第131話 「ほんと、この剣士は化け物でしたわ」
もう勝利は目前だと確信するラミスだが、ラミスの体も既に限界を超えていた。
……時間が無い、技の凄まじさに体が負荷に耐えられていない。勝負を一瞬で決す為、ラミスは怒濤の連撃を繰り出す。
──ドゴォ!
「プリンセス"風牙"!」
雷鳴と共にラミスの放つ、飛び蹴り"風の牙"がゲイオスを襲う。
──ギュオ!
そのまま空中で一回転し、ラミスは雷音と共に第二の牙を穿つ。
「プリンセス"雷牙"!!」
──ドゴォ!!
「ぐはっ。」
ラミスの双牙が華麗に決まる。だが常人であれば立っていられ無い筈の、技の数々をその身に受けながら。ゲイオスはラミスの放つ双牙にも耐え凌ぎ、尚も怯む事無く高速の斬撃を繰り出して行く。
──ザシュ、ザシュ!!
ラミスはその斬撃を全て掻い潜り、いやその斬撃よりも速く瞬時にゲイオスの懐に飛び込み奥義を放つ。
──ドゴォ!!
「ぐはあっ!」
稲妻が走り轟音と共に、ゲイオスの鳩尾に三日月蹴りが決まる。
「プリンセス"水月"!!」
流石にゲイオスだろうと、姫のこの技を急所にまともに喰らっては無事では済まされない。悶え苦しむゲイオス、もう既にゲイオスに斬撃を放つ余力は残されてはいなかった。この長いゲイオスとの戦いに、遂に終止符を打つ時が来たのだ。
……そして、ラミスは最後の一撃を放つ!
「これで、フィナーレですわ!!」
ラミスの想いを乗せた、全身全霊の最後の一撃がゲイオスの体を撃ち貫く。
「"姫咬み"!!」
ゲイオスは強かった、ラミス自信が一番それを理解しているだろう。ラミスには、ゲイオスの放つ高速の剣がまだ見切れてはいなかった。ラミスが勝利出来たのは、ただ運が良かっただけなのだろう……。
だがこの日、初めてラミスは自分の実力だけでゲイオスに打ち勝ち、勝利を得る事が出来たのである。
……はぁ、はぁ。
「ふっ、不覚。」
ゲイオスは苦しみながら跪き、胸を手で押さえながらラミスを睨み付ける。
「フッ、見事だ。……俺の敗けだ。」
──どさっ。
ラミスに敗れ、地に伏せるゲイオス。
……ふらっ。
だがラミスの使った新技は、まだラミスの体に負担が大きかった。戦いが終わり緊張の糸が切れたせいもあるのだろう、ラミス姫もまたその場に倒れてしまった。
「ラミスー!」
「姫様ー!」
グレミオ達が心配し、倒れているラミスの元に駆け寄って来る。
……ざわ、ざわ。
「バッ、バカな!?あのゲイオスが倒されるとはっ。」
「おっ、おい。今の内に倒した方が、いいんじゃないのか?」
……じりじり。
あまりのラミス姫の恐ろしさにヘルニア兵達は、倒れて動けないラミス姫の周りに集まり剣を向ける。
ヘルニア兵総勢二百強に囲まれ、剣を抜くギリアムとグレミオ。
「……ほう、俺達も舐められた物だな。」
「そうだね、やれやれ。」
──ザシュ、ザシュ!!
「ひっ、ひいぃぃぃぃ。」
二百強、如きで止められるギリアム隊長とグレミオでは無い。二人はラミス姫を護る為、瞬く間に百数人のヘルニア兵士を撃退した。二人の隊長のあまりもの強さに、残りのヘルニア兵達は皆逃げ出して行くのだった。




