第161話 「……こうなる事は、分かっていましたわ」
──ザシュ、ザシュザシュ!!
バラン将軍の大剣が唸りを上げ、凄まじい威力の斬撃の数々が豚王に襲いかかる。
「プギィ、プギィィ……。」
──ズガガガガガガガガッ!!
バラン将軍の攻撃に豚王は、ひたすら防御に徹していた。
長時間にも及ぶ闘いに疲弊し、だんだんとバラン将軍の剣速が遅くなり始める。……流石の将軍でも、体力の限界なのだろう。
「……はぁ、はぁ。」
「プギィィイイ……。」
疲れが限界に達するバランの姿に、にやりと笑う豚王。
「……ぐっ。」
──ザシュ!
「……がはっ。」
──それは、一瞬の出来事だった。
バラン将軍の動きが、鈍くなったのを見計らい。豚王は、その大木の如く巨大な戦斧で将軍の体を真っ二つに斬り裂いた。
「…………。」
「…………。」
その衝撃の光景に、その場にいた全員が目を疑い言葉を失っていた。
──どさっ。
衝撃のあまり、地に膝を突き嘆き哀しむ兵士達……。
「……そ、そんな。」
「バラン将軍が……。」
公国最強を誇る将軍であるバランの死に、絶望に打ち拉がれるラミス達。
「そんなっ、バラン将軍が……。」
「……ぐっ。」
……バラン将軍の死を哀しむラミスだが、ラミスは結果がこうなる事を知っていた。ラミスはバラン将軍が敗れ、豚王に殺される事を最初から理解していたのだ。
問題は……。
後はラミスの力で倒す事が出来る程、弱らせているか。……である。
結果は───。
「…………。」
……ラミスはその瞳で豚王を睨み付ける様に、じっと見つめていた。
「ブヒィィィィ……。」
薄気味悪く、にたりと笑い始める豚王。ゆっくりと立ち上がり、大木の如く巨大な戦斧を揺らしながら、じわじわとラミス達に歩み寄ってくる。
「プギィィィ……。」
動きが止め、にやりと笑いながらラミス達の姿を見下ろす豚王。
「くっ、戦うぞ!!」
「奴は、奴は弱っている!この場に居る、全員でかかるんだ!!」
……震えながらも剣を構え、豚王相手に身構える隊長や将軍達。
「動いては、なりませんわ……。」
そんな中ラミスは皆の前に立ち、手を上げて皆を制止する。
「……ひ、姫様?」
ラミスは黙ったまま、静かに震えていた。ラミスには、分かっていたのだ……。確かに豚王は弱っている。しかしこの場に居る全員が束になってかかったとしても、豚王には到底敵わないと言う事をラミスは理解していた。
……豚王の体には、傷一つ付ける事さえ適わないだろう。
ラミス達とバラン将軍との間には、それ程までに実力の違いに差があったのである。
──ズシィーン。
「ブヒィィィ……。」
卑しい笑みを浮かべ、ラミス目掛けて大木の如く巨大な戦斧を振り上げる豚王。
「姫様ー!!」
皆が絶望し、叫び声を上げる中。……ラミスは唯一人、笑っていた。
誰よりも優雅に、誰にも負けないほど絢爛に。……そして世界で一番、美麗に。
──ラミスは凛々しい表情で、笑っていた。
「プギィ!!」
その戦斧は、無情にもラミスに振り下ろされる。……だがラミスはそれに動じず、豚王の姿を見つめ続けていた。
「バラン将軍……。」
襲い来る戦斧に怯む事無く、真っ直ぐな瞳で悠然と佇むその姿は……。
「……この闘い。」
──まるで、勝利の女神の様に映っていた。
「……貴方の、勝ちですわ。」
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