第138話 「続きと参りますわ」
『42157回目』……『42164回目』……『42167回目』
──ドゴォ!
ラミスは、決して諦める事無く何度も果敢に豚に挑み続けた。
───ドガガガガガガガッ!!
例え拳が砕けようとも、ラミスはそれに屈する事無く、その拳を豚に叩き込んでいく。
雷を帯び、轟音を鳴り響かせ。目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り出す、ラミス姫と豚の戦いを前に。味方の兵達は自らの目を疑い、敵であるヘルニア兵達は震え上がっていた。……双方、その場を一歩足りとも動く事が出来なかった。
──ドガガガガガガガッ!!
ラミス姫の拳は無数の光を放ち、激しい雨の様に豚に降り注ぐ。
「ブヒ、ブヒィ……。」
あまりにも凄まじい連撃の数々に、古の怪物は堪らず悲痛な叫び声を発した。
「…………。」
ラミスは攻撃をぴたりと止め、自分の拳と足をじっと見詰める。
「んー、そろそろ限界ですわね。」
ラミスの両腕は砕け、右脚は酷く折れ曲がっていた。
──しゅばっ。
「ミルフィー、お願ーい♪」
足一本あれば瞬時に移動出来る為、全く問題が無いラミス姫様。
「おおおおお、お姉様。あまり、無茶な事はなさらないで……。」
一体この状況にどう反応し、どう対応すれば良いのか分からず味方陣営は皆、困惑し戸惑いの色が隠せなかった。とりあえず、あせあせとミルフィーは神々の力を使いラミスに治療を施す。
──ぱあっ
ミルフィーの"治療の力"が発動し。ラミス姫の傷や怪我が一瞬にして回復して元通りになり、ラミスの体から痛みが引いていった。
「便利ですわー、流石ミルフィーですわね。」
頬に手を添え、にこにこと妹に宿る神々の力に感心するラミス姫様。
良く分からないのだが今の所、ミルフィーの"治療の力"も"殲滅の力"も同時に使えるのは五回までの様だ。勿論、時間が立てばある程度は回復する。ちなみに殲滅の力は試してみたものの、豚の強固な外皮をつらぬけず全く効かなかった様である。
──しゅばっ。
頬に手を添え瞳を閉じたポーズのまま、瞬時に豚の側まで高速移動するラミス姫様。
そして、ラミスはにっこりと豚に微笑み掛ける。
「お待たせしましたわ、豚さん。さあ、続きと参りますわ。」
「プギ、プギィ……。」
頬に手を添え、手をぐーにしながら天使の様に微笑むラミス姫の姿に。……もはや、豚の方が怯えていた。
──ドゴォ!!
全回復したラミスの拳は更に威力を増し、凄まじい勢いで豚に襲い掛かる。雷の如き速さの拳を、無数の光を放つ打撃の数々を……。豚のその身に叩き込んでいくラミス姫の姿は、誰がどう見ても豚を圧倒的に凌駕していた。




