第162話 「この闘い、私〈わたくし〉達の勝ちですわ」
──ガキィィン!!
「プギィ、プギィィィィイ!?」
「……なっ!?」
その場に居る全員が、その出来事に驚いていた。……クリストフ将軍もレティシア将軍も、そして古の怪物である豚王でさえも。
……驚かずには、いられなかった。
豚王の放つ巨大な戦斧は、ラミスの首の一歩手前で動きを止めていた。そして、その豚王の攻撃を受け止めた人物の登場に全員が驚愕する。
豚王の攻撃を受け止める事が出来るのは、一人しかいないのだから……。
「……バラン将軍!!」
ラミスの作戦とは、至って単純な物であった。バラン将軍一人で倒せない敵ならば、バラン将軍二人に戦って貰えばいいのである。
とりあえずバラン将軍には、全力を出して戦ってもらい。そして疲れた頃合いを見計らって、わざと豚王の攻撃を受け……。後はラミスの力、ラミスに宿る神々の力"蘇生の力"で復活させる事である。
……削り切れるか、どうかが鍵だった。削り切る事が出来なかったら、終わっていただろう。半分以上が賭けであった。また、その頃合いも難しかっただろう。
……しかしバラン将軍は、それを見事遣って退けてくれたのである。
「プギィィィィー!?」
あの古の怪物である豚王が。あの、王の名を持つ獣が……。
バラン将軍の姿に怯え、恐怖に震えている。
「ふっふっふー、ですわぁ。」
ラミスは転がっている一匹の豚さんを、ぷみっと踏み付けて不敵に微笑んだ。そして下顎に手を添えて、これ以上無いと言う程の満面の笑みを浮かべるラミス姫様。
美しく華麗で華やかに、そして一段と優雅なお嬢様ポーズを披露した。
「勝利は、頂きましたわー!」
……おほほ、ですわぁ。
──そしてラミスは、高々と天に手を掲げ……。そして、その指を勢いよく豚王に突き付ける。
「さあ、バラン将軍!やってお仕舞いなさい!!」
「はっ、姫様!!チェストォォォォオオー!!!」
「プギィィィ──────────────!?」
復活したバラン将軍に怯え、豚王は一目散に逃げ始めた。
──ズガーン!!
だが、それを逃すバラン将軍では無い。疾風の如く駆け抜け、怒濤の攻撃を繰り出すバラン将軍。
復活を果たしたバラン将軍の剣圧は更に威力を増し、疾風怒濤の連撃にて豚王の体を次々に斬り裂いていく。
──ズガガガガガガガガッ!!
バラン将軍の放つ斬撃の、あまりの恐ろしさに。……味方の兵士ですら、恐怖に震えていた。
その電光石火の一撃は、豚王の足を斬り裂き、逃げる手段を奪い。
その気炎万丈の気迫は、豚王の戦意を消失させ。
その天下無双の一撃は、豚王の両腕を斬り落とし、防御の術をも奪う。
そして遂にバラン将軍の放つ全身全霊を込めた最後の一撃が、豚王の首に襲いかかる。
「貴様には、理解出来まい!」
──ザシュ!
「豚如きには、理解出来まい!!」
一騎当千の一撃が、豚王の首にめり込んでいく。
「豚如きに敗れる訳には、いかぬのだ!!」
バラン将軍を応援する大歓声が、二万七千の人の想いが……。バラン将軍の剣を、後押しする。
そして、負けじと声援を送り続けるラミス姫様。
「行っけー!……ですわ。バラン将軍!!」
「これで、最後だ!!」
死力を尽くすバランの腕に、更に力が込み上げる。
──ぐぐぐっ。
「プギィ、プギィ、プギィィィィ!」
断末魔の悲鳴を上げ、悶え苦しむ豚王。そして遂に、この闘いに最後の刻が訪れようとしていた。
バランの目が光を放ち、全ての想いを乗せ大剣が……。
──今この時、振り切られる!
「うおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
──ザンッ!
バラン将軍の放つ一撃は、豚王の首を撃ち貫き。その凄まじい威力の剣閃は、ツインデール城の城壁を全てを斬り裂き破壊した。
──ズガガガガ、ガシャーン。
崩れ落ちる城壁の中……。倒した豚王の上に、一人立ち尽くす剣王バラン。
「…………。」
夕日に照らされながら、ラミス姫の姿を優しく見つめる。……そして高々と大剣を天に掲げ、この闘いの勝利を告げた。
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