第46話 「私〈わたくし〉の戦向きの本が、ございますわ」
ラミスは誰も居ないその空間に、話しかける。
「……お姉様?」
辺りを、きょろきょろと見回して見るが。
……やはり、誰も居ないし返事も無い。
「お姉様、私ですわ!ラミスですわ!」
…………。
やはり返事は無かった。人が一人隠れそうな場所を探してみるが、やはり何も見付からない。
……ラミスは、もう一度部屋の中をきょろきょろと見回した。
「変ですわね……。気のせいだったのかしら?」
…………。
ラミスは姉リンの部屋を後にし、父の書斎に向かった。
「…………。」
父の書斎に入り、誰も居ないかとキョロキョロ確認するラミス姫様。
「…………。」
「……誰も居ませんわね。」
誰も居ないのを確認し、ほっと一息付く。
そして久し振りの父の書斎に戸惑い、またもやきょろきょろと挙動不審なラミス姫様。
……きょろきょろですわ。
「えっと確か、この辺りに……。ありましたわ。」
『~遥か古の伝承の神々~』
「これですわ。」
その本を手に取るラミス姫様だが、すぐ隣にある本の題名が目に入った。
「……あら?」
その本の題名は……。
『誰でも簡単に岩を砕き、山を沈める方法』
『素手で豚を倒す方法百選』
『お前でも倒せる、簡単なドラゴンころし!』
『~プリンセス神拳伝承者への道~』
「……あらあらあら。」
古の神々の本はそっちのけで、ラミスはこれら四冊の本を手に取った。
「まあまあまあ……。」
鎧姿のまま、頬に手を添え溜め息混じりに呟く、シュールな姿のラミス姫様。
「何やら優雅で、絢爛な本がございますわ。」
ラミスは、まず初めに『誰でも簡単に岩を砕き、山を沈める方法』の書物を読み始める。
「……ふむふむ、ですわ。」
誰でも簡単に岩を砕き、山を沈める方法。それは────。
「……それは?」
まず、深く深呼吸をします!
「しましたわ。」
そして、目を閉じます。……閉じましたか?
「閉じましたわ。」
そして、自らの拳に闘気を込めます。……込めましたか?
「目を閉じてるので、読めませんわ。」
そして、山を殴ります。……殴りましたか?
「ふむふむですわ。」
そして岩を砕き、山をもぶち抜き。──否!地球!OK!!YOU WIN!!パーフェクト!!
「バ カ に し て ま す の ?」
パーンと書物を床に叩きつけるラミス姫様。
「そんな事、人間に出来る訳ありませんわ!」
……全くである。




