第147話 「最後の決戦が、始まりますわ」
ラミスは、バラン将軍を見詰めながら真剣な眼差しで話し始める。優しくもあり何処と無く儚げで、少し寂しさが漂う面持ちで……。
「愚問であります姫様。この命、疾うに姫様と公国に捧げております。もう一度、あの豚王との再戦の機を与えて下さり、姫と神々に感謝をしております。……どうぞこの命、姫様のお好きな様にお使い下さいませ。」
「…………。」
ラミスは少し寂しい表情で、にこりと笑う。
「では、将軍。肝心の、その作戦なのですが。内容は──────────────────────────────────────────。」
ラミスは、作戦の全容をバラン将軍に説明をする。
「─────────────────────────────。」
……幾ら、ラミス姫が公国が誇る叡知だとしても。この状況から、何の犠牲も出さずに勝利を手にする方法など、最初から存在しなかった。
「─────────────────────────────。」
ラミスのその作戦とは、およそ作戦とは言い難い苦肉の策であった。
「…………。」
ラミスは話を終え、不安そうにバラン将軍の顔色を伺う。
「あの……如何でしょうか?バラン将軍。」
「これは姫様、一計を案じましたな……。」
ラミス姫の策に感心するバラン将軍だが、その顔は少し暗い。
「しかし、それが本当に上手く事が運ぶのか……。一度やってみない事に分かりませんが。それに……。」
そう、この作戦には……。ある重大な欠点があった。
「ごめんなさい……。こんな作戦しか思い付かない、愚かな姫で。本当に、ごめんなさい……。」
「……何を、仰いますか姫様。今のままでは奴に勝つ等、到底不可能だったのです。姫様の策のお陰で、そこに勝機を見出だせる事が出来たのです。……ならば、このバラン。姫様の策を信じ、その可能性に賭け闘う所存でございます。」
「バラン将軍……。ありがとうございますわ。」
そしてバランとラミスは、決意を胸に立ち上がった。
──勝つ為に。
豚王に勝つ為に、そしてツインデール公国をこの手に取り戻す為に……。
悠然と佇むラミス姫の、その眼差しは闘志に燃えていた。
「さあ参りますわよ、バラン将軍!」
「はっ、姫様!!」
──ラミス姫の最後の闘いが、始まろうとしていた。
「うえーん、牢屋の中に閉じ込められてるだなんてー。私達捕まっちゃったんですかー?一生、ここから出られないんですかー?うわーん、お願ーい。誰かー、ここから出して下さーい。」
「くそぉ、僕に……。僕に、もっと力があれば……。」
目が覚めると何故か牢の中だった事に、頭が混乱状態のユミナ嬢とユリフィス少年。
「あらー?」
そうでしたわ、説明を忘れてましたわ……。と頬に手を当て、たらりと汗を流すラミス姫様。
「鍵ならありましてよ。」
──きらーん。
……しくしくと涙を流す、ユミナ嬢とユリフィス少年でした。
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