第130話 「今、貴方を超えますわ」
──バリッバリバリ!
ラミスのその速度は、遂にゲイオスを超える。文字通り雷の如き速さで、ラミスの凄まじい速さの攻撃がゲイオスを襲う。
──ドゴォ!!
「ぐはぁ。」
──!?
「……うっ。」
ラミスの拳で地に伏せるゲイオスだが、ラミスもまた首に手を当て苦しみ跪く。何とか一命を取り留めたラミスだが、あまりもの激痛に今にも意識を失ってしまいそうになっていた。ラミスに宿る神々の力"再生の力"が無ければ、耐える事が出来なかっただろう。
今なら勝てるのだ、今なら……。
あの"凄腕の剣士"ことゲイオスに、勝利する事が出来る。ラミスはそう信じ、自らを鼓舞し奮い立たせ立ち上がった。
──フォン!
ゲイオスの放つ、高速の斬撃がラミスを襲う。
──バリッバリバリバリ!
雷の如き速さでそれを全て回避し、次々とゲイオスに攻撃を喰らわしていく。
──ドガガガガ!!
「ぐはぁ、バカなっ!?この俺が……。」
「勝てますわ!」
ラミスはそう確信し、ゲイオスに強烈な一撃を放つ。
ゲイオスは強かった。
ゲイオスの強さは凄まじく、その剣速はラミスには捉える事が出来ない。
ラミスは、このままいくら戦っていても勝てないと悟り。雷を纏いながら戦う技を手がかりに、新たな奥義を作り上げた。
今までのラミスの技は自らの体に雷を纏わせ、ラミスの速度を飛躍的に上昇させていた。
……だがこの技は、少し違う。
この技は、ラミスの体に雷を纏わせるのではなく。
──ラミスの体を雷に乗せる。
──姫神拳闘姫武装二式"雷鳴"式武装。
ラミスは今まさに雷の如き速さを手に入れ、ゲイオスの速さを凌駕する。
──ドガガガガッ!!
雷と化したラミス姫の猛攻の前に、打つ手が無くなったゲイオス。ゲイオスの目にはもう既に、ラミスの動きを捉える事が出来てはいなかった。……いや、そのあまりにもの速さに姿さえ見えていなかったのである。
──ドゴォ!!
ラミスの雷と化した怒濤の連撃に、吹き飛びひれ伏す"凄腕の剣士"ゲイオス。
「バカなっ……。あってはならぬ!この俺が負ける等と言う事は、有り得ぬのだ!!」
ゲイオスは、目にも止まらぬ高速の斬撃を繰り出した。幾らラミスが雷の如き、速さを手に入れたとは言え。まだラミスには、ゲイオスの放つ高速の剣は見切れてはいなかった。しかし、今のラミスになら回避する事は可能なのである。
ゲイオスの斬撃が飛ぶ方向さえ理解していれば、回避する事が可能なのだ。
……右か?左か?
「右ですわ!」
ラミスは自らの直感を信じ、右へと飛び上がる。
──ゾクッ!
突如、ラミスの体全体に強烈なまでの悪寒が走った。今までに何万回もの死に戻りを経験した、ラミス姫の危険察知能力が危険だと告げていた。
──バリッバリバリ!
ラミスは右は危険だと判断し、遥か上空へと天高く舞い上がる。
──ザシュ!
左右同時に、凄まじい斬撃を放つゲイオス。危なかった、あのまま右に飛んでいれば今頃ラミスの命は無かっただろう。
ラミスはそのまま勢いよく落下し、ゲイオスに渾身の踵落としを喰らわす。
「プリンセス"戦斧"!!」
──ドゴォ!
「ぐはぁっ。」
直撃を喰らい、吹き飛ぶゲイオス。
「行けますわ、これなら!」
ラミスは勝利を確信した。




