第139話 「今一つ、決め手に欠けますわ」
『42120回目』
薄暗い牢の中、一人天井を見上げるラミス姫様。正直な所、もう既に豚より強い気がしないでも無いのだが……。後一歩の所で、何か一つ決め手に欠け躓いていた。
……問題は二点。
豚の、その驚異的な迄の再生力である。ラミスが豚に幾ら攻撃を撃ち込んでも、その驚異的な速さで回復してしまうのである。
もう一点は、その強度だ。……やはり硬い。その強度故に、姫の拳が耐えきれず砕けてしまっている。
何かこう……。もう一つ何か。
あの豚の硬い外皮を撃ち貫ける、新たな奥義を編み出す必要があるのでは無いだろうか?
ラミスは今までの戦いに於いて、何よりも速さに重点を置いて戦ってきた。特にゲイオスとの戦いでは、何よりも速さが重要であり。その凄まじい剣速を回避出来なければ、話にすらならなかったのである。
しかし、今姫に求められるのは"速さ"では無く"力"なのだ。豚の硬い外皮を撃ち貫く力、威力のある奥義が。
……今のラミス姫には、必要なのかも知れない。
──"力"。
ラミスは自らの拳を握り締め、その拳をじっと見つめた。
「……まあ考えるよりも、先ずは実戦ですわ。」
ラミスは意気揚々と立ち上がる。
「さあ、豚さん退治と参りますわよ!」
と、豪快に扉を開け放つラミス姫様だが……。一つ、大事な事を忘れていたのを思い出す。
「な、何だ貴様は!?」
廊下の兵士こと、ゲイオルグに見つかる姫君。
「ららっらー♪」
ラミスはゲイオルグを気にする事無く、何時もの様に復活の舞を踊り出し、くるくると回り始める。
「くるくるくるー。」
ゲイオルグはドスドスと足音を立てて、ラミス姫に近付いて行く。
「邪魔ですわよ。」
──ガスッ!
ラミスはくるくると回り、華麗な舞を披露する。そしてそのついでに、ゲイオルグに肘鉄を喰らわした。
「ぐっはあ!!」
……もう相手にはなりませんって、ゲイオルグさん。
「さあ、私の華麗なる舞と共に、今こそ黄泉返るのです!希望の戦士、今ここに。勇敢なるエインフェリア達よ!!でも~。そろそろバラン将軍を、お願い致しっまーす!!」
──きゅぴきゅぴ、きゅぴーん♪
華麗なる舞いと共に姫はポーズを決め、神々の力"蘇生の力"でエインフェリア達を召還をする。
──ぽよん。
──ぱふん。
──ばばーん!!
「さあ、行きますわよ!死をも恐れない、我が勇敢なるエインフェリア達!!」
毎度の事、復活したエインフェリア達に、一切説明が無い傍若無人なラミス姫様。
……しかしラミスはその時、ある違和感に気が付く。




