに決まってますわ。」
ラミスのその言葉に、リンはただ無言で首を横に振った。
「あのね、ラミス。私が死んだら、私の体をあの丘の上に置いてちょうだい。二人で行ったあの綺麗な湖が見える素敵な丘に。そうすれば小鳥さん達が食べて、私を天国に連れて行ってくれるから……がくっ。」
今先ほどまでラミスの頬にあった温もりは消え、リンの手はラミスを離れ地面に落ちた。
「お姉様ーー!!」
…………。
…………。
「あのー、もう治療は終わりましたよ?……お姉様方。0~0」
先ほど魔力が回復し、リンの左腕を治療した筈?のミルフィーは、あせあせしながら二人の姉達の姿を見ていた。
「お姉様ー。しくしく。」
「ラミス、私は最後に甘くて美味しいケーキが食べたいわ……。」
「すぐにシェフを手配致しますわ、お姉様。」
「あ、イチゴたっぷりで。」
…………。
…………。
……あの、お姉様方?




