第141話 「説明を忘れておりましたわ」
遂にバラン将軍が復活を果たし。ラミスは嘗ての公国の戦力を、取り戻す事に成功したのである。
クリストフ将軍、レティシア将軍、そしてバラン将軍。公国が誇る最強の将軍三人が揃い、ラミスの胸から祖国解放の希望が溢れ出す。
「さあ、行きますわよ!」
──ガチャ。
ラミスは満面の笑みで、希望の扉を開け放つ。
「えーん、一体ここは何処ですかー!?」
「あれれ、僕は何でこんな所に……?」
「……はて、奇っ怪な事もあるものですなぁ。」
「…………。」
後方であたふたしている、三人にようやく気が付き。全く何一つ説明をしていなかった事に、たらりと冷や汗を流すラミス姫様でした。
「かくかくしかじか~しかのこのこのこ~ですわ。・△・」わ
ラミスは虎視眈々と三人に説明を終え、扉を開け先を急いだ。
……しかし、ラミスの頭に一抹の不安が過る。
「……あの、バラン将軍。」
扉を開けながらラミスは不安に駆られ、バラン将軍に話し掛けた。
「はっ、何でありましょうか?姫様。」
バランは少し壁側へと足を運び、背負う大剣に手を掛け返事をする。ラミスは少し俯き、不安げに胸の内を明かし話始めた。
「…………。」
「きゃあー!!」
「うわぁー!!」
扉のその先には何時ものヘルニア兵士仲良し四人組が居り、そのヘルニア帝国兵の姿に驚くユミナ嬢とユリフィス君。
「来い、この僕が相手だ!」
剣を構え、勇敢に立ち向かうユリフィス少年。
「ひええ。」
両手を上げ、万歳のポーズでくるくる回り混乱状態に陥るユミナ嬢。
確かに戦力は整った、これ以上と無い戦力が。バラン将軍の復活により公国最強の陣営が集結し、その布陣が完成したと言える。
……しかし。ラミスの脳裏に、あの恐ろしい怪物の姿が甦ってくる。
「頑張れー!」
必死に応援するユミナ嬢。
──ガキィン!
ヘルニア兵士三人を相手に、必死に戦うユリフィス少年。
豚王の前では、あのクリストフ将軍ですら、手も足も出せず為す術が無かったのだ。硬い外皮に覆われた豚達を一瞬で殲滅し、古の怪物ですら恐怖に慄くクリストフ将軍。
そのクリストフ将軍と、レティシア将軍の二人ですら。あの豚王の戦斧の前では、赤子同然の様に全く抵抗する間もなく散って行った。
幾ら、バラン将軍が強いと言っても。公国が誇る、最強の将軍が三人揃ったとしても。
……本当に、あの豚王を倒す事が出来るのだろうか?
「あの……バラン将軍。クリストフ将軍とレティシア将軍、そしてバラン将軍の三人が揃えば。あの豚王に勝てるのでしょうか?……そして、この公国を取り戻す事が出来るのでしょうか?」
ラミスはバラン将軍に、不安げな表情でそう尋ねた。




