第151話 「ガチャリですわ」
戦闘が終わり、バランとグレミオは負傷者を抱え。ナコッタ姫とクリストフの所に、戦闘が終わった事を告げに戻る。
「クリストフ将軍、大変だ。バラン将軍が生きていたんだ。」
グレミオが先に入り、クリストフにバラン将軍の生存を報せた。
「……なっ、バラン将軍がっ!?」
──すたすたすた、ざっ。
バラン将軍は負傷者を寝かせ、すぐにナコッタ姫の前に跪く。
「駆け付けるのが遅くなり、大変申し訳ありません姫様。北の街で、ラミス姫様がお待ちです。」
「……バラン将軍。」
「……ああっ、ありがとうバラン将軍。ラミスは……。ラミスは、無事なのね。」
二人は、涙を流し喜んだ。
────────。
──少し時は逆戻り。
牢の中の、ラミス姫一行。
「……えっ?姫様、鍵があるんですか?」
「ええ、だから何も心配はいりませんわ。」
にこりと微笑むラミス姫様。しかし、もう既に鍵など必要無いと思えるのだが……。
「はーい、ガチャリ♪」
でも、にこにこしながら鍵を開けて上げる優しいラミス姫様。
「はーい、開きましたー。拍手ー♪」
──ぱちぱちぱち。
「わーい!」
「良かったー、出れたー。」
喜んで小踊りを始める、ユリフィス少年とユミナ嬢。しかし牢から出た瞬間に、その顔色が変わる。
「きゃあー、敵が居ますよー。姫様ー!!」
「おっ、お前。帝国兵だな!」
廊下の兵士こと、ゲイオルグに驚く二人だが……。それ以上に、ゲイオルグが驚き戸惑っていた。
──ざっざっ。
バラン将軍は悠々と歩き、そしてゲイオルグの前に立ち睨み付ける。
「……なっ!?」
ゲイオルグは、恐怖で動けなかった。……いや、動いた瞬間に死ぬと理解していたのだ。ガタガタと今にも剣を落としてしまいそうな程、震えているゲイオルグ。
「うわあああああああー!!」
恐怖に耐えきれず、ゲイオルグは大きな叫び声を上げバラン将軍に斬りかかった。
──ザシュ。
当然、相手になる筈も無く。……ゲイオルグは、塵と消える。
城の外に居るヘルニア兵も同様に、バランは一瞬で殲滅する。そして、ラミス一行は二手に分かれる事にした。
「ではバラン将軍、ナコッタお姉様をよろしくお願いしますわ。ユリフィス君も、気を付けてね。」
ラミスはバラン将軍とユリフィスに、北西の村全てと西の村に居る、姉ナコッタの救出を依頼した。
二人を暖かく見送り、にこにこと微笑みながら手を振るラミス姫とユミナ嬢……。
「…………。」
「……うん?」
にこにこと微笑みながら、去って行く二人に手を振るユミナ嬢だが……。
何か、違和感がある事に気が付く。
「……あれ?」
ユミナは一度落ち着いて、この状況を一つ一つ確認してみる。
……去って行く、強い人二名。そして城の中から、わらわらと大量に湧いてくるヘルニア兵達。それに対し、こちらはしくしくと泣いている子供達と武器を持たない城に住む一般の民。……そして可憐な姫君と、ユミナだけだった。
ユミナは、入ったばかりの新人下級兵士なので……。無論、弱いのは言うまでもない。
「…………。」
かなり絶望的な状況である事に、気が付いてしまうユミナ嬢だった。




