第135話 「びりびりしますわ」
──バチッ、バチバチ。
ラミス姫の体からは、まるで落雷の直撃を受け帯電しているかの如く、体の周りに雷を帯びていた。
──姫神拳超奥義、四十八式プリンセス雷龍脚。
ラミス姫の体を、雷に乗せた状態から繰り出されるこの奥義は──。荒れ狂う龍の如き脚技はラミスの体を雷と化し、数百の標的に対して瞬時に蹴りを放つ超奥義である。その速さから常人の目には、その場に落雷が発生し稲妻が走った様にしか映らないだろう。
「……一体、何が起こったのだ?」
生き残ったヘルニア兵士達は、一体何が起こったのか理解が出来ないでいた。爆発が起き木々は燃え盛り、この焦土化したこの状況に。ヘルニア兵達は皆、落雷が発生しその衝撃によりヘルニア兵の大半を失ったと考える。
……だが。
焦土化し無数のヘルニア兵士達が横たわるその中で、体に激しい雷を帯びヘルニア兵達を見下ろし悠然と佇む一人の姫君に……。
ヘルニア兵達は、それをすぐに理解した。千近くのヘルニア兵達を一瞬で屠るラミス姫のその姿に……。ヘルニア兵達は皆怯え恐怖し、その場から一歩も動く事が出来無かった。
又、味方の兵士達も同じく隊長であるガルガですら動けないでいた。
「…………。」
しかし、当の本人のラミス姫も同様に。何故か動く気配が無い為、ガルガ隊長は不思議に思い眉をひそめる。
「……姫様?」
「…………」
──ぷしゅー。
「あばばばばばばばばば。○△○」
──ぱたり。
「……は?」
ラミス姫はいきなりその場にぱたりと倒れ込み、ぴくぴくと小刻みに震えていた。そして今なら倒せるのでは?とヘルニア兵達は剣を手に、恐る恐るラミス姫の周りに集まり出す。
「……いかんっ。」
姫に迫る危険を察しガルガ隊長は、ラミス姫を守る為姫の下に急いで駆け出した。
「姫ー!!」
「あば、あばばばばば。o△o」
──ザシュ!
ガルガ隊長の大剣が唸り、その刃は一撃で十数人のヘルニア兵士を斬り裂いて行く。何とか間一髪で、ラミス姫の救出に間に合うガルガ隊長。
ガルガ隊長の凄まじい強さの前に、ヘルニア兵達は恐れをなし、剣を捨て逃げ出して行った。
「……ふっ。」
「オオオオオオオオ!!」
退却を始めるヘルニア兵士の姿に、味方の兵士達が勝利の歓声を上げる。
「勝ちましたぞ、姫……。」
ガルガは戦いが終わり一安心し、ふとラミス姫の方へと振り向いた。
「……うっ。」
倒れているラミス姫の姿に驚き、ガルガ隊長の顔が凍りつく。
ラミス姫の容態はかなり酷く、まるで落雷の直撃でも受けたかの様に皮膚は焼き爛れ。その美しい髪も黒く焦げ、消し炭となっていた。
「……姫……様。」
無惨に横たわるラミス姫の姿に、絶望の表情を見せるガルガ隊長。ガルガのその目には、もはやラミス姫は生きている様には映って等いなかった。




