第148話 「グレミオが心配ですわ」
勝利の希望を抱いて、走り出すラミス姫一行。
……だがこの作戦には、一つ重大な欠点がある。苦肉の策とも言えるラミスのこの策略は、諸刃の剣でもあった。諸刃の刃には、犠牲が付き物なのだ。
────────。
「ラミス姫の救出に向かう、御許しを頂きたい。」
ここ西の村では、ラミス姫の安否を憂うグレミオの姿があった。そして瀕死の重症を負うクリストフ将軍、ラミスの姉である第二公女ナコッタ姫の姿も見える。
「駄目だ……。今はナコッタ姫様の、護衛が優先だ。お前が居なければ……。ぐあっ!」
もう既に、生きているのが不思議な程の致命傷を負っているクリストフ将軍。常人ならば、既に絶命しているか、気を失って居るだろう。クリストフ将軍の気迫だけが、その意識を辛うじて繋いでいた。
「お願い、もう喋らないで……クリストフ。」
ナコッタは涙を流し、将軍のその手を握り締める。
「…………。」
グレミオは悔しさに顔をしかめ、少し俯く。
「申し訳ありません将軍。俺……。少し頭を冷やしてきます。」
そう言いながら、外に向かうグレミオだが。扉を開け、一人の兵士が慌てて駆け込んできた。
「たっ、大変です!ヘルニア帝国軍が、すぐそこ迄迫っております!か、数は二百以上かと……。」
──!?
「……くっ。」
その報せに怒りを露にし、グレミオは拳を握り締める。
「俺が行きます。」
グレミオは剣を強く握りしめ、戦場へと向かって行った。
……クリストフは戦う事すら出来ない自分の体を呪い、そして嘆いていた。
戦場に向かうグレミオ達だが、すぐにヘルニア帝国兵士達に囲まれてしまう。……その数、二百強。
それに対し、こちらの兵はグレミオを含め、たったの五人しかいない。
「……くっ。」
こんな所で……。こんな所で、死ぬ訳にはいかない。ナコッタ姫を守り、そしてラミス姫を救い出すまでは……。絶対に死ぬ訳には、いかないのだ。
「ラミス姫、俺に……。俺に力をっ!うおおおおおおお!!」
グレミオは雄叫びを上げ、ラミス姫への想いを胸にその剣を振るった。
────────。
「……はぁ、はぁ。」
健闘するグレミオだが、やはり多勢に無勢と言わざるを得ない。味方の兵士の一人は既に重症を負い、残りの三人も何とか辛うじて立っているのが精一杯だった。
「……くっ。」
──ざっ。
……そして、そんな絶体絶命の窮地に陥るグレミオ達の前に、更にあの男が現れる。
──"凄腕の剣士"。
ライ・G・ゲイオスが立ち塞がる。
「ほう、少しは出来るようだな。良かろう……。次は、俺が相手になってやろう!」
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