第152話 「豚さんの前に、軽く準備運動を致しますわ」
ユミナは小刻みに震えながら、ラミス姫の方へと振り向く。にこにこと笑いながら手を振る、ラミス姫。
「…………。」
この状況にユミナは、かたかたと震え青ざめた。
──さーっ。
「ひゃいっ!」
素っ頓狂な声を上げ、何やら必死に手をぱたぱたとさせて、ラミスに何かを訴えかけるユミナ嬢。
「あら?一体、どうなさいましたの?ユミナさん。」
ラミスには、ユミナが一体何をそんなに慌てているのか全く理解が出来ず。頬に手を添え、頭に"?"マークが浮かび上がる。
「あわわわわわわわ……。強い人二人共、何処かに行っちゃいましたよ姫様ー!この後、一体どうするんですかー!?私達だけでは、死んじゃいますよー!!」
──ぱたぱた。
……あわわわわわわわ。
あわあわと可愛く、その場を行ったり来たりするユミナさん。
それに対し頬に手を添えて、お嬢様ポーズでにっこりと微笑むラミス姫様。
「あら?この程度なら、私一人でも何とかなりますわよ。だから、ご安心なさって?ユミナさん。」
……にっこり。
「……はい?」
頬に手を添え、にっこりと笑う姫のその態度に。……ユミナは固まり、目が点になる。
「ヒャッハー!!」
「ふへへへへへへへ……。」
次々と城の中から湧いて出る、ヘルニア兵達。ラミスとユミナは、あっという間に大量のヘルニア兵達に囲まれてしまう。……その数は、ゆうに五百は超えていた。
「……ひえええ。」
──カタン。
涙目になり震える手で剣を抜き、一応戦う姿勢のユミナ嬢だが……。あまりにも手が震え過ぎて、手に持った剣を落としてしまう。
「ひ、姫様ぁぁぁ。あああ……。」
泣きながら、姫に助けを求めるユミナ嬢。
「おいっちにー、ですわ。」
……準備運動は、大事ですわ。
何やら、準備体操を始めるラミス姫様。
「今日は、どんな技を試そうかしら?」
……わくわくしますわ。
ラミスはしゃがんで足を伸ばし、念入りに準備体操をする。
「……ふぅ、さてと。」
「あの、姫様?一体何を……。」
「ふへへへへへへへ……。」
「ヒャッハー!!」
そして飛び上がりながら、ラミス姫達に襲いかかってくるヘルニア兵の皆さん。
「ひえー、姫様ー!!」
まるで、滝の様に涙を流すユミナ嬢。
…………。
──しゅばっ!
「おらー!」
……歯を、食い縛りなさいませ!!
──ばちこーん。
プリンセスナックルにより、次々と吹き飛ばされるヘルニア兵士の皆様。
「……は?」
──ドガガガガッ!!
そしてラミスは恐ろしい速さの蹴りを放ち、次々とヘルニア兵達をブチのめして行く。
「あわ、あわわわわ……。」
ヘルニア兵がちょっと可哀想になり、がたがたと震えるユミナさん。
言うまでもないが……。もはや五百人程度で、止める事の出来るラミス姫様ではない。
「ふぅ。」
ものの数秒で、五百を超えるヘルニア兵達を沈め。いい汗掻きましたわーっと、にこにこ笑顔で汗を拭うラミス姫様。
「さあミルフィーの待つ、東の山まで急ぎますわよ!」
ラミスは、そう言ってロクサーヌを探しに城の中へと入って行った。
「…………。」
……はっ!?
ぽかんと口を開け、ただ呆然と見ていたユミナ嬢。ユミナは、はっと我に返り急いでラミスの後を追って行った。




